魅力品質物語

快適エアリーへの道のり > 第5章 快適エアリー①温熱


前身のバリアフリーヒーティングの完成から、5年以上を経て爆発的なヒットとなったウォームファクトリー。快適エアリーの開発に携わった、商品企画部門の鈴木は言う。

「ウォームファクトリーは、冬は採用率がグンと上がりますが、夏は下がるんです。住宅はいつ建てても四季を通じて暮らすものなのに、契約時期で採用率が変わるというのはどうかと…。その視点から夏場に着目し、通年での快適性を目指しました」

さらに、「エネルギーについても、ヒーターを深夜の電気で熱くするので、割引制度などが使えて電気代は割安ですが、CO2の排出量をもっと減らせると思いました。環境リーディングカンパニーを謳うためには、まだまだ改善できると思いました」。

そして、もうひとつの重要なのは“制御性”だった。「蓄熱暖房機の特性ですが、ウォームファクトリーは前日の蓄熱量に左右されるので、今日は暖かいから、そんなに要らないと思っても室内は暖かくなるし、その反対もあります」。

制御性をさらに高めることができれば温度設定が自由になり、エネルギー消費は今よりも減り、当然、省エネ性も高まる。当時、エコポイント制度がスタートし、省エネは欠かせない条件にもなりつつあった。まず、一年を通してベネフィットを訴求できること、そして環境性、省エネ性、制御性、これらのレベルをより高く引き上げていくために、実に3年近くの年月を費やすことになる。

快適エアリーの開発は、鈴木と開発部門の朝桐のふたりが中心となった。ふたりの役割はそう明確に分かれていないが、開発で発想した原型を、具体的なスペックや仕様に落とし込んで、商品として実現させていく部分を鈴木が担当していた。

まず、床下に設置したヒーターに変わる新たな空調方式の検討がされた。朝桐が言うには「最初は、水の入ったタンクを置いて蓄熱・蓄冷する方法が本命だと思っていました。
何度も試しましたが、結露の心配もあり上手くいかなかった。2年近くいろんな試作をつくって、最後にエアコンに辿り着きました」。

エアコン方式であれば、「冷房・除湿」「制御性」「CO2削減」というこの3つのポイントを満たすことができた。しかし、ここでさらなる課題。この「床下にエアコン」というのは非常に斬新な発想で、当時はどのメーカーでも製造されていなかった。つまり既存の製品がないから、1からの開発が必要になるのだ。

朝桐は言う。「床下空調の考え方はあったけれど実現はされていなかったので、やってみたいと思っていました。さまざまな課題があることはわかっていましたが、頭の中に“こうすればできる”という具体的なイメージはありました」。
そこで、いくつかのメーカーに共同開発の声をかけたが、軒並み断られてしまった。その難しさを朝桐はこう説明する。

「やはり温度の制御が難しいんです。床上・床下・2階への経路を切り替え、温度を感知して自動的に吹き出すという点が難しいんです。空気を送り込むダクトをつなげるので、その抵抗も計算しないといけない。抵抗はどれくらいで、どれだけ吹き出し、熱量をどれだけ与えるか、細かな制御が必要になる。メーカーさんとしては、やれば可能かもしれないが1社のためだけに、それだけの時間と人と資金を投入するわけにもいかず引き受け難かったのかもしれません」

「もう諦めなければいけないかもしれない」。朝桐いわく“崖っぷち”の状況下で、前向きにぜひという感じで引き受けてくださったのが、長府製作所の高倉氏だった。とはいえ、この共同開発は簡単ではなかった。何度も試作を繰り返し、ようやく実装にこぎつける。

床下に設置されたエアコンの風は、壁側の床に配置したガラリから吹き出すしくみ。鈴木はこう語る。「“床から吹き出す”エアコンというのは今までに例がなかったので、大変苦労しました。床下スペースにぴたりと収まるダクトの形状や、グリルの位置や設置方法など試行錯誤の連続でした。また床のガラリは足が触れる可能性があるので、低温やけどの可能性も排除しないといけない。低温やけどは何℃で起こるのか調べたり温度制御のスペックを決めたり、下関の長府製作所さんへ何度も足を運びましたね」

やるべきことは山ほどあった。今まで壁から吹き出していたものが床から吹き出す場合の温熱効果は? カーテンの揺れを抑えるには? ガラリの下へモノを落としたらどうなる?家具の配置は?
など、想定以上のこともすべて、事前に解決しておかなければならないのだ。

もちろん開発コストの制約もある。量産品として“適正な価格”で“最良の設備”として世に送り出すために、どうつくりこんでいくか、鈴木はそれらの課題を丁寧にひとつずつ解決していった。

住宅カンパニー 商品企画部門 鈴木
住宅カンパニー 商品企画部門 鈴木
株式会社 長府製作所 高倉氏
株式会社 長府製作所 高倉氏

冷風があたるというよりふわっと落ちてくる快感

2009年5月。つくばの試作棟で、いよいよ快適エアリーが稼働する。快適エアリーの冷房を初めて体感したときのことを、長府製作所の高倉氏は「すごく印象的だった」と言う。

「床から冷風が出るというのは初めての体験で、その時の感覚は今でもはっきり覚えています。一般的なエアコンの風はスピードがあるので、上から吹き付けるというか、冷風がぶつかってくる感じ。私自身、個人的にはそういうエアコンの風が好きではないんです。でも、快適エアリーの場合は、いったん上にあがった冷風がフワッと降り注ぐ感じ。スピードがないので冷風がしつこくなく柔らかいんです。

冷え性の方や冷房の苦手な女性などに喜ばれるのではないかと思いました。冷房は、上から下へ落とすものという固定観念がありましたが、それがひっくり返った。まさに新し い冷房。これはいいと感じましたね」

下から吹き出すというと足元が冷えるのではと気になるが、快適エアリーは換気の風に乗せて、室内全体へ空気が行き渡るように計算されている。それに、常に床のガラリから空気が舞い上がるので、足元に冷気が滞留せず床が冷えることはない。

この換気のしくみを担当したのは、開発部門の平野。「これは、他社にはできない」と平野は断言する。理由は、ハイムの構造があってこその仕組みだから。「快適エアリーの場合、1階には床下を、2階へはダクトを経由して換気を行います。だから床下の気密性が高くないと空気が漏れてしまって管理ができないんです」

実は、この平野の説明の中に、もうひとつ独自の技術が隠されている。コストと機器数の削減のために開発された「1階ダクトレス換気」だ。快適エアリーは、空気の循環するループの中に“ダクト”を経由する部分と、床下という“空間”を経由する部分が混在しているのだが、それは他には例がない。

平野曰く、「換気の経路が混在すると風量のバランス調節が、非常に難しい。それに床下を経由して換気するという発想自体もそもそもないし、一方が床下噴出(ダクトレス換気)で、もう一方がダクト経由と2つに分けて構築するという理論が換気の世界にはない。だから工業化の型式認定を取得するまでは大変でした。最初は門前払いで、“なに机上の空論を言っているんだ”という雰囲気でしたね」

物理的にも理論的にも確立されていない換気システムを実現するため、平野の奔走の日々が始まる。「現象は再現できるのですが論文にもまったく出てこないし、理論構築が難しいんですね。私にそこまでの知見がなかったので、建築研究所の著名な先生や、ベターリビングの有識者の方に、実験をしては意見やダメだしを頂くということを何度も繰り返しながら理論構築をしました。大変でしたが、有識者の方の意見を聞くと、世界が一気に広がったのは確かです」

こうして、いくつもの難関を乗り越え、“床下エアコン”“ダクトレス換気”など、既存の換気システムにない独自のシステムをつくり上げることができた。

住宅カンパニー 開発部門 平野
住宅カンパニー 開発部門 平野
1階ダクトレス換気の給気のしくみ 密閉性の高い床下空間そのものを給気経路とすれば給気用のダクトをなくせる ダクトをつながなくても基礎空間自体が各部屋への新鮮空気の分配室となる
ダクト式換気の給気のしくみ

温度差なし+子育て=かげやまモデル

“かげやまモデル”をご存じだろうか?
“かげやま”とは、京都の立命館大学教授、立命館小学校の副校長を兼任する著名な教育者、隂山英男氏のこと。文部科学省や内閣官房の委員も務める教育の第一人者である。

子どもは家で学ぶ、家は子どもの成長に大きな影響力があると考えていた隂山氏と、コラボレーションした住宅が「子どもが賢く育つ家づくり」というネーミングでスタートした“かげやまモデル”である。

団塊ジュニアネクスト世代をターゲットに、「早寝早起き朝ごはん」を推奨する隂山氏の考えをもとに、子育てを訴求した工夫が随所に散りばめられている。
たとえば、どこでも学習できる場所づくりや、生活習慣を支える仕掛け、そして家族コミュニケーションをより活性化させるための演出である。

快適エアリーは、家中の温度差が少なく快適なので、2階のオープンな空間にスタディコーナーをつくることができるし、どこで本を開いても寒くないので家中に本棚を置ける。母親にとっては、朝ごはんの支度をする際に早朝のキッチンが暖かいのはうれしいことだし、共働きの親にとっては、夏、子どもが学校から帰ってきて、家が暑すぎないことは安心だろう。夏も冬も、いつも同じように快適な室内環境を保つことができる快適エアリーは、隂山氏の考える「子どもが賢く育つ家づくり」とうまく合ったのだ。

この快適エアリー+かげやまモデルという商品は、2009年の発売以降、着々と販売棟数を伸ばしている。2012年に行った「かげやまモデル入居者アンケート調査」では、1年以上のご入居者の98%が「満足」、そして小学校低学年の子どもの学力向上を65%が実感しているという回答が出た。さらに、母親の93%が「料理・家事・育児が楽しくなった」、父親も92%が「以前よりリラックスできるようになった」と答えている。単純に快適性が増しただけでなく、快適エアリーは一歩進んだ暮らし方まで提案できるようになった。

冬の暖かさから始まり、夏も冬も一年を通した心地よさの訴求へと、セキスイハイムの目指す住まいは進化を遂げた。そして、目には見えない快適さを求めて、快適エアリーの開発メンバーは空気の質そのものの追求という、さらに新しいステップへと歩みを進めていた。

かげやまモデル
3つのコンセプト どこでも学習できる場所づくり 生活習慣を支えるしかけ 家族コミュニケーションの演出
パンフレット
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