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自然に学ぶ研究事例

第127回ヤモリに学ぶ着脱デバイスの開発
材料・デバイス開発
昆虫資源
ヤモリの凝着・離脱機能を人工的に実現
垂直の壁面や天井などを自在に移動するヤモリ。 指先に密集した微細毛の特殊な構造により、 物質表面との凝着・離脱を容易に繰り返す、 ヤモリに学ぶ着脱デバイスの開発とは?
ヤモリと凝着・離脱デバイスの試作
ヤモリと凝着・離脱デバイスの試作

ヤモリの指先(写真上)にはミクロサイズの微細毛(セタ)が縞状に密集し、その先端がナノサイズのヘラ状の超微細毛(スパチュラ)に枝分かれした構造(円内模式図)になっている。ヤモリは、こうした微細構造によるファンデルワールス力を利用して、物質平面への指先の着脱を容易に繰り返し、垂直な壁や天井のような場所でも滑落することなく移動できる。右側の4枚の写真は、試作した凝着・離脱デバイスが静電力を利用して、長さ約10mm、直径約2mmのアルミ箔製パイプを持ち上げて、放す様子を撮影したもの。

どのような場所でも、滑落することなく移動するヤモリの秘密が、およそ14年前に明らかにされました。ヤモリの指先には100〜200マイクロメートルの長さの微細毛(セタ)がビッシリと密集し、その先端が直径100ナノメートルほどの超微細毛(スパチュラ)に枝分かれしており、この微細構造と壁などの表面にファンデルワールス力(分子間力)が働き、つかんで放す行為(凝着・離脱)を容易に繰り返すことで、重力に逆らった状態でも移動できるというのです。

そうした微細毛の構造を人工的に再現し、接着剤を使わない接着技術などに役立てようという研究が活発に行われています。しかし、マイクロとナノサイズの階層構造を忠実に再現し、ヤモリのように自在に凝着・離脱を実現するには、まだ至っていません。一方で、セタの形態や物質表面に接する際の曲げ方向への柔らかさなどに着目し、微小部品を扱うマイクロロボット(マニピュレータ)の指に応用しようというユニークな研究があります。

外側が絶縁性、内側にカーボンナノチューブを配合した導電性の高分子材料を用いた静電誘導高分子ファイバーを作成して凝着・離脱デバイスを試作し、電圧のオン・オフによってアルミ箔製のパイプを持ち上げ、置くという実験が行われています。ファイバーを斜めに配置することで、ピックアップする物質を破壊しない柔らかさも実現しています。

現在、1000本を目指したファイバーの高密度化、大面積化などの研究が進められています。ヤモリのような凝集・離脱を実現するデバイスがマイクロロボットへ応用できれば、製造分野以外にもさまざまな分野で活躍する可能性があり、今後の研究に大きな期待が寄せられているのです。

齋藤滋規 准教授

東京工業大学大学院 工学研究科

勇気をもって、ユニークな研究に挑戦したい
博士課程へ進むときに、それまで行っていた産業用ロボットから、マイクロロボットの世界へと移りました。分野を変えて素人に戻りましたので、研究成果がまったく出ない時期もありました。しかしこの経験で、本流ではないところに手をつけることに恐怖感がなくなりました。勇気をもって、とりあえずやってみる。ダメなこともいろいろとありますが、意外なことも起こりますし、成果につながっていくと思います。 大学で研究することの意義の1つは、企業では採算がとれないと思うところに先んじて入っていくことではないでしょうか。そして、ユニークということを大切にしながら挑戦し、最終的に世の中で自分のつくった技術が使われるようにしたいと考えて研究を進めています。

トピックス
ファンデルワールス力は、原子や分子間に働く引力です。そのポテンシャルエネルギーは距離の6乗に反比例して働くと考えられており、距離が近ければ近いほど強くなります。ヤモリの足裏には、1平方メートルあたり10万〜100万本の剛毛が密生しており、先端がさらに100〜1000本ほどに枝分かれしていると言われます。密生した微細毛の表面積は広大となり、ファンデルワールス力が凝集されて強い吸着力が働き、天井なども這うことができるのです。着脱デバイスの開発には、ファイバーの高密度化、大面積化が実用化に向けた重要なポイントとなるのです。
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