積水化学グループのサステナビリティ(ESG基盤強化)

更新日:2020年9月11日

積水化学グループは「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける社会への責任」を通じて、「世界のひとびとのくらしと地球環境に貢献する」というグループビジョンの実現を目指しています。積水化学グループにとって、事業活動を通じて社会に役立つ価値を創造し貢献することがCSRであり、社是“3S精神”の実践です。そして、CSRを経営戦略の中心となる取り組みととらえることで、企業経営の質を高められると考えています。

こうした認識のもと、持続的成長と革新のために、ESG経営に軸足を置いてCSRに真摯に取り組み、変革や進化を続けていかなければならないと考えています。

2020年5月に策定した長期ビジョン「Vision 2030」においても、「“Innovation for the Earth”~サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造する~」ことをビジョンステートメントとしています。そして、その戦略として製品・事業の革新による現有事業の拡大と、新事業基盤の創造・獲得による新たな事業の創出をより高いレベルで両立させることを目指していますが、その中心に据えているのがESG経営です。

ESG経営に取り組むにあたっては、積水化学グループの重要課題(マテリアリティ)を、2017年度からスタートした中期経営計画「SHIFT 2019 -Fusion-」で特定し、これまで取り組みを推進してきました。2020年度からは、長期ビジョンの実現に向けてさらにESG経営を強化していく必要があると考え、利益創出力、社会課題解決貢献力、持続経営力の観点から重要課題を見直し、内部統制、DX、環境、人材、融合に軸足を置いたESG経営を進めていきます。

また、ESG経営を進めていくための社内の推進体制としては、これまでCSRを議論する場として「CSR委員会」を設けていましたが、2020年度以降は、ESG経営のもと、将来当社グループが直面する可能性のあるリスクや機会を抽出し、優先順位を付けて方針や施策を議論する場として「サステナビリティ委員会」と改め、取り組みを加速させていきます。またその分科会として、これまでの「環境」「CS品質」「人材」「安全」「コンプライアンス」に加え、サイバー攻撃対策の高度化推進を目的に「サイバーセキュリティ分科会」を新たに設置し、6分科会体制としました。

積水化学グループのCSRに関する取り組みの詳細はCSRレポートをご覧ください

サステナビリティ委員会・分科会体制(2020年度~)
  • ※1 CSR委員会を2020年度からサステナビリティ委員会へ改称
  • ※2 2020年度に新設
ESG重要課題(2020〜2022年度)

ステークホルダーにとっての重要性が非常に高く、かつ積水化学グループの経営にとっての重要性も非常に高い課題

環境

サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造しつづけるために、積水化学グループは長期目線で解決していく必要がある環境課題に取り組んでいきます。

「SEKISUI環境長期ビジョン2050」

これまで環境課題に対しては、2030年を見据えてどのように取り組むかを考え、方向性を描いてきましたが、2019年に、改めて顕在化してきたさまざまな事象や社会要請をとらえ直し、2050年に向けた環境面の取り組みの方向性に関して、「SEKISUI 環境長期ビジョン2050」を策定しました。そして、このビジョンからバックキャスティングし、個々の環境課題に対して経営戦略の中でやるべきことのマイルストーンを描き直しました。

積水化学グループは、「地球からの価値ある自然資本、社会からの有用な社会資本を活用して企業活動を行っている」ことを認識しており、気候変動をはじめとする自然環境や社会環境における課題解決のための活動が、間接的・直接的に生物多様性の保全につながると考えています。“生物多様性が保全された地球”の実現のために、ステークホルダーと連携し、企業活動や、企業活動によって生み出される製品を通してそのリターンへの貢献を加速していきます。

「環境貢献製品」を「サステナビリティ貢献製品」として進化

2006年度以降、高いレベルの環境貢献効果を有し、お客様の使用段階において効果があることを認められた製品を「環境貢献製品」として社内認定し、その拡大を推進してきました。2017年度からはその対象を自然環境のみでなく、社会環境における課題の解決に寄与する製品に対象を広げ、国連が提唱している2030年のゴール:SDGs(持続可能な開発目標)と目指すところは同じであると再確認し、その創出と普及に努めてきました。

そして2020年度からは、「地球および社会のサステナビリティ」向上への貢献拡大のためには、企業および製品自身のサステナビリティが不可欠であると考え、「環境貢献製品」を「サステナビリティ貢献製品」として進化させ、始動しています。従来の認定プロセスに加え、新たに企業および製品のサステナビリティを評価する視点を設け、持続性を確認していきます。

評価制度の基準や登録、今後の視点などに関して、社外有識者の方々からご意見をいただいてきましたが、今後も引き続き対話を行いながら制度策定・運営を行っていきます。また、2020年度からの3ヶ年の中期計画においては、この「サステナビリティ貢献製品」を牽引し、戦略的に伸長させる製品をプレミアム枠として選定し、サステナビリティ向上のための施策を推進していきます。

  • ※社外有識者:産官学さまざまなバックグラウンドを持ち、環境を含むCSR関連業務に従事されている方々で構成
SEKISUIグループにおける環境貢献製品制度の進化

環境長期ビジョンからバックキャスティングした環境中期計画の推進

2019年度までは、環境長期ビジョン「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2030」で描いた2030年のあるべき姿に向かって、環境中期計画「SEKISUI 環境サステナブルプランAccelerate」を策定し、各取り組みを加速させてきました。

2020年度からは、「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2050」に基づいて策定した、環境中期計画「SEKISUI 環境サステナブルプランAccelerateⅡ」を推進していきます。

「SEKISUI 環境サステナブルプランAccelerate」(2017-2019年度)

「SEKISUI 環境サステナブルプランAccelerate」では、温室効果ガス(GHG)の削減と環境貢献製品の拡大に特に注力してきました。GHG削減に関しては、目標達成に向けて3年間で120億円(売上高の0.3%に相当)の環境貢献投資枠を設定し、積極的な設備投資を推進してきました。2019年度の環境貢献製品は売上高全体に占める比率は58.3%に伸長し、2017年度から2019年度までの3年間で新たに47件が環境貢献製品に登録されました。

総合指標 
SEKISUI環境サステナブルインデックス

環境貢献製品の売上高・売上高比率

GHG排出量削減

「環境サステナブルプランAccelerate II」(2020-2020年度)

気候変動をはじめとする、資源循環、水リスク等の環境課題については、2050年の科学的根拠に基づいた予測により、リスクが他の側面と比べて明確になっています。2020年度からの環境中期計画においては、積水化学グループが取り組むべき重要な環境課題を「気候変動」「水リスク」「資源循環」とし、それらの課題解決を加速するために、取り組み事項を定めています。

環境課題は、サプライチェーン一丸となって取り組むことで解決が加速すると考え、これまで以上に製品のライフサイクルにわたるサプライチェーンマネジメントを重視して施策を展開し、活動を行っていきます。

「SEKISUI環境サステナブルインデックス」も、企業活動が影響を与える、あるいは(企業活動が)貢献していく地球、および社会の資本として、自然資本と社会資本に改めて焦点を当てて、その影響と付加価値(OUTCOME)を評価するなど、さらに進化しています。

また、環境に関してかける投資や費用は2020年度からは全社の経営戦略上の資本コストであり、このコストの抑制や生産性向上がROICを向上させることを意識するため環境会計を活用していきます。

気候変動課題に向けて

気候変動課題に関しては、COP21(パリ協定)で合意された目標を受け、中期的な温室効果ガスの削減計画を策定しています。2050年までに自社の事業活動に伴うGHG排出量ゼロを目標に掲げています。また、自家消費型太陽光発電設備の導入を促進し、外部から購入する電力の再生可能エネルギー比率を高め、2030年までに100%とすることを新たな目標値に設定し、SBT※1イニシアチブでコミットした2030年までにGHG排出量26%削減を実現するための具体的な行動を開始しています。そして自社のみならず社会全体の積極的な再生可能エネルギー活用を推進していくために、2020年8月にRE100※2に加盟しました。

当社グループの生産現場での排出量削減はすでにかなり高いレベルでの取り組みが実施されており、大幅な削減を実現するため、2019年度までの3年間で120億円の環境貢献投資枠を設定し、インターナルカーボンプライシングの仕組みを活用した“環境投資促進策”を展開し、生産設備の更新を積極的に進めてきました。2020年度からは、ESG投資枠400億円を活用し、自家消費型太陽光発電設備など、生産活動において使用している電力の再生可能エネルギーへの転換を推進していきます。

また当社グループのGHG排出量は、原材料調達および製品の使用段階で多く、化学メーカーとしての事業特性によると認識しています。一方で製品の使用段階での排出量は、販売した住宅で使用されるエネルギー由来のGHG排出が大きいことに起因しています。今後、原材料に関しては、GHG排出量を2016年度比で20%削減を目標とし、新規材料採用時の選定基準を見直すとともに、排出量の大きい原材料として認識している樹脂4品目による削減を推進するため、サプライヤーとのエンゲージメントを開始し、将来に向けたScope3におけるGHG排出量削減の取り組みを進めています。製品の使用段階での排出量に関しては、販売する住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)比率を向上させていくことで住宅使用時のエネルギー削減に寄与し、2030年度までに2016年度比で50%削減していきます。

  • ※1 SBT:Science Based Targets の略称。パリ協定の採択を契機として国連グローバルコンパクトをはじめとする共同イニシアチブが提唱。SBTイニシアチブにより、企業が定めた温室効果ガス削減目標が、長期的な気候変動対策に貢献する科学的に整合した目標(SBT)であることが認定される。
  • ※2 RE100(Renewable Energy 100%の略称): RE100はThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで主催し、We Mean Business連合の一部としても運営。日本では2017年より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が、RE100の公式地域パートナーとして日本企業の参加と活動を支援している。

積水化学グループでは、気候変動課題を経営上の重要なリスクと認識しており、取締役会による監督体制のもと、環境分科会において戦略の策定、目標の設定、進捗管理を行っています。環境分科会議での決定事項は、サステナビリティ委員会で審議・決議するとともに、重要事項については取締役会で審議・決議します。

昨今、気候変動課題の緩和と適応に関する対策の迅速化およびさらに長期的な目線でのリスク評価の強化が求められています。当社グループでは課題解決やリスクの把握およびリスクへの対処を加速するため、2019年に賛同したTCFD※3(気候関連財務情報開示)の提言に基づいた情報開示において、当社の事業分野において、2℃・4℃の気候変動と、全社事業において共通性が高い分散・集中という軸での4つのシナリオを想定して分析し、リスク評価を実施しました。

分析の結果、積水化学グループの住宅およびインフラ関連製品群はいずれも高い耐久性、災害耐性などを備えたレジリエントな設計となっており、4℃シナリオにおいて、課題解決に貢献し、ビジネスを拡大することができると考えています。また、気候変動の緩和に努めた2℃シナリオにおいても、GHG排出量抑制や、再生可能エネルギー転換の後押しとなるソーラー搭載住宅や、新しい創エネルギー技術、車輌や航空機の省エネを後押しすることのできる素材の開発などによって、課題解決に寄与し、ビジネス機会を獲得することができると考えます。想定されるリスクに備えた製品の開発と補強、あるいは分散化した場合に必要とされる技術などいずれにおいても備えや、リスクを機会に転換する準備があることが確認できました。

長期的な気候変動リスクに対して、バックキャストした事業、製品の展開を検討し、経営会議にて企画に関する議論を行い、ビジネスとしての実施判断を行っています。2019年には再生可能エネルギーの有効利用を促進していくため、「スマートハイムでんき」事業により、ソーラーパネルを搭載している住宅のお客様から、ソーラーパネルで発電した余剰電力を買い上げ、自社の住宅工場での使用や、他のお客様に使用いただくサービスを展開していくことを決断し、ビジネスを始動しました。

また2030年に向けて戦略的に成長させていく事業分野(レジデンシャル、アドバンストライフライン、イノベーティブモビリティ、ライフサイエンス、に加えてネクストフロンティアとして、エネルギー分野)に対して、売上高や営業利益の大きさ、利益率、成長性などを考慮し、気候変動の2℃シナリオ、4℃シナリオの2つの気候変動シナリオに基づいて移行リスクおよび物理リスク洗い出しの再確認を行いました。

今後もリスクを機会に転換可能な事業への取り組みを検討し、事業戦略立案に活かすことを検討していきます。

  • ※3 TCFD:2015年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)により設立された気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)。気候変動が企業の財務に与える影響の分析を行い、対応に関する戦略についての情報開示を推奨している。

詳細はTCFD Report 2020をご覧ください。

水リスク課題に向けて

水リスク課題に関しては、自社の持続的な操業・発展には企業活動の場を健全に維持する必要があると考え、引き続き全社として使用する水の量を低減し、循環利用を進めるとともに、河川に放流する水の質をCOD指標においても向上するにように努めます。

私たちが活動するすべての地域とサプライチェーンにおける健全な水に満ちた社会のために、「積水化学グループの水リスク最小化」と「地域の水課題解決への貢献」の2つの目指す姿を設定し、2050年に健全な水に満ちた社会を実現するという目標を定め、取り組んでいきます。水リスクを最小化するために、事業影響の大きい拠点・調達先や水リスクが顕著な拠点を選定し、2030年までに環境負荷を最小化していきます。

また、水の供給・貯水・排水などの水インフラに関する事業を展開し、水処理システムや下水管など、排水の質の向上に寄与する技術や製品だけでなく、強靭で災害に強い水インフラを構築することでも社会に貢献しています。例えば、日本、インド、中国、台湾ほか、ASEAN地域で展開している製品の一つ、雨水貯留システム「クロスウェーブ」は、慢性的な水不足、都市緑化および防災を目的とした雨水の循環利用、洪水による災害対策などの水リスク軽減に、2010年から継続的に貢献してきました。2019年度は、インドネシアの大規模宅地造成で「クロスウェーブ」が採用され、インドネシア内のグリーンインフラ事業に寄与しました。現地水資源局とも協力体制を構築しています。

水リスクの低減が可能な製品を活かしたまちづくりも進めています。埼玉県朝霞市における「あさかリードタウン」は水リスク低減をはじめとするさまざまな課題を解決し、安心・安全で快適なくらしを後押しする積水化学グループの技術、製品を活かしたまちづくり事業の第一歩です。住宅においても気候変動によって増加する災害による被害を軽減し、災害復興を支援する「縮災」のために、水インフラ配管を活用した「飲料水貯留システム」の設置を推奨するなど、お客様の「LIFE」に提供できる安心の価値を拡大しています。

積水化学グループでは、サステナビリティ貢献製品の開発を継続的に推進していくことで地域の水課題解決やサプライチェーン上の環境負荷最小化へ貢献していきます。

  • ※クロスウェーブ: 雨水貯留システム。再生プラスチックを原料とした成形品で、地下に埋設して空間を形成し、雨水を貯留するために使用される。豪雨時に下水道や河川に流れ込む雨水の量を調節し、雨水の再利用を可能にする。

資源循環に向けて

資源循環に関しては、積水化学グループはモノづくりにおいて、ライフサイクル全体で「3R」(Reduce:使用抑制、Reuse:再使用、Recycle:再資源化)を徹底し、事業活動に起因して発生した廃棄物すべてを資源として再利用する「ゼロエミッション活動」に取り組んでいます。2020年度からは、この生産事業所におけるゼロエミッション活動の継続とともに、2050年サーキュラーエコノミーの実現、循環型社会の実現を目指して、再生材料の活用、廃棄物のリサイクル技術の開発と社会実装に対する取り組みなど、リサイクルの推進に取り組んでいきます。

特にプラスチックの成型加工メーカーの企業責任として、自社の生産事業から排出される廃棄物に関しては、廃棄物業者とマニフェストを交わし、適正な処理が行われるよう確認を行っています。また、近年、「マイクロプラスチックによる海洋汚染」が問題となっていますが、当社グループでは、溶出を前提とした用途での一次マイクロプラスチックの製造販売は行っていません。ただし、販売した製品が社会で使用される中で、あるいはお客様に使用された後、廃棄されるプラスチック加工品、あるいは製品の中に含まれるプラスチック素材に関しては、適正な廃棄が行われなかった場合には、自然環境の中で劣化し、マイクロ化する可能性は否定できません。この問題の根本的な解決を図るため、従業員教育はもちろん、クリーン・オーシャン・マテリアルズ・アライアンス(CLOMA)、Japan Initiative for Marine Environment (JaIME) (和名:海洋プラスチック問題対応協議会)に参画し、国際連携、問題解決の手段検討などに努めています。

また、原材料となる石油由来の炭素を循環させる炭素循環の技術の社会実装に向けた取り組みを加速しています。具体的には、海洋プラスチックを含む可燃ごみをガス化し、そのガスから微生物の力でプラスチックの原料となるエタノールをつくる技術(バイオリファイナリー)を開発し、埼玉県寄居町のテストプラントで、社会実装に向けての課題抽出やスケールアップに向けた検討を行っています。また岩手県久慈市で商用10分の1規模のパイロットプラントでの実証を始動しており、住友化学株式会社とも協力し、廃棄物からつくったエタノールを原料としたプラスチックの開発も行っていきます。廃棄物から新たにプラスチックをつくるケミカルリサイクル技術を確立し、普及していくことで、循環型社会およびサーキュラーエコノミーの実現に寄与していきます。

バイオリファイナリー(BR)

人材

サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造しつづけるために、積水化学グループはダイバーシティや働く環境に考慮して、挑戦する人材の育成に取り組んでいきます。

人材に関する考え方

積水化学グループは、「従業員は社会からお預かりした貴重な財産である」という考え方に基づき、従業員が活き活きと働くことができる環境づくりに取り組むとともに、一人ひとりが自分の“得意技”を磨き、成長していくことを支援するさまざまな機会を提供します。

また、個々人の人権を擁護することは社会的な責務であると認識し、一人ひとりの多様性、人格、個性を尊重するとともに、各国・地域に対応した多様な働き方・安心して働ける職場づくりを推進します。

ダイバーシティマネジメント

当社グループは、「多様性」を性別、年齢、国籍等の外見で分かる違いでとらえるだけでなく、経歴、価値観、性格なども含めた違いにも着目し、従業員一人ひとりの違いを理解し、認め、強みとして活かしています。

「100年経っても存在感のある企業グループであり続ける」ためには多様性が不可欠との認識に立ち、2015年11月には「ダイバーシティマネジメント方針」を策定しました。

多様な事業を展開している当社グループが社会に貢献し続けるためには、従業員一人ひとりが持つ多様な「志向」や「持ち味」を最大限発揮することが不可欠であるとして、女性活躍を含むダイバーシティマネジメントに取り組む重要性について、経営トップのコミットメントを社内外に発信しています。

ダイバーシティマネジメント推進体制(サステナビリティ委員会、人材分科会)

サステナビリティ委員会は、ダイバーシティ経営を含むCSR全般の施策について審議を行っています。サステナビリティ委員会は社長が委員長となり、カンパニープレジデントなど経営層と女性社員、労働組合を含む従業員代表から構成され、その決議事項は取締役会にも報告しています。

人材分科会は、当社グループにおけるダイバーシティ経営に必要な人材の確保・育成・活躍、働き方改革についての審議・決定・モニタリングを行っています。そして、人事担当役員が委員長となり、各カンパニーから選抜された執行役員・人事部門長から構成されています。人材分科会は、2019年度は9月、3月に計2回開催しました。

サステナビリティ委員会、人材分科会とは別に、従業員一人ひとりにまでダイバーシティ施策を展開する体制として、ダイバーシティ推進活動「みんなの職場づくりプロジェクト」があります。当社グループ国内81組織に推進責任者、担当者を設置し、各組織のダイバーシティマネジメント施策が円滑に進むよう取り組んでいます。

  • ※CSR委員会を2020年度からサステナビリティ委員会へ改称

多様な人材の活躍

(キャリア志向)

一人ひとりのキャリア志向に対しては、グループ経営を牽引するビジネスリーダーの育成と現場のモノづくりを支える人材の育成を両輪として、グループ全体で一人ひとりのキャリア志向に応じた人材育成機会の提供を推進しています。また、「自ら手を挙げ挑戦する」人を応援し、個人の成長を支援するための制度や機会も提供しています。

次世代リーダー育成の取り組みとしては、執行役員自らが教育者となって、積水化学グループの次世代リーダー候補を対象に直接鍛えることを目的とした社内塾(変革塾)を実施しています。変革塾では、「会社を変える、一人ひとりの行動を変えていく」ために、就任2年目までの執行役員を塾長として、意欲の高い若手社員を、カンパニーや事業領域の枠にとらわれず、広くグループ全体の次世代リーダー候補として育成することを目指しています。

経営幹部と直接対話し、大いに議論を交わす中でリーダーとしての志を学ぶとともに、社内外人材との交流を通して、視野を広げる絶好の機会にもなっています。

(年齢)

若手社員の定着・活躍に向けて、新入社員の配属に関しては職場への円滑な受け入れと早期戦力化を目的に、育成担当者制度を設け、仕事や業務指導などから社会人としての常識・行動面の指導、精神面のフォローなどを行っています。育成担当者も、後輩育成経験を通じて、一つ上の視座を獲得するなど育成担当者自身の成長も促進することができます。

また、高年齢者の活躍推進のために、1993年度から定年後の再雇用制度を導入し、2006年度からはグループ各社にも展開を進めています。定年後のキャリアを考える「57歳研修」の実施に加え、一層のやりがい・働きがいを醸成するため、2015年10月に高年齢者再雇用関連諸制度(シニアエキスパート制度)も改訂・実施しています。グループ全体で65歳まで働き続けるための制度の整備を完了させており、希望者は全員継続または再雇用される仕組みです。

(性別)

当社の女性活躍推進は2007年度から取り組みを開始し、2015年度からは、女性活躍推進をファーストステップとしたダイバーシティマネジメントをグループ全体で展開しています。女性活躍推進では、「定着と活躍」、「管理職創出」の段階ごとに目標を定め、取り組みを進めています。中でも、女性管理職候補とその直属上司を対象にした実践型の研修など、活躍の場の拡大に注力した結果、女性社員の定着率向上や女性管理職数が増加しています。2019年度には、社外取締役、社外監査役、執行役員にそれぞれ女性が1名ずつ就任しています。

これらの取り組みが評価され、経済産業省および東京証券取引所により、2019年度の「なでしこ銘柄」に選定されました。この選定は、2016年度、2017年度に続き、3度目の選定となります。

(障がい者)

障がい者の雇用は、単に障がい者の採用を進めるだけでなく、障がい者の方が働きやすい環境づくりも重要であると考え、その環境整備のため、グループ全体の人事部門を対象とした合同研鑽会や、障がい者が勤務する部署の従業員を対象に専門家による勉強会を開催しています。

(グローバル)

海外売上高や海外人員の比率が年々高まっている中で、世界各国で働く従業員一人ひとりが仕事を通じて成長し、各国のニーズに合った良い製品やサービスを提供することが、グループ全体の発展につながると考え、国や地域ごとに異なる事業特性や歴史、マネジメント、生活習慣、各種法令などに適応するため、それぞれの国・地域で能力を発揮できる人材の育成に注力しています。

外国籍社員の採用のほか、グローバル人材を育成する「グローバル社員制度」などの施策を推進しており、2020年度からはより計画的にグローバル人材を育成するプログラムを開始することでグローバル化をさらに加速させます。

また、海外人材の育成も急務となっていることから、グローバルな市場で活躍する次期経営人材を育成するために「グローバル際塾」を実施しています。北米、欧州、オセアニア、日本の各エリアのグループ各社の幹部社員12人が、「積水の価値観の発現力」「マネジメント力」「事業創造力」等、グローバルな舞台で活躍する人材に求められる経営能力を高めるプログラムに参加しました。

働き方改革の推進

ダイバーシティマネジメントを加速するため、2018年を「働き方改革元年」と定め、全社を挙げて取り組んでいくための第一歩として「働き方改革宣言」を制定しました。限られた時間で成果を最大化するための「生産性向上」につなげるため、「業務改革」「人事制度改革」「就業環境改革」の3つの改革に取り組み、少しずつ改善が進んでいます。働き方改革の取り組みにあたり、年間総実労働時間や休日数、有給休暇取得率の目標を定め、その達成に向けて取り組んでいます。

業務そのものや就業環境の改革の効果を継続的に発現するためには設備投資、システム導入が不可欠なものが多くあります。そのために、2018-2020年度の3年間で100億円を投資し、全社を挙げて労働時間の削減を支援しています。2018、2019年度の2年間で全社累計約65億円(2020年度実施分を含む)の投資を受け付けました。住宅組立ラインの再構築/生産自動一貫ライン導入、セキスイハイムミュージアムによる営業革新、生産管理システム導入やTV会議などのシステム導入など、投資を実行することで労働時間の削減を推進しています。

柔軟な働き方の実現に向けては、2019年度よりリモートワークシステムを導入し、働きやすさとセキュリティの両立も実現しました。

健康経営の推進

ダイバーシティマネジメントの基盤となる従業員の心身の健康推進に取り組みをさらに進めるため、当社が目指す健康経営の理念やあり方をまとめた「健康宣言」ならびに「健康経営基本方針」を2019年3月に制定しました。当社グループが目指す健康をWHO憲章の定義であるWell-Beingとし、こころ、からだ、そしきのWell-Beingを目指しています。すべての従業員のWell-Being達成に向けて、1.からだ、2こころ、3.そしき、4.グループ一体での取り組み、5.働きがい・生産性向上の5つのセグメントに分けて中長期の目標を設定して推進しています。具体的には、7つの健康習慣の推進による健康寿命の延伸、ストレスチェックの有効活用によるメンタルヘルス対策と活き活き職場づくり、ICT活用によるデータ分析に基づいた健康推進活動などに取り組んでいます。2018年度下期から2019年度にかけて取り組んだハイリスク職場では、ストレスチェック結果の詳細分析や従業員へのヒアリングなどを行い計画的に取り組んだ結果、職場環境が改善した事例もあります。

こうした全社的な視野で従業員の健康に関する課題解決に取り組んでいることが認められ、経済産業省および健康経営優良法人制度を運営する日本健康会議により4年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門(ホワイト500))に認定されました。

デジタル変革(DX)

サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造し続けるために、積水化学グループはデジタル変革(DX)を起こして企業活動を推進していきます。

DX全体像

積水化学グループにとってのデジタル変革(DX)のミッションは、長期ビジョン実現のための成長戦略・構造改革を加速、下支えすることです。より不確実さを増す経営環境において、持続的な成長を実現するために、従来のガバナンス、ビジネスモデル、ビジネスプロセスを見つめ直し、「見える化・標準化」「生産性向上」「高度化」の視点で変革を進めていきます。

そして生産性を高め、「ひと」を価値業務へシフトし、活気あふれる従業員の挑戦によって社会へ価値提供し続けることができる企業であり続けたいと考えています。

中期計画(2020-2022年度)においては、推進体制を強化し、成長戦略・構造改革をサポートしていきます。

中期計画(2020-2022年度)主要施策

積水化学グループ全体グローバルでの生産性向上を目指し、足元課題の解決と長期成長の仕込みを推進します。2020年度は、DXの中核となるグローバルERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)への経営基盤刷新計画と並行して、グローバル購買改革を皮切りに、各業務領域の改革に着手します。

これらの改革を下支えするインフラ・セキュリティについても、コロナ禍における多様な働き方を前提に含め、段階的に投資を進めています。

融合

積水化学グループは技術プラットフォームをベースとして、社内外のさまざまなステークホルダーや企業と融合し、イノベーションを加速していきます。

これまで、さまざまな取り組みを技術、事業機会、経営資源の融合によって加速し、新製品・新事業の創出や新分野・新エリア・新用途の開拓、そして収益力強化に向けた事業構造改革などを推進してきました。前中期経営計画(2017-2019年度)では、融合による売上高増分と新事業創出の加速を掲げ、売上高は2016年度比で約400億円の増分を、新事業創出ではまちづくり事業の本格化と、ごみをエタノールに変換する技術(バイオリファイナリー)の実証を次のフェーズに進めることができました。

想定するバイオリファイナリー(BR)エタノール技術の事業化および事業展開のスケジュール

2020年8月には、高機能プラスチックスカンパニーにおいて、同カンパニーの主要開発拠点である開発研究所内に、水無瀬イノベーションセンター(MIC)を併設しました。通信業界における5Gの普及や、自動車業界の自動運転を含むCASEの進展など、通信や自動車業界の変容に伴い重要となる、各分野を横断した人や情報の融合とイノベーションのさらなる加速を狙います。

今後も、社内外との融合をさらに加速させ、オープンイノベーションを推進することで、社会課題の解決に寄与する革新的な製品、事業の創出と普及に努め、社会課題解決への貢献および業容の拡大を目指します。

水無瀬イノベーションセンター(MIC)の外観と内観

研究開発・モノづくり・知的財産

積水化学グループにとって、価値創造の根幹は際立つ技術にあると考えています。中でも、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の領域に強みを持つ技術プラットフォームがその土台となっています。積水化学グループはこの技術的な際立ちをさらに進化させるために、研究開発やモノづくり、さらには知的財産の分野において人員、組織の両面で継続した強化を進めています。

研究開発・モノづくり

研究開発に対する考え方と研究開発体制

当社グループの長期ビジョン「Vision 2030」では、「Innovation for the Earth」をビジョンステートメントとして掲げ、レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレクトロニクス/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つのドメインおよびネクストフロンティアにおいて、際立つコア技術を起点にイノベーションを起こし続けることで新領域を創出し、LIFEの基盤を支え“未来につづく安心”の創造を追い求めていきます。

このベースとなるのが、われわれの2つの事業領域である「住・社会のインフラ創造」「ケミカルソリューション」に関連する28の技術プラットフォームです。これは当社グループの製品群を支えるコア技術であり、長年にわたって培ってきた競争力の源泉ともいうべきものです。例えばその一つが、素材の機能性を高める成形や部材にスマートな価値を付与する加工であり、お客様の声に真摯に向き合うことで付加価値の方向性を見出しています。また複数の技術プラットフォームを効果的に融合することで、厳しい競争環境の中でも圧倒的に勝ち切れる新たな製品やサービスの開発をしています。

これらを担う当社グループにおける研究開発体制としては、住宅カンパニー、環境・ライフラインカンパニー、高機能プラスチックスカンパニーの3カンパニーおよびコーポレートに4つの主要研究開発拠点を、また積水メディカル株式会社など主要グループ会社にも独自の研究所または研究開発部門を設けています。

カンパニーの研究開発では、既存事業の強化およびフロンティアの開拓に直結し近未来の収益につながる製品開発、生産技術テーマを手掛けています。2019年度は、IoT機能の強化でエネルギー自給自足型住宅の安心性・利便性を向上させた「新・スマートパワーステーション」、頻発するゲリラ豪雨に対応すべく従来の同サイズと比べて4倍の排水能力を持つ大口径の「大型高排水システム」、成長市場である5G向けの放熱材料「高熱伝導シート」などを市場に投入しました。新次元の成長に向け、引き続き2020年度も新製品を積極的に投入していく予定です。

一方、コーポレートでは独立した研究組織として、技術的なハードルが極めて高く中長期的な時間軸で取り組むべきテーマ、カンパニーをまたぐような大型テーマ、これまで取り組んだことのない新しい事業領域のテーマなどの研究を行っています。例えば「ごみをエタノールに変換する世界初の生産技術」では、住友化学株式会社と“ごみ”を原料としてポリオレフィンを製造する技術の社会実装に向けて協力関係を構築することに合意し、事業化へ向けて動き出しました。その他のテーマも魅力ある新事業創出を目指し、精力的に開発を推進しています。

さらにカンパニー間およびカンパニーとコーポレートがそれぞれ保有する知的資本を持ち寄り共同で開発を進める「融合テーマ」にも取り組んでおり、これをサポートする仕組みとして、NIC(New Innovation Committee)という会議体を設けています。これは研究開発・モノづくり・経営戦略・人事の各担当役員をメンバーとし、融合が見込めるテーマを募集して審査を行い、採用されたテーマには、コーポレートで費用を負担する、あるいは必要な人材を派遣するなどの支援を行っています。これまでに多くのテーマが認定され、すでに動き出しています。例えばタウンエネルギーマネジメントシステムの開発では、「セキスイハイム」にお住まいのお客様から太陽光発電の余剰電力を当社が買い取り、発電設備を持たない「セキスイハイム」にお住まいのお客様にも供給するとともに、当社グループの国内の工場や事業所で活用させていただくサービスを2019年度より開始いたしました。これからもまちづくり、航空機・移動体、細胞培養ソリューション、AI/IoT領域などをカンパニー横断で推進して融合による創出を強化していきます。

モノづくり力の強化

当社グループでは、新製品開発につながる研究開発だけでなく、既存製品の競争力強化にもつながるモノづくり力の強化にも取り組んでいます。

中期経営計画「Drive2022」では、モノづくり力に関連する方針として「現場力とデジタルの融合により働くすべての人が安心して貢献に邁進できる”現場”の実現」を掲げ、重大インシデント発生ゼロ、生産性2倍を目指しています。中期計画では、内部統制、生産技術、そしてICTの3つの取り組みをしています。

内部統制では、品質検査工程のデジタル化による品質改ざん抑止力強化と、予兆型リスク管理の仕組み構築・展開を推進しています。生産技術では、工程の自動化、デジタルによる形式知化、そして現場ICT/IoTを推進する人材の育成をしています。ICTでは、データ基盤の統一によるグローバル標準モデル構築、工場間のデータ連携基盤構築を推進しています。

このような活動を通して、当社グループは際立つ技術と品質により「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。

お客様の声を従業員が共有する仕組み

積水化学グループのお客様相談室には、1年間で1万件を超えるお問い合わせ・ご意見などが寄せられます。積水化学グループでは、お問い合わせ内容へ真摯に回答することはもちろん、問い合わせをされるに至ったお客様の動機を独自に分析することで、お客様の「見えないニーズ」を発掘しています。お客様からのご意見を抽出し各カンパニーの各事業部に絶えずフィードバックすることで、製品仕様の見直しなどCS品質の向上に役立てています。

積水化学グループでは、今後も「お客様の声」を起点に3つの品質(人、仕組み、モノ(製品とサービス))の向上を目指していきます。

研究開発・モノづくりに関する人事・処遇

当社グループでは、優れた研究者・技術者への評価・処遇の一環として「技術賞」、「発明大賞」制度を設けています。

また、専門性の高い研究者・技術者を対象に「スペシャリティ職」制度も設けています。高度な専門性を有する際立つ人材をスペシャリティ職に任命し、社外においても通用する際立つ技術者の育成を図っています。2020年4月時点で27名がスペシャリティ職に任命され、長期的な視点で技術プラットフォームの強化活動を推進しています。

さらに「マイスター職」は、当社グループの持つ技能領域と目指すべき方向性を示し、技能者一人ひとりのモチベーションの向上と優れた技能の伝承を図ることを目的としています。2020年4月時点で3名がマイスター職に任命されています。今後もモノづくり技能者の育成・活性化の一環として高度なモノづくり技能者を高く処遇するとともに、当社グループのモノづくり力をさらに高めていきます。

知的財産

基本方針

知的財産は、企業の競争力の源泉であり、企業価値の最大化に向けた成長・収益を支える重要な経営資源です。当社グループでは、技術の「際立ち」を最大限に活かし事業へ貢献させるべく、知的財産情報や市場・競合情報などによる競争環境分析を起点とした戦略構築や知的財産のポートフォリオマネジメントなど戦略的な知的財産活動を推進しています。加えて、DXの活用はもとより、マテリアルズ・インフォマティックスやAIといった新潮流への知的財産としての対応も積極的に取り組んでいます。上記を通して、中期経営計画「Drive2022」に対して知的財産面から事業の成長と創造に貢献していきます。

カンパニー制に対応した知的財産活動

当社グループでは、カンパニー制に対応した知的財産活動を推進するためコーポレートとカンパニー各々に独立した知的財産部門を設けています。

コーポレートでは、全社共通の知的財産戦略の企画・立案、商標の保全、知的財産教育、知的財産管理を行っています。加えて、新製品・新事業創出に対し、企画段階から特許情報だけでなく事業活動に関わる幅広い非特許情報にも拡張した未来視点でのIPランドスケープを実施し、先手を打った戦略的な知的財産活動を推進しています。

各カンパニーでは、知的財産部門と事業部門、研究開発部門とが常時連携することで、競合他社に対する競争優位化を図り自社事業の拡大・成長へとつなげる知的財産活動を推進しています。

このように、コーポレートと各カンパニーの知的財産部門とが役割に応じた知的財産活動を推進しつつ密接に連携することで、知的財産面から当社グループのイノベーションをリードしています。

ブランド価値向上に向けた取り組み

当社グループの事業は多岐にわたっており、その活動範囲も国内外に広く及んでいます。そのため当社グループを代表するコーポレートブランドとして、2009年にをハウスマークと位置付けました(2019年度末時点で103ヶ国で商標権を取得)。また、全世界の従業員がを正しく使用するよう「視覚標示基準(ブランドブック)」に基づいた使用管理をしています。

一方で、当社グループのブランドを毀損する模倣品や商標権侵害および商標の冒認出願などについては常時監視を行い、他社の不正行為に対しては断固たる姿勢を維持していきます。

知的財産文化の盛り上げ

従業員の知的財産マインド向上を目的として、一定数以上の出願を行った者に対して「Pバッジ」を付与する制度を2010年度から開始しています。現在では、技術者であればPバッジを持っていることが当たり前の文化とまでなっています。

知的財産活動の成果に対してはさまざまな表彰制度を設けており、利益貢献した発明に対する表彰のほか、出願に関しては年間出願件数や発明の独創性、出願網の強さなどを基準に、またライセンス収入や他社の参入阻止などの権利活用に関しても表彰するなど、従業員の知的財産に対するモチベーションの向上を図っています。

中でも、当社グループに特に大きく利益貢献した発明に対しては、その発明者の功績を称えるべく社長表彰としての発明大賞制度を設けています。発明大賞制度は、利益貢献額により特級から3級の4つのグレードに分かれており、それぞれ等級に応じた報奨金を支給しており、特に特級の報奨金は利益貢献額に比例して上限のない制度になっています。本制度は1999年度から21年目となり、2019年度は合わせガラス用中間膜に関する発明で発明大賞1級の認定がなされました。

従業員への知的財産教育

入社3年目までの技術者を対象に、習得すべき知的財産の基礎知識から戦略構築までを必修科目として設定し、全社共通の教育を実施しています。2019年度は、28回の講習会を実施し、対象者ほぼ全員にあたる約480名の技術者が参加しました。

さらに、上記に併せて、事業に則した実践力を養うためにカンパニーごとに個別の専門教育を行っています。また、商標・ブランディングについては、マーケティング・営業担当者に対しても教育対象を広げています。

パフォーマンスデータ

当社は、株式会社パテント・リザルトが公表した「特許資産規模ランキング」および「他社牽制力ランキング」において、2019年は化学業界でそれぞれ5位および4位となり、直近5年でトップ10を維持しています。

特許の出願件数および保有件数は安定して推移しており、これらは開発費あたりの出願件数、売上高あたりの保有件数で同業他社と比較しても高い水準にあります。また、事業活動のグローバル化に伴い、海外出願にも力を入れています。

特許資産規模ランキング2019
特許出願件数(国内)
他社牽制力ランキング2019
特許保有件数(国内外)
研究開発・モノづくり・知的財産推進体制

内部統制

重大インシデントの抑制

積水化学グループが持続的に社会課題解決への貢献を拡大し、そして持続的な成長を実現するためには、重大インシデントを発生させないこと、そしてそれらによって大きな企業価値の毀損を招かないように経営基盤を盤石にすることが重要です。この重大インシデントの例としては、世の中で問題になっている品質データの偽装や会計不正などの「コンプライアンス問題」、工場爆発・有害物質漏洩などの「産業事故」、そして大規模リコールなどの「品質問題」などが挙げられます。

当社グループでは、特に全社的に大きく影響する可能性のある事象を5領域(安全、品質、経理、法務・倫理、情報管理)でそれぞれ定義し、全社視点で中長期的な優先順位を決定したうえで、全社で人・モノ・金のリソースを集中的に投入して発生頻度を減らす・発生時の影響度を低減させる施策を両輪で進めています。今中期経営計画で、具体的にはサイバー攻撃やシステム障害、機密情報漏洩などの情報セキュリティ強化や、品質検査データの堅牢性確保などの施策を、デジタル変革や自動化のテーマと一体で進めていきます。

5領域重大インシデント

(安全)

安全の基本は、「自分の安全は自分で守る」ことであり、従業員一人ひとりが危険を危険と判断できる感受性を持つことが大切です。設備面の安全を万全にしても、人の作業や行動に危険が潜んでいることを認識しておく必要があります。そのため、安全教育や危険への感受性を高めるための取り組みとともに、決めたルールを守り、守らせる風土づくりに力を入れています。

同時に、従業員が安全に、安心して働くことができる職場づくりは企業としての責任であり、経営における最重要課題の一つと考えています。積水化学グループでは、5つのテーマを柱とするトータルセーフティー活動(労働災害ゼロ、設備災害ゼロ、通勤災害ゼロ、疾病長欠ゼロ)に取り組んでいます。

  • ※ 5つのテーマ:①「設備」の本質安全化、②OHSMSによる「安全管理」、③従業員の「安全教育」、④危険予知活動などの「リスク予防」、⑤安全衛生・防災に関する「安全監査」
労働災害発生件数
安全活動の率先垂範

安全活動では、各事業場のトップがリーダーシップを発揮し率先垂範することが最も重要と認識しています。安全活動を牽引する人材として、2019年度に38名(2017年度から累計68名)を「セーフティリーダー(SL)」に認定したほか、設備本質安全化を推進する「セーフティサブアセッサー(SSA)」の資格取得奨励を進め、2017年度以降で累計140名が取得しています。

安全監査

労働安全衛生マネジメントシステム監査評価書を整備し、各事業場での自己評価およびコーポレートによる監査に活用しています。2018年3月に発行されたISO45001の要求事項を取り込むなど、評価項目は毎年見直しされています。2019年度は、安全管理活動や災害発生状況を勘案し、例年より絞り込んで国内20事業場でコーポレート監査を実施しました。

労働安全アセスメント

積水化学グループでは、「安全管理規則」第14条で、新規事業などを立ち上げる際に、当該事業部長の責任で労働安全に関する総合的な事前評価を行うように定められており、この安全規則に基づいて事業を立ち上げるカンパニーがアセスメントを実施しています。

リスクの早期発見

「自職場のリスクを自分で発掘し改善する」ことができる人材を育成するため、2016年度からリスク抽出力アップ実践研修を開催しています。これまで通算で10事業場で開催され、延べ受講者は239名にのぼります。受講した参加者による自職場におけるリスク発掘および改善状況をモニタリングしており、本研修で1,900件以上のリスクが発掘され、受容できないリスクの改善が進められています。

火災・爆発防止対策

ひとたび起こると周囲の環境や事業の継続に大きな影響を与える火災・爆発災害を防止するため、これまでに実施してきた安全監査に外部の防災専門家を迎えて「防災監査」を実施しています。「危険物の保管・取扱状況」「自然災害等の被災時の復旧体制」などを確認し、災害リスクを早期に発見し、未然防止対策を進めています。

2014年度から2017年度に発生した火災(小火を含む)20件の再発防止策(147項目)のうち、139項目が維持されていることを確認しました。残りの8項目についてはさらなる施策強化が必要であることを提案し、改善の完了を確認しています。

2019年に発刊した「職長のための火災・爆発撲滅!防災ハンドブック」第2版に基づく火災・爆発リスクの発掘を国内全48事業場で実施しており、2019年度までに4,072件を発掘。改善が必要なリスク2,069件のうち、2019年度末時点で1,858件(90%)のリスク低減が完了しています。

緊急事態対応

積水化学グループでは、リスクの高い災害に対し、特に予防に注力すべき災害として、生産事業場における「挟まれ・巻き込まれ」、施工現場における「墜落・転落」、化学プロセスにおける「火災・爆発」を設定しています。特に化学プロセスを製造の軸とする工程では「頭上訓練」を実施しています。

「頭上訓練」とは、トラブルに遭遇した際の従業員一人ひとりの判断力を鍛えるための訓練です。具体的には、現場で長年勤務している指導担当者が「想定していた危険回避のための装置が機能しなかったらどうする?」などの質問を投げかけ、訓練を受ける側は対処法を頭の中で考え回答します。このように現場レベルで長年培った安全ノウハウを後進に伝えることで、災害発生時の想定外事態対応のスキルを向上させています。また、訓練を通して設備的対策の改善や、作業手順書の見直しも進めています。この訓練は、トラブル処置以外にも避難訓練や防災訓練などさまざまな機会に応用されています。

海外事業場安全監査

地域ごとに法規制や文化が異なる海外の生産事業場において、安全活動レベルの底上げのために安全に関するグローバル基準を定め2013年度から展開してきました。2014年度からこの基準に基づく安全監査を本格的に開始し、2019年度は7事業場で実施しました。また、地域の課題を共有して対策を議論する「安全研鑽会」を北米・中国地域で開催しており、以前の日本主導から地域統括会社現地スタッフの企画・実施にシフトしています。プログラムには、方針展開、事業場活動事例共有、有識者講話、災害原因探索手法などのテーマを年度ごとに組み込んでいます。

(品質)

中期計画(2017~2019年度)の実績

中期計画の最終年度となった2019年度は、重要品質問題※1が1件発生しました。新製品※2については、新たな発生はしていません。外部損失費※3は2016年度比で減少となりました。今後、重要品質問題ゼロを達成するため、「開発ガイドライン」および「日常管理ガイドライン」をベースとしたサプライチェーン全体での品質管理活動を推進します。また、グループ全体の品質保証システムの強化と変更点・変化点の管理、不具合の未然防止による品質リスク低減活動の展開によって、外部損失費のさらなる削減を目指します。

  • ※1 重要品質問題:「製品・技術・サービスの品質」に関し、緊急に根本解決を図らなければ、お客様・社会・積水化学グループに対し重大な損害を与える問題。
  • ※2 新製品:新分野・新技術の開発品で、カンパニーが選定した難易度の高い製品。
  • ※3 外部損失費:製品に関するクレーム対応の費用。
品質を支えるのは現場でのモノづくり

積水化学グループは、品質を支えるのは現場でのモノづくりであると認識し、2006年度から生産活動の革新に注力しています。品質の不備は、クレームへの対応や廃棄物の増加といったロス・ムダ…つまりコストにつながるという考えのもと、「事故・不良ゼロ、廃棄物ゼロ、クレームゼロ」という「3つのゼロ」に取り組んでいます。

品質不正の防止

2017年から2018年にかけて品質管理に関する不正が国内で多発したことに鑑み、積水化学ではこの教訓を他山の石とするために、全グループの全製品について品質データの不正や無資格者による検査などが行われていないことを確認するための社内調査を実施しました。その結果、監査員の認定、公的認証、品質に係る瑕疵について、違反や不正につながる恐れのある事案がないことを確認しています。

2019年度は、2020年度スタートの新たな中期計画から、さらにデータ改ざん防止を徹底するための体制づくり、仕組みづくりを進めました。また、積水メディカル株式会社では、米国の品質認証(FDA)を2019年度に初めて取得しました。

今後も積水化学グループは、品質保証力を強化することを目的に、お客様との仕様の取り決めの遵守やコンプライアンス意識の再徹底を図るとともに、検査の信頼性と透明性の確保を通じて不正が発生する余地を撲滅するため、品質管理に関する社内調査を継続して実施していきます。

(コンプライアンス)

積水化学グループでは「コンプライアンス宣言」を制定し、「社会への貢献」「信頼される企業」「法やその精神の遵守」などの考え方を基本として、当社グループの理念体系および企業行動憲章に掲げられた精神に則り、コンプライアンスを通じて社会から高い信頼を獲得する姿勢を明確にしてきました。積水化学グループにとって、コンプライアンスは経営そのものであり、積水化学グループが広く社会から信頼されるよう、コンプライアンス意識の向上に今後も取り組んでいきます。

重要コンプライアンス問題の防止

中期計画(2017-2019年度)で掲げた「重要コンプライアンス問題の発生件数ゼロ」は、2015年度以降「発生件数ゼロ」を継続し、2019年度でも重要コンプライアンス問題の発生はゼロ件でした。2020年度からのCSR中期計画においても、引き続き「重要コンプライアンス問題の発生件数ゼロ」を目標に掲げ、コンプライアンス経営を強化し、コンプライアンス問題の未然防止に取り組んでいきます。

コンプライアンス意識の浸透

コンプライアンスの意識を従業員一人ひとりに根付かせるため、積水化学グループの一員として遵守すべきことを記載した「コンプライアンス・マニュアル」や、携帯用「コンプライアンス・カード」を全従業員に配布しています。コンプライアンス・マニュアルには、汚職・賄賂の禁止、人権尊重と差別の禁止、情報の管理と保護、独占禁止法の遵守、インサイダー取引の禁止、地球環境の保全や労働関係法規の遵守、社内通報制度などの内容を掲載し、全従業員への周知徹底を促進しています。

また、グローバルにも対応した「グローバル・コンプライアンス・マニュアル」を作成し、海外のグループ従業員の誰もが理解できるよう、英語版だけでなく、中国語版・タイ語版・インドネシア語版・ドイツ語版・韓国語版などを作成し、現地語化を進めています。

従業員のコンプライアンス教育にも力を入れており、新入社員研修や階層別研修などにコンプライアンスに関する内容を盛り込んでいるほか、コンプライアンスに特化したe-ラーニングを毎年4回実施するなど、グループのすべての従業員がコンプライアンスの大切さについて学ぶ機会を継続的に提供しています。

効果的なコンプライアンス推進体制の構築

全社的にコンプライアンス活動を強化するため、社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会において、取締役会の承認を要する「コンプライアンスに関する基本方針等」の審議を行います。さらに、コンプライアンスに関する取り組みを全社横断的に統括するために、サステナビリティ委員会の下に法務部担当執行役員を委員長とする「コンプライアンス分科会」を設けて方針や実施策の立案を行うとともに、コーポレートおよび各カンパニーには「コンプライアンス推進部会」を置き、コンプライアンス推進実務責任者を任命して各施策の実施・展開を図っています。重要コンプライアンス問題が発生した際には「コンプライアンス審議会」を開催し、事後対応や再発防止策の検討などを行います。

コンプライアンス・推進体制(2020年度~)
  • ※2020年4月1日付で「CSR委員会」を「サステナビリティ委員会」に改称。
グローバル法務体制の強化

積水化学グループにおける法務機能の拡充および法務部門間の連携を推進するとともに、法務人材の育成・活用を通じて法務体制の強化に努めています。2017年度には、欧州ならびにタイの地域統括会社に法務を担う従業員が着任したほか、「コンプライアンス特別強化月間」の取り組みを2017年度より北米と中国でも実施し、2018年度以降は東南アジア・欧州エリアにも拡大して毎年実施するなど、グローバル規模で水平展開を図っています。

通報制度の整備

積水化学グループでは、2002年に社内通報制度「S・C・A・N(セキスイ・コンプライアンス・アシスト・ネットワーク)」を構築し、法務部担当執行役員の監督のもと、当社グループの全従業員と当社グループの取引先が利用できる仕組みを運用しています。「S・C・A・N」は、社外の法律事務所に直接通報することもできるほか、特定の行為がコンプライアンス違反であるか否かの助言などを受けられる相談窓口としての役割も担っています。

社内通報規則において従業員にコンプライアンス違反行為を知った際には報告通報することを求める一方、通報者の保護を規定し、窓口以外には通報者の情報を秘匿することや通報者への不利益扱いを禁止することを定めています。通報内容について、通報者側の主張だけでなく、被通報者側の主張もヒアリングし、必要に応じて、目撃者にもヒアリングをしたうえで事実認定を行っており、公平な立場に立って組織的課題の解決を行っています。

また、2015年度に社内通報制度を再整備し、積水化学グループ各社と継続的に業務上の取引をしている日本国内のお取引先の役員・従業員の方を対象とした相談・通報窓口も設置しています。

2019年度通報・相談件数
腐敗および贈収賄防止への取り組み

当社グループが署名・賛同している国連グローバル・コンパクトの精神に基づき、腐敗および贈収賄を未然に防止するための取り組みを推進しています。社内規則「贈収賄防止規則」をグループ全社で導入を進めるとともに、日本国内、米国および中国でビジネスを行う際に遵守すべき腐敗と贈収賄に関する事項をまとめた「贈収賄防止ガイドライン」を作成し、周知を図っています。

公務員等に対して接待・贈答を行う場合は、所定の事前申請書を管理者に提出し、承認を得る必要があるなど、リスクの高いケースを特定し、違反行為の未然防止を図っています。さらに外国の公務員等との取引に関連して、代理店・コンサルタント等を起用する場合には、代理店・コンサルタント等に対する報酬の支払いが贈賄に該当する恐れがないこと、および合理的な理由があるため贈賄と疑われないことを確認し、なおかつ所定の決裁手続きを経た場合に限り、これを行うことができると定めています。

また、腐敗や贈収賄リスクが特に高い営業部門と購買部門に対し、腐敗と汚職防止に特化した研修を実施するなど規則やガイドラインの習得と申請書などの活用を促しています。2019年度は、積水化学グループが毎年10月に実施している「コンプライアンス特別強化月間」に連動して、中国の各グループ会社に対して贈収賄防止研修を実施したほか、初めて海外に赴任する従業員を対象とした海外赴任前研修でも贈収賄防止について注意喚起を行いました。

2019年度における腐敗や贈収賄に関する重大な法令違反はゼロ件でした。

税務コンプライアンスの取り組み

積水化学グループは、租税回避を目的としたタックスヘイブンの利用は行わず、事業活動を行っている国や地域において適正な納税を行い、それらの国や地域の経済発展に貢献しています。移転価格リスクについて、当社グループ内の取引は各国・地域の法令およびOECD(経済協力開発機構)ガイドラインに基づく独立企業間価格に従って行っています。不安定な税務ポジションの解消のために、必要に応じてAPA(事前確認制度)を活用することとしています。

独禁法への対応

積水化学グループでは、2007年以降、独禁法遵守プログラムとして、事業者団体加入決裁制度、競合他社接触についての事前申請事後報告制度、価格改定委員会制度を運用しています。2019年度における独禁法に関する重大な法令違反はゼロ件でした。

(情報セキュリティ)

積水化学グループでは、全社でサイバーセキュリティ対策への取り組みを強化するため、理念としてグループ全社の情報セキュリティ方針を策定し、情報漏洩リスクや自然災害リスクなどへの対策を講じています。

理念

積水化学グループは、お客様の個人情報や取引先からお預かりした情報、当社グループが保有する企業秘密、およびそれらを管理するシステムなどの情報資産について、ますます重要な経営資源の一つ、競争力の源泉であると認識しています。

それら情報資産を脅かすサイバー攻撃への備えを経営の重要な責務ととらえ、基本方針に定める情報セキュリティ対策に継続的に取り組み、安定した経営基盤の確保に努めます。

情報管理体制

社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を頂点とし、サイバーセキュリティにおける方針決定機関として、サイバーセキュリティ分科会を設置しています。本分科会はCISO(最高情報セキュリティ責任者)が委員長を務め、全社のサイバーセキュリティ対策や重大なセキュリティインシデントについて協議、方針決定します。分科会での決定に基づいた施策推進のため、サイバーセキュリティ推進部会も設置し、実働部隊として下部組織にCSIRT(サイバーセキュリティ対応体制)を設置しています。

各現場事業所には1名以上の情報システム管理者を配置し、グループを包括する情報管理体制を構築しています。組織変更や情報システム管理者に異動があった場合でも、名簿管理システムによって、各事業所の情報システム管理者の有無を常に把握しています。

  • ※CSIRT(シーサート)は「Computer Security Incident Response Team」の略。企業などの組織内でコンピュータセキュリティインシデントに関する報告の受け取り・調査・対応活動などを担う専門チームの総称。
積水化学グループのサイバーセキュリティ体制
  • ※2020年4月1日付で「CSR委員会」を「サステナビリティ委員会」に改称。
情報漏洩リスクへの対策

個人情報を含むお客様の情報および機密を含む社内情報の安全を確保するため、システムと人的対策の両面から万全の対策を講じています。外部からの脅威に対しては、SOCが中心となり、新たに感染が報告されたウイルスや標的型メールなどの新しい脅威を常に把握して、積水化学CSIRTにおいて適切な対策を迅速に実施しています。また、e-ラーニングによる従業員の教育や監査を行うことで未然防止を図っています。

CSIRTの運営として、定期的にサイバーセキュリティ推進部会を開催して、リスク対策の評価を行うとともに、情報セキュリティに関する活動報告を毎会実施しています。

  • ※SOC(ソック)は「Security Operation Center」の略。情報システムへの脅威の監視や分析のための専門組織。いち早く脅威を検知し、CSIRT の対応・復旧活動を支援する役割を担う。
自然災害リスクへの対策

大地震などで基幹システムがダメージを負った場合でも業務が継続できるよう、契約しているデータセンターに耐震・免震などの災害対策が施されていることを確認しています。さらに、データセンターを複数ヶ所に分散設置することで、万が一特定のデータセンターが使用不能になっても業務が滞ることがない体制を構築しています。また、重要業務システムの完全二重化により、業務の完全復旧までのリードタイム短縮を図っています。

個人情報の保護

お客様の個人情報について「個人情報保護方針」を策定して当社のWebサイト上で公表しています。この方針に基づいて個人情報に関する法令や規範を遵守するとともに、自主的なルール・体制を構築して適切な保護に努めています。

また、個人情報を扱う「WEBサーバの構築と管理に関するガイドライン」を設け、各社・各部所にて管理されているサーバの保護にも努めています。

リスクマネジメント

積水化学グループでは、リスクを未然に防ぐ「リスク管理」と、重大なリスクが発現した時に対処する「危機管理」を一元化させたリスクマネジメント体制の構築を進めてきました。この一元化により、組織の状況に応じて、常に変化するリスクや危機に適応できる体制を構築しています。

マネジメント体制

積水化学グループのリスクマネジメント体制は、2020年4月以降、これまでの人事部主管から、ESG経営推進部担当役員を最高責任者とし、ESG経営推進部リスクマネジメントグループが実務を所管することに変更しました。2015年4月に改正した「内部統制システムの基本方針」に基づいて定められた「積水化学グループ リスク管理要領」を当社およびグループ会社の取締役、執行役員と従業員に周知徹底するとともに、リスク情報を一元的、網羅的に収集・評価して重要リスクを特定し、リスクの発生防止に努めており、重大なリスクが発生した場合には「積水化学グループ危機管理要領」に基づいて緊急対策本部を設置し、迅速・適切に対処する体制を構築しています。

また、万一の事態に備えて社員一人ひとりが参照すべきこれらの行動規範については、イントラネットなどを通じてすべてのグループ社員に共有されています。

2020年度からスタートした中期経営計画では、これまでの組織別リスク管理活動と全社リスク管理活動を融合したERM推進を展開していきます。従来からの組織別活動は、国内組織に加え、主に海外グループ会社(M&A、新事業含む)で展開を加速し、グループの隅々にまで浸透させていきます。そのうえで全社リスク管理として各事業領域別および地域別のリスクアセスメントを新たに実施し、全社重大リスクの特定・評価を踏まえた実行計画への落とし込み・全社目標値設計と進捗管理を行っていきます。

  • ※ERM:「Enterprise Risk Management」の略称。全社的・統合型のリスク管理やリスクマネジメント活動に関する全社的な仕組み・プロセスを指す。

PDCAサイクルによるリスク感性の向上

複雑性が増している企業活動の中で、将来発現し得るリスクを正確に把握することは非常に困難です。積水化学グループでは、このようなリスクを扱うためには従業員の「リスク感性の向上」が不可欠と考え、リスク管理の国際標準規格であるISO31000に沿ったPDCAサイクルを回し続けています。

本活動は、2011年度にカンパニーの下にある事業部を中心に27組織でスタートしました。年々活動組織数を増やし、その数は2019年度に国内外の関係会社も含めて175組織、連結売上構成比は約93%となっています。また組織間の連携や専門部署との連動により、この活動の有効性の向上を図っています。

  • ※大規模M&Aによる一時的な低下。

リスクの特定・評価

組織別リスク管理・全社リスク管理ともに、グループ全体で備えるべきリスクを明確にするため、大分類として経営環境・戦略・業務リスクに大別し、さらにそれを細分化することで、網羅的にリスクを特定しています。特定されたリスクを組織別リスク管理・全社リスク管理各々のリスク基準に基づき、結果と起こりやすさのリスクマトリクスで定量的にリスクレベルの評価を行っています。

積水化学グループの主なリスク
1. 経営環境リスク
  • 主要市場の動向
  • 為替・金利・保有資産価格の変動
  • 原材料の市況変動および調達
  • 自然災害
  • 気候変動・環境問題(資源枯渇/水/海洋プラスチック)
  • 政治・社会(政変/テロ/感染症)
2. 戦略リスク
  • M&A・新規事業・R&D
3. 業務リスク
  • 情報管理(情報漏洩/技術情報の流出)
  • 品質(製造物責任/重要品質問題)
  • 安全(火災爆発/重大労災事故/有害物質漏洩)
  • 法令・コンプライアンス・人権(不正犯罪行為/独禁法違反・不正取引/情報改ざん/贈収賄/ハラスメント/環境規制など)
  • 知的財産(知財紛争)

危機管理体制の強化

積水化学グループは、東日本大震災の経験を踏まえ2011年度に危機管理体制を全面的に見直し、以後、その体制をブラッシュアップしてきました。具体的には、緊急対策本部手順書に基づく訓練(年2回以上)、緊急事態初動手順書による毎年の教育(全従業員)、防災チェックリストによる全事業所での防災体制の整備(国内約800ヶ所)などを実施してきました。内閣府の「自己評価項目表」を参考にした防災体制充足率は、2012年1月時点で全事業所平均が41%でしたが、その後、具体的な対策を整えた結果、2015年度以降は90%以上を維持管理できるレベルになりました。

また緊急事態発生に備え、「危機管理要領」「緊急対策本部手順書」に緊急時の全社の対応手順を定め、運用しています。派遣社員などを含む全従業員に対して、常に携帯する「緊急事態初動手順書」を配布し教育することで、緊急時に個々人が適切な初動ができるようにしています。2019年度は、緊急事態でも従業員の安否が迅速に確認できるように、安否確認システムをグループ全従業員に実装しました。

BCP(事業継続計画)

BCPは事業戦略そのものです。従って、カンパニー制を採用し事業内容が多岐にわたる積水化学グループは、事業責任者(事業部長、事業会社長等)それぞれが事業の内容に応じてBCPの必要性を個別に判断することを基本姿勢としています。そのため、グループとしての「BCP(BCM)策定のガイドライン」を定め、策定にあたってのチェックリストを作成するなどのサポート体制を構築しています。各事業責任者に対しては、このガイドラインや事業継続マネジメント(BCM)の構築方法を規格化したISO22301に準拠したBCPの策定とBCMの構築を推奨しています。

海外危機管理体制

積水化学グループでは、社規「海外安全管理規則」に基づいて、世界を6つの地域に分け、海外危機管理事務局が中心となって危機管理情報の共有やタイムリーな注意喚起、渡航規制の指示など緊急時対応を実施するなど、出張者、駐在員、現地従業員をサポートしています。

年々拠点が増え、海外事業の重要性が増している状況で、主要4地域に海外統括会社を置き、その責任者を地域長に任命し、海外危機においてはコーポレート経営戦略部海外統括グループおよび海外危機管理事務局(ESG経営推進部リスクマネジメントグループ)が連携し、危機事象に対する対応を主導しています。

また、暴動・テロ、感染症などの海外特有のリスクに対しては、セキュリティアシスタンスや医療アシスタンス等危機管理会社との契約締結による支援体制を用意しています。

リスク管理活動の有効性向上

リスク管理活動の実施状況をデータベース化した「デジタルダッシュボード」の導入により、各組織へのフィードバックの準備が半減したことで大幅に効率化することができました。また、各組織においては検索機能を使い、管理策の水平展開やリスクの特定が容易になりました。さらに2019年度においては、各種監査との連動を目的とした機能を追加し、もれなくリスクを洗い出せるようになりました。

e-ラーニングの充実

イントラネットを活用した海外出張者向けe-ラーニングのコンテンツの充実を図りました。国や地域ごとの事情や慣習などを取り入れたテスト形式のコンテンツを作成。解答には詳しい解説を付けるなど、海外出張者に対して現地における行動の教育と安全意識の向上を図っています。2019年度は、出張が多い地域向けに応用編も展開し、より詳しい内容を学習する機会を提供しました。

新型コロナウイルス感染症拡大防止に関する当社の対応

新型コロナウイルス感染症拡大が懸念されるようになった2020年1月以降、従業員の健康管理と企業として社会的要請に応えるため、感染防止に向けたさまざまな施策を実施しました。具体的には以下の対応を実施しています。(2020年3月末現在)

  1. 1) 個人で行う予防対策と情報の発信
  2. 2) 当社主催行事・イベントの自粛
  3. 3) 出退勤時間の変更
  4. 4) Web会議・在宅勤務の推奨
  5. 5) 感染地域への渡航禁止

さらに中国および国内の関係会社への支援として、マスク・消毒薬の配送を実施しました。緊急事態宣言の発令や、グループ内での感染者が確認された場合は、従業員の安全を最優先に、全社緊急対策本部の設置を含め、さらなる対応を強化していきます。

人権尊重

積水化学グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべてのひとびとの人権を擁護することを責務として認識しています。また昨今、国内外で人権に関する法制化・ルール化が進み、人権課題に対する社会からの注目度が高まっている中、持続可能な経営基盤を強化するためには、グループ従業員に限らず、ビジネスパートナーを含む多方面のステークホルダーの人権尊重に取り組むことが必要であると考えています。

積水化学グループ「人権方針」

当社グループは、2019年5月に人権リスクアセスメントの実施および取締役会における承認を経て人権方針を策定しました。従来の「積水化学グループ人材・人権方針」が主にグループ従業員を対象にしていたものであったことに対し、この人権方針は国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、グループ外のバリューチェーンを含む広範な領域にわたる人権の尊重を謳っていることが特徴です。

積水化学グループ「人権方針」

英国現代奴隷法への対応

これまで英国のグループ会社にて英国現代奴隷法に関する声明を出していましたが、グループ全体で人権課題へ取り組むことの必要性を踏まえて、2019年9月に「積水化学グループ 英国現代奴隷法に関する声明」を策定しました。この声明は、英国で施行された2015年英国現代奴隷法第54条第1項に基づき、当社グループおよびそのサプライチェーンにおいて奴隷労働その他の隷属状態のもとでの労働ならびに人身取引が発生しないことを確保するために実施している取り組みを開示するものです。

今後は、英国以外の国・地域の人権に関する法規制についても、当社グループが適用対象となるものに関しては、適宜対応を行っていきます。

人権デューデリジェンスの仕組み構築に向けた取り組みの開始

2018年11月より、人権デューデリジェンスの仕組み構築に向けた取り組みを開始しました。第1ステップとして、専門機関を通じて実施した主要事業におけるリスクアセスメントの結果に基づいて、社内ヒアリングを実施し、グループ内の潜在的人権リスクの特定を行いました。今後は、国内外の生産事業所にて、従業員の労働環境を確認するための現地インタビューを実施し、特定した潜在的人権リスクの実際の影響度を確認することを予定しています。

  • ※人権デューデリジェンス:自社の事業活動において、人権に負の影響を与える可能性(人権リスク)がないかを分析・評価して特定し、もし可能性があれば、その影響を防止または軽減するための仕組みをつくり、対処する継続的なプロセス。

グループ内の人権リスクの特定

2018年11月に外部機関に依頼して実施した主要事業における人権リスクアセスメントでは、10の人権課題について「住宅」「自動車部品」「産業別機械および製品」「製薬」という4つの産業ごとの人権リスクスコアを算出しました。さらにグループ会社が所在する国ごとのリスクを加味した結果、積水化学グループの事業活動では主に海外(中国・インド・タイ・ブラジル)において労働安全衛生等の人権リスクが高いことが潜在的に確認されました。

主要事業における10の人権課題

(1)児童労働(2)適正賃金(3)適正な労働時間(4)職場における差別(5)現代奴隷(6)結社の自由と団体交渉権(7)先住民族の権利(8)土地、財産および住宅に関する権利(9)労働安全衛生(10)プライバシーの権利

2019年2月からは、第三者による社内関係者へのヒアリングを実施し、人権リスクアセスメントを通じて潜在的リスクが高いと提起された国および人権課題についてのヒアリングを、タイ・中国・インドのグループ会社駐在経験者および社内関連部署に対して行い、アセスメント結果と実際の当社事業との間にギャップが生じていないかどうかを確認しました。ヒアリングの結果、

  • 海外生産会社における安全への意識が高く、安全活動が定着している
  • ヒアリング対象のグループ会社においては移住労働者の使用、外国人、女性への差別はみられない

など、ポジティブな状況が確認できた一方、

  • サプライチェーン対応として、コーポレート主導のCSR調達アンケートの実施がみられるものの、現場レベルでの人権の観点からのサプライヤーチェックは行われていない
  • 海外生産会社の中には派遣労働者(期間工)を多数使用する工場がある

など、さらなる現場状況の確認が必要とされる事案も浮かび上がりました。

これを受けて、2020年度は、従業員の生の声を聞き、人権に関する負の影響の有無確認と、影響の深刻さを把握することを目的に、国内外の生産事業所にてインタビューを行うことを予定しています。またその後は、インタビュー結果により明らかになった課題の対処や追跡評価などを行い、人権デューデリジェンスの仕組みを構築していきます。

  • ※英国現代奴隷法 2015で定められた現代における奴隷の定義。主に(1)奴隷・隷属・強制労働(2)人身取引(3)搾取(性的搾取、臓器提供の強制等)を指す。

人権に配慮した事業活動

積水化学グループは、すべてのステークホルダーに対する責任を果たすため、お取引先とともに、人権に配慮した事業活動を行います。全グループ従業員に対して「コンプライアンス・マニュアル」を提供し、人権尊重と差別の禁止、ハラスメントの防止、個人情報の保護などを厳格に求めており、ハラスメントの防止については、研修やe-ラーニングを併せて実施し、従業員の理解促進に努めています。

ハラスメントの防止

当社グループは、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントなど各種ハラスメント行為を未然に防ぐため、新入社員研修や新任基幹職研修などの階層別研修において、ハラスメント防止に関する内容を継続的に取り上げており、それぞれの職階や立場に応じて、ハラスメント防止のための知識を提供しています。また、分野別研修においても定期的にハラスメント研修を実施しています。

サプライチェーン全体で人権問題に配慮

当社グループの調達方針に基づき、2007年より、お取引先の人権配慮、環境保全や社会的責任に関する取り組み状況をアンケート調査で確認しています。2015年度からは、海外のグループ会社のお取引先についても調査を着手しました。調達基準に満たないお取引先に対しては、改善の申し入れを行うとともに、その実施をお取引先と協働で進めています。特に海外のお取引先には、現地統括会社を通じて改善を働きかける仕組みの構築を進めています。

また、コンゴ民主共和国および周辺諸国で人権侵害や環境破壊などに関わる武装勢力の資金源となっている紛争鉱物問題に関しては、2017年4月より運用を開始した「紛争鉱物調査ガイドライン」に則って、サプライチェーン全体にわたって紛争鉱物使用の調査を実施しています。

2019年度はEU地域のグループ会社の主要なお取引先に対してCSR調達アンケートにより取り組み状況を把握し、その結果、主要なお取引先では、児童労働や強制労働をはじめとした人権を侵害する行為などは発生していないことを確認しています。また紛争鉱物については、環境・ライフラインカンパニー、高機能プラスチックスカンパニーおよびそのグループ会社において、619件の紛争鉱物調査を実施し、精錬所不明および紛争鉱物に該当する事案は見当たりませんでした。

サプライチェーン全体での人権問題への配慮は、現状、直接のお取引先に対してのみ確認していますが、2次、3次以降のサプライヤーを含むサプライチェーン全体にご理解いただけるような仕組みを社外有識者の意見を聞きながら構築していきます。また、さらに人権デューデリジェンスの質を向上するために、認定されたサプライチェーン関連のイニシアチブへの署名、参加を検討していきます。