
トピックス:ハイチ大地震・被災地への支援
ハイチ大地震に対して、NGO「JEN」の寄付の仕組みを活用し、今回初の試みとして、積水化学グループ従業員によるクレジットカード寄付とマッチングギフトを実施しました。
これは、「従業員は現地での支援活動はできないが、寄付などの間接的な支援であれば、正規・非正規を問わず誰でもできる」「会社は新たなシステムの構築を伴わずに支援の仕組みを作ることができる」「NGOは現地での活動のための支援を望んでいる」という三者のニーズを実現した新しい取り組みだと言えます。
今回の寄付およびその使われ方などについてJENとの座談会を行いました。
- ※ハイチ大地震:2010年1月12日(現地時間)に起こったマグニチュード7.0と推定される大地震
- ※マッチングギフト:従業員の寄付の同額以上を会社としても上乗せして寄付をする仕組み
- ※NGO:非政府組織
- ※JEN:自然災害や紛争後の地域で、緊急支援から現地の人たちが元の暮らしを取り戻すまでの自立支援を行うNGO
- 木山 啓子さん

- 特定非営利活動法人 JEN
理事・事務局長
- シリル・カッパイさん

- 特定非営利活動法人 JEN
海外事業部長
“積水化学グループ従業員311人の協力で111万7千円の寄付が集まりました”

- 積水化学(以下積水):
- 以前より、大災害に際して「何かしたいが具体的にどう動けばいいかわからない」という声が積水化学グループの従業員から寄せられていました。初の試みでしたが、JENの仕組みを使うことで従業員の声に応えられるではないかとのことから実施し、多くの寄付が集まりました。
- JEN事務局長木山さん(以下木山):
- 今回の寄付に対して、大変感謝すると同時に、地震発生から寄付までの会社の対応の早さに驚き、とても感動しました。初の試みということで、社内での決裁も簡単ではなかったと思います。
- 積水:
- 今回成功したのは、クレジットカード決済ができたからだと思います。積水化学グループは全国各地に事業所があり寄付金の集約も困難でした。また、正規・非正規にかかわらず積水化学グループで働くすべての人を対象にする仕組みはこれまでなかったのですが、そのために会社が寄付のシステムを構築するというのも現実的ではありませんでした。この方法は、事業所の場所や時間にかかわらず、誰でも簡単に寄付ができます。活動資金を必要とするJENの仕組みとうまく連携することで三者のニーズを実現でき、win-win-winの関係になったと思います。
- 木山:
- お金がありがたいのはもちろんですが、こんなに多くの人に支えられているということに、私たちは強く勇気づけられました。そしてその私たちが現地で活動することで、今度は現地の被災者のみなさんを勇気づけることができる─そのように連鎖して、みなさんの温かい気持ちを現地に届けられるという喜びを体験しました。
- 積水:
- こだわったのは、積水化学グループで働くすべての人が参加できる仕組みにするということでした。全国各地の営業所や展示場、また海外に駐在する人からも、呼びかけた直後から毎日絶え間なく寄付が寄せられました。寄付はどのように使われているのか、非常に関心のあるところです。
- 木山:
- 地震発生二日後に出動を決定しました。ハイチはフランス語圏でもあり、フランス語が話せ、かつ災害支援のエキスパートであるシリルと他2人を派遣しました。支援は、ハイチの首都から約50km西にあるグランゴアーブという地区の3つの村で行いました。いただいた寄付は、支援物資140世帯分と、それを首都から輸送する経費に相当します。支援物資は一世帯あたりトタン板10枚と工具一式です。
- 積水:
- 支援する地域や寄付の使い方をどのようにして決めるかも詳しく知りたいことです。
- 木山:
- 被災したあと報道がある場所には支援が多く集まります。しかし私たちは、おそらく、ひどく被災をしながら支援が不足しているところがあるに違いないと調べたところ、グランゴアーブがまさに孤立状態であることから支援を決定しました。
- シリル:
- 現地を調査すると、そこでは強い日差しを遮る屋根が必要ということがわかりました。しかし、屋根を作っても、下が瓦礫では危険です。また、人々は野外で寝起きしており、4月からの雨期に備え、風雨を防ぐための住居が早急に必要でした。そこで、瓦礫を撤去して屋根を置けるような場所を作れるように、瓦礫撤去道具とトタン板をセットにして配ることに決めました。
- 木山:
- 物の必要性も大切ですが、同時に忘れてはいけないのが、費用対効果です。すべての希望に応えることはできませんので、本当に必要とされ、今後も有効に活用してもらえるものが何かを見つけ出すことが重要なのです。
- シリル:
- たとえば、テントを望む声は多く聞かれたのですが、家族用のテントというのはとても高価です。また、6月頃のハリケーンではすぐに飛ばされてしまいます。釘の打ち方などの工夫で、多少はハリケーンに耐えることが可能なため、トタンの方が適切であると判断しました。心配された暴動についても、どういった支援をするかということを事前に現地の人々に伝え、地元のリーダーたちと一緒に話し合うことで、万事スムーズに進められました。
“支援物資は現地調達が原則、寄付は人件費などの間接費に使うことも”

- 積水:
- 支援物資はどのようにして調達するのですか。
- シリル:
- JENでは、配布する物資は、現地調達が原則です。現地のマーケットを刺激できますし、お金を使ったぶんその国が潤うからです。今回も、ポルトープランスで調達するという方法を選びました。
- 積水:
- 必要とされる支援や活動を行うには、物資の支援だけではなく、災害支援の内容をよくご存じの優秀なスタッフが必要だと思います。寄付は活動費用としても使われるのでしょうか。
- 木山:
- 被災地での調査や情報収集というのは経験と技術が必要で、さらの言語の条件もあります。私たちが大切にしているのは、自立を支えることです。たとえば物資の配布でも、ただ配るだけでは、かえって依存を高めてしまう場合があります。自立をサポートできるような配布の仕方を工夫する必要があり、それを実行できるスタッフを送ることがとても重要です。頂いた寄付を最大限に活かすために、直接費でない部分も重要だということもご理解いただきたいと思います。その基準は8:2としています。8割を物資などの直接費とし、2割は間接費・管理費に使わせていただくということです。もちろん、その2割についても極力減らすという方針です。
“寄付を通じて物資の支援だけでなく、心も届いています”

- 積水:
- 私たちは「何かしたい」という想いから、寄付という形でお金を託します。それが物資に変わるということしか思っていなかったのですが、それだけではなくて、私たちの心も、シリルさんや、被災して苦しいけれども頑張ろうとしている現地の方々にも伝わっていると受け止めていいのですね。
- シリル:
- もちろんです。今回、積水化学グループの多くの方々にご協力をいただきました。寄付をいただくというのは、心をいただくということです。それによって、私のなかの小さなモーターみたいなものが回り出すのです。一人ではない、自分たちだけでこの支援活動をやっているのではないと感じられることが、私のなかで大きな支えになっています。
“心に留めてほしいのは「忘れないこと」「続けること」「伝えること」”

- 積水:
- NGOとして、災害支援活動のなかで苦労されていること、あるいは課題は何でしょうか。
- 木山:
- いかに忘れられないようにして、支援を継続するかということです。災害があったときは支援も一気に集まりますが、おそらく徐々に注目が薄れていくでしょう。しかし、復興には長い時間がかかり、その間の支援が必要になります。元々貧しい国での災害では、現状復帰することは道半ばであり、自立し、自分たちの力で国を再建するようになるまで支え続けることが到達点と考えています。息の長い、地道な支援の必要性はあまり理解されていないので、それをいかに伝えていくかが課題の一つだと思っています。「知る努力をすること」「すぐ行動すること」「忘れないこと」「続けること」「伝えること」。5つ全部重要ですが、とくに最後の3つは覚えていただきたいことです。
- 積水:
- 私たちも、災害が起こったときにはすぐに反応しますが、継続して支援することまではなかなか思い浮かびませんでした。この仕組みを活用して、今後はJENからも経過報告をいただくことで、もっと多くの従業員が参加してくれるよう働きかけていきたいと思います。
寄付にさいして寄せられた従業員の声
- 何かの方法で地震支援をしたいと思っていたので、良い機会をいただいてありがとうございました。
- 少しですが協力させていただきました。
- 義援金募集の呼びかけに、マッチングギフトという言葉すら知りませんでしたが、クレジットカード決済を済ませました。