フッ素樹脂に接着できる両面テープ

5G社会や高周波回路で必須なフッ素樹脂。でも、実はテープがくっつかない厄介もの?

フッ素樹脂とは、分子中にフッ素原子を含む高分子で耐熱性、耐薬品性、電気的特性、非粘着性、自己潤滑性に優れるという特性が有ります。そのユニークな性質から撥水コートやフライパンの焦げ付き防止コーティング、最近では5Gや将来の6Gといった高周波回路用の基板材料としても期待されています。しかしながら、フッ素樹脂は化学的には不活性であるため、他の物質との接合が極めて困難でした。

現在、この不活性で接着しづらいフッ素樹脂にはプライマーと呼ばれる接着コーティングを塗布するか、特殊なプラズマ処理などを施した後でないと、接着面が活性化しないため満足な接着力を発揮することができません。

また、これらの解決方法では特殊な塗布設備が必要でプロセスが煩雑になる、フッ素樹脂の性質が変化して元々の性質が損なわれる等の課題が生まれてしまっていました。

自然界の接着機構を模倣した特殊粘着剤で高い粘着力を発揮することに着目

積水化学はこれらの社会課題を解決すべく、「自然」が持つ機能を「ものづくり」に活用する、いわゆる、バイオミメティックスの思想を軸に、開発を行いました。

自然界において、ムール貝はその特殊な分泌物によってフッ素樹脂を含む幅広い素材に接着することが知られています。この自然界の接着機構をヒントに、積水化学工業が誇る粘接着材料技術を駆使して新しい粘着剤の研究を重ねました。

自然界の接着機構を模倣した特殊粘着剤
従来は不可能とされていたPTFE樹脂などのフッ素樹脂を強力に接合することを実現

本両面テープは、特殊な粘着剤を使用することで、フッ素樹脂へ良好に接着することができます。また、接合を良くする特殊処理の必要もなく、貼り合わせるだけで簡単に使用することが可能です。

フッ素樹脂だけでなく、金属やガラス、ポリプロピレンなどに対する粘着力も従来のテープに比べると高い性能を発揮し、難しいと言われていた数多くの素材を接合できる画期的なテープです。

一般的なテープと開発品の性能比較グラフ
救える社会課題は無限大

本技術により、フッ素樹脂をはじめとする他の物質との接合が困難な素材の用途が大きく拡がることが期待されます。

例えば、今後ますます増大する情報通信量を高速に処理するための高周波回路用の基板材料や、高機能化が進むスマートフォン内部での被覆部品やフィルターなどの接着をはじめ、フッ素樹脂を用いたパッキンなどが用いられている産業機器やメディカル用途など、様々な分野において抱える課題を解決することが出来る製品となります。

想定用途

通信インフラ
高周波回路用の基板材料など
スマートフォン
被覆部品、メンブレンフィルターなど
半導体
半導体製造装置の部品、薬液搬送用の配管など
産業機器
シール材、パッキン、摺動部品など