グレーデッドインデックス型プラスチック製光ファイバー「GINOVER(ジノーバ)」の開発について

~「ギガリンクシステム」が拓く、本格的「Face-to-Faceコミュニケーション」社会に向けて~
2010年11月17日
積水化学工業株式会社

 積水化学工業株式会社(代表取締役社長:根岸修史、以下当社)の 環境・ライフラインカンパニー(プレジデント:滝谷善行)は、慶應義塾大学理工学部 小池康博教授と共同で短~中距離間(1~100m)のギガビットを超える超高速伝送に適したグレーデッドインデックス※1型プラスチック製光ファイバー(以下GI POF※2)「GINOVER(ジノーバ)」 を開発しました。
 ハイビジョンテレビや高性能パソコンに代表される家庭内の高速通信ニーズのみならず、医療や教育・福祉施設、オフィス分野や、自動車、鉄道、航空機分野、IT機器・医療機器内伝送などの多様な用途に向けて、製品をラインナップします。

※1グレーデッドインデックス(GI):

中心部を直線的に伝播した光と,光ファイバーの中で最も反射を繰り返した光が同じタイミングで到着するように屈折率を調整しているため,伝送速度や距離において優位性が高い。

 

※2 POF: Plastic Optical Fiber(プラスチック製光ファイバー)



◆開発の背景

 
ハイビジョン映像や映画のインターネット配信など、通信データの大容量化に伴い、機器内・建物内といった短~中距離において、ギガビットを超える高速伝送ニーズが高まっています。現在の高速伝送手段としては、光ファイバーのほか、無線やメタルケーブルなどが普及しています。
 無線やメタルケーブルなどは、高速化に伴い伝送距離が短くなるとともに、電磁ノイズを出す/受ける、消費電力が増えるなどの問題が発生します。さらにメタルケーブルにおいては、ケーブル径が太くなり、配線スペースや重量が増えるなどのデメリットもあります。以上により今後は光ファイバーに代替されていくことが予想されています。
 現在普及している石英(ガラス)光ファイバーは、湾曲に弱いため折れやすく、またコア径が細いなど、施工性・接続性における課題も多く、短~中距離においては導入が進んでいません。



◆新開発GI POF「GINOVER」の特徴
 

1.大口径、可視光、高耐熱対応を可能にする新素材「部分塩素化ポリマー」を開発

2.使用ニーズに合わせたグレード(コア径 62.5~300μm)をラインナップ

3.コネクタを用いない接続や光HDMIなど、様々なギガビットリンクシステムを開発


1.大口径、可視光、高耐熱対応を可能にする新素材「部分塩素化ポリマー」を開発

 
新開発の「部分塩素化ポリマー」製GI POFは、赤色光源(650nm)での伝送損失が少なくなるよう分子設計しており、大口径にも成形できることからコネクタを用いず直接機器に接続することが可能です。また、可視光源であるため目視による通信状態の確認が可能となり、誤って直視し続ける心配がありません。一般消費者自身が配線、接続できるギガビット光伝送システムの開発は世界初となります。

 

 

赤色光源(650nm)

コネクタを用いない接続(切断して差し込むだけ)

赤色光源(650nm)

コネクタを用いない接続(切断して差し込むだけ)



2.使用ニーズに合わせたグレード(コア径 62.5~300μm)をラインナップ
 
 大口径・可視光グレードをはじめ、高耐熱、長距離、超高速の要求に応えられるグレードを開発しました。コア径も62.5~300μm(ミクロン)をラインナップしました。
 コア径300μmの「VT300」は、大口径・可視光という特徴から、家庭内での使用に適しています。
 コア径120μmの「VT120」は、耐熱性が高く、温度が上昇しやすいハイビジョンTVなどの情報機器内や、OA・FA・医療機器向けになります。
 コア径120μmの「ID120」は、電子看板(デジタルサイネージ)や病院内・ビル内など、高速性と現地でのコネクタ加工が必要となる用途に適しています。
 コア径62.5μmの「ID062」は、データセンタや情報機器間の映像伝送(HDMI※3)のように、10Gbps(ギガビット毎秒)伝送が要求される用途に適しています。
 

※3 HDMI:

High-Definition Multimedia Interface デジタル対応のテレビやAV機器など、デジタル家電で使われるインターフェース規格の一つ。1本のケーブルで映像・音声・制御信号を伝送する。

 

 

GI POF品揃え



3.コネクタを用いない接続や光HDMIなど、様々なギガビットリンクシステムを開発
 
 
用途によっては、伝送速度だけではなく、ケーブルとしての難燃対応、省配線、電力供給のためのケーブルの複合化が求められます。コネクタや光トランシーバー※4との組み合わせも考慮した上で、最適なケーブル形状で提供します。
 また、用途ごとに最適なGI POFとコネクタ・光トランシーバーを組み合わせて、リンクシステムとしてトータルで設計することで、GI POFの特徴を最大限に活かします。生活シーンだけでなく最先端の病院内・病院間でのデータ伝送といった展開が期待できます。
 リンクシステムとしてトータル設計することで、無線・メタルケーブルなど既存技術からの置き換えを容易にします。また、各部材の共通化により、コスト削減も期待できます。
 

※4 光トランシーバー:

電気信号を光信号に変換する光送信機と入力された光信号を電気信号に変換する光受信機を一体化した光送受信モジュール

 

 

ケーブル・周辺部材の品揃え

ケーブル品揃え

 

周辺部材品揃え

 

  ギガリングシステム イメージ図

ギガリング システムイメージ図

 


◆ 今後の展開について

 
当社はGI POFを核としたギガリンクシステムが、本格的な「Face-to-Faceコミュニケーション」時代のスタンダードになると考えています。GI POFがもたらすベネフィットは通信分野の進化において極めて重要になります。
 短~中距離の超高速伝送用光ファイバーの市場規模は2014年に1,500億円以上になると期待されています。当社は、2011年度に事業化、2015年度に150億円の売上高を目指します。その後もGI POFとギガリンクシステムによって積極的に市場を開拓し、グローバルNo.1を目指します。 

 

伝送素材別の用途



【ご参考】慶應義塾大学 小池康博教授との共同開発について
 小池教授とは、2007年からGI POFの共同開発を行っています。現在は、小池教授の研究が助成対象となっている内閣府「最先端研究開発支援プログラム」において、実用化を視野に入れた共同開発を行っており、今回のGI POFはその成果となります。

 

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