自然に学ぶ研究事例

第148回 グラフェンに学ぶ機能性炭素材料の開発
材料・デバイス開発
自然のメカニズム
化学修飾でナノグラフェンを  有機溶媒に溶かす
次世代材料として、世界中で脚光を浴びている グラフェン。有機化合物との複合化により、 新しいポリマーや発光材料、光電変換材料へと展開する、 グラフェンに学ぶ機能性炭素材料の開発とは?
白色発光するナノグラフェン
白色発光するナノグラフェン

周辺部分に反応活性な炭素—炭素3重結合を有する直径20nm程度のナノグラフェンを開発。種類の異なる有機置換基を導入して、有機溶媒に溶かして実験を行う中で、白色発光するナノグラフェンを得ることに成功した。背景は、ナノグラフェンシートの構造イメージ。

炭素原子1個分の厚みのシート状炭素であるグラフェンは、シリコンの100倍と言われる電気伝導性があり、柔軟でありながら鋼鉄の200倍も強靭な骨格を持っています。さらに、熱安定性や光学特性などが優れていることから、カーボンナノチューブやフラーレンを超える次世代の電子材料として、応用が期待されています。一般に、グラファイト(黒鉛)から1層ずつ剥離してつくられますが、材料開発においては、安定的にある程度多量でキレイなシートをつくる必要があります。

たとえば酸化分解法では、精製して表面の酸化を除去しなければなりません。従来の方法では、精製によって収量が大きく落ち込み、均質的な物を得ることも難しいという問題がありました。そこで、充填材の見直しなどの改良を加え、表面がほぼ酸化されていない20ナノメートル程度に大きさの揃ったナノグラフェンを大量に得ることに成功したのです。

また、グラフェンの化学処理は水中で行われていましたが、化学修飾を施すことで有機溶媒に溶ける親油性のナノグラフェンが開発されました。これによって、さまざまな有機化合物との複合化が可能になり、非常に珍しい白色発光するナノグラフェンの合成にも成功しています。現在、形状の異なる有機置換基を導入し、発光特性の調査を行い、白色発光の起源を探る研究が進められています。

具体的な応用展開は未定ですが、センサなどに利用できる発光材料や太陽光等の光エネルギーを電気エネルギーに替える光電変換材料などへ展開するために、今後は、自己組織化や超分子化学などにも着手する予定です。さまざまな化合物を合成し、それぞれの化合物を単離、構造決定を実現することで、従来にない新しい炭素機能性材料の開発を目指しているのです。

灰野岳晴 教授

広島大学大学院 理学研究科

人のやらないことをやるのが面白い
グラフェンの研究は世界中で行われていますが、私たちのように有機合成化学というスタンスで研究している人はあまりいないのではないでしょうか。私の専門は、分子をつくり、分子を集めて高機能化する超分子化学です。その材料としてグラフェンが利用できるのではないかと考えたのが、今の研究のキッカケになりました。 私の研究のモットーは、人がやらないところをやってみるということ。何も見つからないかもしれませんし、大きな発見につながるかも知れません。たとえばカレックスアレーンという化合物は、ベンゼン環が4枚、6枚、8枚というものが容易にできます。5枚と7枚がないんです。そこで5枚に挑戦してみました。こうしたシリーズがあると、どこかが必ず空いています。学問には連続性がなく、そこには必ず理由があります。それを知るために汗をかくことが、私は好きですね。

トピックス
黒鉛から炭層のグラフェンが初めて単離されたのは2004年、マンチェスター大学の2人の研究者によるものでした。その方法はというと、スコッチテープで黒鉛の薄片をはさみ、テープで引きはがすというものでした。後に2人の研究者はノーベル賞を受賞し、このエピソードは大変に有名になりました。しかし、1枚ずつはがしていたのでは工業利用にはとても無理です。そこで世界中で、グラフェンの製造方法がさまざまに研究されてきたのです。 近年でも新しい製造方法の開発は活発ですが、応用開発もさまざまに行われています。電子材料としての利用に限らず、酸化グラフェンを抗がん剤に使うという医療分野での研究もおこなわれているそうです。
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