ククミシンを大量につくるメロン
およそ30年前に発見されたククミシンは、メロンの学名「ククミス メロ」にちなんで名付けられた。ククミシンは、タンパク質分解酵素であり、なぜメロンに大量に存在するか定かではないが、害虫や病原菌の攻撃から植物を守る防御機構ではないかという説もある。 |
|
糖尿病治療薬のインスリン、ウイルスの増殖を抑えるインターフェロン、成長ホルモン、リウマチやガンなどに対する免疫を高めるモノクローナル抗体、エリス
ロポエチンなどの造血剤、降圧性ペプチドや鎮痛性ペプチド…。さまざまなタンパク質由来の医薬品は、その多くが、目的とするタンパク質の遺伝子を大腸菌に
組み込む、バイオテクノロジーによってつくられています。
最近では、桑の葉を食べてシルクというタンパク質の糸を出すカイコに、動物のインターフェロンを生産させる“昆虫工場”なるものも登場しました。タンパク
質生産機能を有するバキュロウイルスに目的とするタンパク質の遺伝子を挿入し、そのウイルスをカイコの体内で育て、生産されたタンパク質を回収するので
す。そしていま、植物をタンパク質の製造工場にしようという研究も始まっています。
メロンに大量に存在する物質に、ククミシンというタンパク質があります。長年の研究により、ククミシンの構造が明らかにされ、葉や茎、花、根などには存在
せず、果実のみに特異的に発現すること、果汁に分泌して蓄積されることなどがわかってきました。さらに、ククミシン遺伝子の発現を促すプロモーター領域の
1000を超える塩基の内、わずか20個の塩基からなる短い配列が、果実でタンパク質となる運命を左右していることも明らかにされたのです。この発見は、
基本の20塩基配列の後にどんな種類の遺伝子をつないでも、果実内でそのタンパク質ができることを意味します。
すでに、ミニトマトを使い、GUS(β-グルクロニダーゼ)というレポーター遺伝子を果実に発現させる実験に成功。ヒトインターフェロンをつくる実験も始
まろうとしています。果実の成長には時間がかかりますが、体積が大きい分大量生産が期待でき、果汁に分泌したタンパク質は抽出や精製が容易というメリット
もあります。研究はまだ始まったばかりですが、薬や酵素生産だけでなく、食べるフルーツワクチンの実現へと夢は膨らみます。生物のメカニズムを生産のプロ
セスに生かす時代は、確実に近づいているといえるでしょう。 |