Dialogue―社外取締役との対話―

更新日:2019年9月3日

当社では企業経営のすべての土台であるコーポレート・ガバナンスについて、経営の公正性・透明性を高めるためにその充実に取り組んでいます。今回、2016年6月より社外取締役を務める加瀬氏より当社のコーポレート・ガバナンスの特徴や今後の課題について、率直なご意見をいただきました。

社外取締役の役割

加瀬さんがお考えになる社外取締役の役割とはどのようなものでしょうか。

加瀬

私はこれまでに、いくつかの会社で社外取締役を務めさせていただいていますが、その中で、最も注視しているのは、その会社が健全な経営ができているかどうか、体質的に透明性・公平性を保った経営をできているかという点です。

これまで日本企業の多くは、社内取締役だけで構成されており、トップになかなか意見が言えない、というのがよくあるパターンでした。その点、社外取締役なら必要に応じて、社長や他の取締役へ反対意見が言える。社外取締役とはそういう役割を担わなければいけないと考えています。

しかし、社内取締役に対する監視や監督はあくまで守りのガバナンスですが、一方で攻めのガバナンスにおいては、新たな事業への挑戦を後押しすることも必要です。その事業の将来性があるかないかをじっくり検討し、必要に応じた戦略的な投資を後押ししていく役割もあると考えています。

そういった点で、社外取締役はいろいろな意見を出せるよう多様性に富んでいたほうがよいと考えています。積水化学の社外取締役は、私が商社出身、大枝さんは食品関係分野で製造業、石塚さんが小売り(2019年6月退任)というバックグラウンドを持つ経営者です。同じ経営者ではありますが、それぞれが専門的なバックグラウンドを持っているということで、非常にバランスが取れていると思います。

加瀬さんは、企業のトップを務めた上に、複数の会社で社外取締役をお務めになり、経験も豊富です。ご自身が社外取締役を引き受けるうえでのモチベーション、社外取締役としての使命感はどういう点にありますか。

加瀬

私は、双日の会長時代に、アステラス製薬の社外取締役を頼まれ、アステラス製薬のような先進的なガバナンスの会社の取締役会で勉強させてもらいたいという強い思いから引き受けさせていただきました。

その時の経験が非常に有益であったことから、その後、いくつかの会社の社外取締役を務めさせていただいています。その中には、比較的小規模なオーナー企業もありますが、これまでの経験を他社の経営で活かしたいというのがモチベーションになっています。

取締役会の多様性と実効性

具体的に積水化学のガバナンスについて、お聞きします。まず、取締役会についてです。近年、多様な視点や価値観を企業経営に反映するため、女性や外国人の取締役会への登用が求められています。積水化学の取締役会の多様性についてご意見をお聞かせください。

加瀬

女性や外国人という点だけで見れば、確かにこれまでは多様とは言えなかったかもしれません。一方、積水化学の社外監査役は、それぞれ弁護士、品質管理を専門とする大学教授、会計の専門家であり、出身や経験が非常に多様です。社外取締役は全員経営者ですが、それぞれが得意とする分野が異なり、そこにも多様性があります。今回、4月に社内で初となる女性の執行役員が生まれ、6月に女性の社外取締役や社外監査役が就任し、多様性がさらに進んできています。

しかしながら、女性や外国人の数をただ増やせばよいのではなく、経営について議論ができるということが重要です。新任の社外取締役(2019年6月就任)の石倉さんを私は存じ上げていますが、なによりも広い視野を持っておられるし、また女性独自の立場からの意見もお持ちなので、積水化学のガバナンスに大きく貢献していかれると考えています。

当社の取締役会の議論の活発さ、進め方などに関するご見解をお聞かせください。

加瀬

積水化学の取締役会では、非常に活発でかつ透明性ある議論と意見交換ができていると感じています。

特に、トップを務める髙下社長がESG経営に、本当に真剣に取り組んでいる熱意が伝わってきます。地球環境や社会への貢献を事業の柱としていくということを、トップが先陣を切って推進しているところに積水化学におけるガバナンスの根幹があるような気がします。

取締役会の実効性についてもご意見をお聞かせください。

加瀬

取締役会は単なる儀礼的なものでなく、きちんと議論ができる場になっていると思います。われわれ社外取締役は議論の前提となる情報が必要となりますが、毎回、取締役の加藤さんから直々に議案の事前説明を丁寧にしていただいています。そのおかげで、取締役会では非常に活発な意見交換が行われており、実効性は十分確保されていると考えてよいのではないでしょうか。

コンプライアンスへの取り組み

守りのガバナンスということでいえば、やはり社外取締役による監視・監督機能も重要です。積水化学のコンプライアンス・不祥事の未然防止体制についてどのような印象を持たれていますか。

加瀬

積水化学では過去のコンプライアンス問題を率直に反省し、今後、発生しないようにするための未然防止策がきちんと作られています。しかし、コンプライアンスは形だけを作るのではなく、経営トップが関与して、社員に健全経営の意識を徹底的に浸透させて、常に緊張感を持つことが必要だと思います。コンプライアンス問題や不祥事はどんなに防止策を講じても、起きるときは起きるものです。そういう時に必要なのは、迅速な対応ときちんと開示する姿勢だと考えています。

近年、当社はM&Aなどを含めて、海外での事業を急速に拡大しています。グローバルな視点でのガバナンスやコンプライアンスに関しても、ご意見を頂戴できますか。

加瀬

海外の子会社が増えていくと、海外子会社の動き・経営状態を把握するのが難しくなっていきます。何かあったときに、もしくはその予兆の段階で、迅速に情報があがり、本社の取締役会で議論できるような仕組みが必要だと思います。

経営トップと取締役会議長の役割について

ここまで様々な視点で当社のガバナンスにご意見をいただきました。次は現状の課題についてご意見を頂戴できますか。

加瀬

かなり整備された状況であると思いますが、一つ意見を述べるとしたら、取締役会の議長についてです。

積水化学は現在、会長不在で社長が取締役会の議長をされています。あくまで私見ですが、望むらくはやはり議長は執行のトップではない人が良いと思います。執行のトップである社長と取締役会の議長が同じ人物であるということは、もし業績不振や不祥事が発生した場合、自分で自分を責めることはなかなかできませんから、透明性とか公平性の観点から言えば取締役会長の方が望ましいと考えています。いずれ、取締役会長が議長をする体制に移行するほうがよいのではないでしょうか。

サクセッションプランと報酬制度

サクセッションプランについてはいかがでしょうか。

加瀬

私が考えるサクセッションプランは、次期候補をどうするかというワンジェネレーションのみでなく、その前の段階の候補者をどうやって育成していくかが含まれています。そのような候補者があると、指名・報酬等諮問委員会の議論の中で、この候補者が適任だと責任をもって意見が言える。ぜひ、候補段階の育成を充実させていただきたい。

さらに、もう一つ、第三者である外部専門機関で役員評価をやるということも必要だと思っています。

報酬制度についてのご意見をお願いします。

加瀬

世の中の潮流をみても、きちんとしたフォーミュラ制度を作って、成果に応じた報酬を払う必要があると考えています。

現在の報酬制度は、「固定・業績連動・長期インセンティブ」という3本立てとなっていますが、それぞれの額が自動的には決まりません。今後は、決算発表が出たら自動的に額が決まり、トップの恣意的な意見が入らない報酬制度に移行するほうがよいと思っています。これは新しい課題としてわれわれ指名・報酬等諮問委員会の中で検討していきたいと思っています。固定と連動の比率は様々な意見がありますが、現状の6(固定):4(変動)からスタートして、5:5ぐらいのフォーミュラで良いと考えています。

積水化学の今後について

最後に、積水化学グループの今後に対する期待をお聞かせください。

加瀬

積水化学は非常に真面目な会社です。今まで海外事業所や研究開発の最前線など様々な現場を見る機会がありましたが、積水化学の強みは、やはり新技術の開発力だと思っています。実際に見学させていただいた中で特に、FFU※の製造現場が印象的でした。ガラス繊維から木材のようなものができる。これはやはり化学だなと。長年培ってきたこういう技術力が積水化学の実力の根底にあるのだと思います。

もう一つの強みは、3つあるカンパニーのバランス・役割がきちんと取れているということだと思います。それぞれのカンパニーがスピード感をもって事業展開してきたことが、現在の強みにつながっているのではないでしょうか。今後、メディカル事業が新たに一本立ちを目指すということで、新しい時代への挑戦も進んでいます。

そして、現在、期待しているのが、ごみをエタノールに変える技術を用いたバイオリファイナリー(BR)のプロジェクトです。これが本当に事業化すれば、企業の成長を一気に加速すると同時に、世界が抱えるごみ問題解決の切り札になると思っています。

  • ※ FFU: 硬質ウレタン樹脂をガラス長繊維で硬化した、天然木材の風合いをもつ部材。軽くて強く、腐食しないことから、世界各地の鉄道の枕木などに利用されている。