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第三者意見

積水化学グループ CSRレポートSHIFT2019に生かすCSR

小河 光生

(株)クレイグ・コンサルティング 代表取締役 小河  光生(おがわ  みつお)

早稲田大学卒業。大手自動車関連メーカーを経て、ピッツバーグ大学経営学修士(MBA)取得。三和総合研究所、PwCコンサルティングで経営コンサルティングにたずさわる。2004年に独立し、現在に至る。組織論・人材活性化論が専門分野。

おもな著書に『ISO26000で経営はこう変わる』『CSR 企業価値をどう高めるか』(日本経済新聞社)など多数。名古屋商科大学大学院 マネジメント研究科客員教授。


統合報告とは報告書の態様を表す言葉ではなく、財務情報と非財務情報が有機的に結びつき、将来の企業価値向上につながるストーリーが書かれている“企業の将来ビジョン”である。統合報告書を発行する企業は増えてきているが、財務情報にCSR記事をホッチキスで留めただけの報告書が目につき、残念ながら発行の目的をはき違えているものが多い。真にCSRを企業価値につなげようとしている企業は、CSR施策を中期経営計画の中でどのように企業価値につなげようとしているか具体的に述べている。この点で積水化学グループのCSRレポートは読み応えがある。今年、積水化学グループは“SHIFT2019”と名付けられた新中期経営計画を発表した。この中でESG(環境、社会、ガバナンス)をどのように企業価値につなげようとしているか明示している。
これは真の意味で財務情報と非財務情報を“統合”したストーリーを社内外に発信する野心的、革新的なチャレンジを始めたことを意味しており、その積極姿勢を高く評価したい。


具体的には本CSRレポートのトップメッセージで髙下社長がわかりやすく説明しているのでぜひお読みいただきたい。P4で“際立ち”(競争優位性)と“くらし&環境貢献”(市場開拓可能性)の二軸で成長戦略を表現し、両方を高める製品群を成長エンジンとして増やしていくと説明している。その決意の強さは「CSR経営推進室」を経営戦略部に設置し、経営企画はもちろんのこと、IR、広報などとの連携を強化したこと、成長に向けた投資として「環境貢献投資」に3年間で120億円の投資を行うと明示していることの二点から伺うことができる。まさに積水化学グループが新しい経営戦略に踏み出した元年である、と刮目すべき内容であろう。


積水化学グループはESGを明確に経営計画に取り込んだ先進企業であるから、ぜひとも他社の模範となる情報開示を行っていただきたい。この視点でいくつか課題を指摘したい。ひとつ目は新CSR中期計画の目標値(KPI)について、中期経営計画との連動性を高めていきたい。
CSRレポートP10に新しい目標値が掲出されているが、3つの際立ちの目標値が単にCSRのKPIとして存在するのではなく、SHIFT2019の経営数値目標に連動し、どこにどれほどのインパクトでつながるか説明したい。難しい課題であるが、企業価値向上のストーリーの中で新CSR目標値を位置づければ社内外の理解は一層高まる。


二つ目は人材に関する目標である。人材はSHIFT2019の経営基盤に置かれるもっとも重要な要素の一つである。
グローバル化を一層進める同社の経営戦略の中でダイバーシティの目標を掲げることは納得感があるが、それが女性活躍と障がい者雇用を中心としていることはKPIとしてやや物足りない。たとえばグローバル人材が現地の経営を担う比率などの野心的目標が積水化学グループらしい目標になるのではないか。


三つ目は社内浸透である。今年のCSRレポートP14-17には、R&D部門と社外の開発パートナーのダイアログが収録されている。昨年わたしは第三者意見でステークホルダーとのダイアログを実施すべきと指摘したが、課題を早速実行に移すスピード感は素晴らしい。これを読む社員はR&Dセンターが取り組む社会課題テーマをよく理解することができるだろう。こうしたダイアログに加えて、新中期経営計画でサステイナブル(=持続可能な経営)を入れた意味を社内に浸透させていきたい。
たとえば、髙下社長が新中期計画を社内へ説明をしていくことに合わせ、社員研修の一環としてCSRをリーダーシップ研修のテーマに入れていくことを検討してはどうだろうか。経営戦略部内に新設された海外統括部門が人事部門とともにグローバルでサステイナブルをテーマに、リーダーシップ研修を企画することも同社らしい取り組みになるのではないか。



第三者意見を受けて

平居 義幸

積水化学工業(株)
取締役 常務執行役員
経営管理部担当 経営戦略部長
平居  義幸



貴重なご意見を賜りまして有難うございます。CSRの取り組みを企業価値の向上につなげていく、これを実現してこそ、「サステイナブルな社会の実現に貢献する活動」が持続可能なものになると考えています。


今回いただきました「人材に関する目標などCSR目標値と経営数値目標との連動性を高める」というご助言をしっかりと受け止め、企業価値向上に向けた「統合」ストーリーの明確化に注力し、積水化学グループのCSRに対する社内外の一層の理解促進を図ります。


サステイナブルの要素を取り込んだ新中期経営計画“SHIFT2019 -Fusion-”や、事業とCSRとの統合思考を意識した新CSR概念図への想いを「社内浸透」させるために、国内外でのビジョンキャラバンや新CSR研修の企画・実施を進めてまいります。


SDGsなどで示された目標の実現に向けて当社グループがどう貢献できるのか、経営層も含め全社一丸となって考え、推進する体制を強化し、企業価値の向上につなげてまいります。

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