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自然に学ぶ研究事例

第18回木炭に学ぶ最先端素材
エネルギー・環境技術
植物資源
木炭が生んだ人工ダイヤモンド
かつて、燃料として人々の暮らしを支えていた木炭。 再生可能な木質資源である木炭を新しい物質に変身させ、エネルギー以外にも活用していこうとする取り組みが始まっている。 木に新たな価値をもたらす、木炭に学ぶ最先端素材とは?
木炭(Chacoal)
木炭(Chacoal)

水や空気の浄化作用、消臭・脱臭作用、調湿作用、電磁波遮断効果など、さまざまな木炭の持つ機能が注目を浴び、製品化されている。木炭は、六角形のハチの 巣のような構造を持ち、多孔質と呼ばれるようにたくさんの小さな穴がある。この隙間に水分やガスなどを吸着することで、さまざまな機能を発揮するのである。

美しい輝きで人を魅了するダイヤモンドは、その硬さを活かし、カッターや研磨材、表面保護材などとしても利用されています。こうした工業用ダイヤモンドは、その多くが人工的に合成されたもので、黒鉛(グラファイト)からダイヤモンドを合成する方法もその1つです。

鉛筆の芯などに使われる黒鉛は、ダイヤモンドと同じ炭素の結晶です。ところが、ダイヤモンドは立方体のように炭素が3次元構造で強く結びついているのに対して、黒鉛構造は炭素原子が6角形を形成し、ハチの巣の断面のように平面上でいくつもつながったものが何層にも重なってできているのです。このように構造と結びつきの強さが違うために、仲間でありながら固さや色、輝きなど、全く違う性質をもった物質となっています。しかし、黒鉛を高温・超高圧な環境に置いておくことで、その構造を変化させ、ダイヤモンドをつくることができるのです。

では、同じ炭素でできている木炭からダイヤモンドはつくれないのでしょうか。科学の世界では、木炭に黒鉛構造やダイヤモンド構造は現れないというのが定説でした。ところが、その説をくつがえし、世界で初めて木からダイヤモンドをつくることに成功しました。

約700℃で焼成した木炭をアルミニウム系の触媒を使い、圧力をかけながら2200℃まで熱すると、天然黒鉛よりもキレイな黒鉛構造が現れ、その中に1μmほどのダイヤモンド薄膜が形成されることが確認されたのです。すでにダイヤモンド状薄膜材料をつくる装置も開発されており、研磨剤、摩耗や腐食を防ぐ表面コーティング材として、また半導体基板への利用などさまざまな用途が考えられます。さらに同じ処理方法で、多層のカーボンナノチューブができることもわかりました。鉄の6分の1の重量で、強度が100倍あるカーボンナノチューブは、驚異の新素材として注目されています。

木質廃棄物から木炭をつくり、その木炭から先端材料を供給する。木に新しい命を与える、画期的なリサイクル技術と言えるでしょう。

畑 俊充 講師

京都大学生存圏研究所 居住圏環境共生分野

微細構造から環境と共生する材料を探る
私の研究ターゲットは、木材からカーボン(炭素)を経て、黒鉛やダイヤモンド、カーボンナノチューブ(CNT)など炭素同素体と呼ばれる物質をつくり、そ のメカニズムを明らかにすることです。木質材料の用途開発を行っていましたが、新しい機能を発現させるのは難しく、壁にぶつかりました。そんな時、オラン ダの大学で炭素繊維の微細構造を電子顕微鏡で詳しく調べる機会があり、炭化作用に注目することになったのです。現在は、フランスの研究所とのCNT開発、 生存圏研究所の宇宙圏電波科学分野と宇宙で利用する炭素材料の共同研究も行っています。 いま、二酸化炭素排出抑制のために木質バイオマスの活用が求められていますが、ほとんどが燃料として使われて終わりです。廃棄物から新規に物質をつくるこ とで、さまざまな木の利用を促したいと考えて研究に取り組んでいるのです。

トピックス
1991年に、飯島澄男氏(NEC特別主席研究員、名城大学教授ほか兼任)が発見し、ナノテクノロジーを支える画期的な新素材として一躍脚光を浴びた “カーボンナノチューブ(CNT)”。ハチの巣状に炭素が連なったシートを円筒形(チューブ)に巻いたような形状で、その直径は数ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)です。これまでに、多層のもの、単層のもの、らせん状のもの、さらにはチューブの先端が閉じていて牛の角のような形をしていることから“カーボンナノホーン”と名付けられたものなどが発見されていますが、形状の違いによって電気的特性が異なり、金属のように電気を通す導体にも、半導体にもなると言います。 現在、携帯用燃料電池の電極、シリコンの変わりにCNTを使ったトランジスタなど、おもにエレクトロニクス分野での研究開発が進んでいますが、カーボンナノホーンに抗ガン剤を内包させてガン細胞に送り届けて治療するといった医療分野での利用も期待されています。
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