「高剛性軽量樹脂シート」を開発しました

―グラフェンライクカーボンを用いた、金属よりも軽く剛性の高い新材料―
~鋼板の1/3の重量で同剛性を有し、かつ熱成形が容易で高意匠性~

 積水化学工業株式会社(社長:根岸修史、以下当社)高機能プラスチックスカンパニー(プレジデント:加藤敬太)では、グラフェンライクカーボンを配合した強化樹脂シートとポリオレフィンフォームからなる積層シート「高剛性軽量樹脂シート」を開発しました。
 金属では到達できない軽量性と高剛性の両立といった特長を活かし、今後は、住インフラ材や車輌・輸送などの分野において幅広い用途開拓を進めます。

 

1.開発の背景について

 当社は、グループビジョンにおいて「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓することを掲げ、高機能プラスチックスカンパニーでは、住インフラ材、車輌・輸送、エレクトロニクスおよびライフサイエンスといった戦略分野向けにさまざまなプラスチック製品を提供しています。
 その中でも環境貢献が期待される軽量新材料の開発に取り組んできました。


 

2.「高剛性軽量樹脂シート」の概要について

1.構造・機能

 開発品「高剛性軽量樹脂シート」は、下図に示したとおり、グラフェンライクカーボン*)を配合した強化樹脂シートを外層とし、ポリオレフィンフォームを中間層とする3層積層シートです。

 

*)グラフェンライクカーボン
グラフェンとは、学術的には、1原子の厚さのsp2結合炭素原子からなる単分子シートのことで、黒鉛の剥離によって、生成されます。当社では、グラフェンライクカーボン(グラフェンが複数枚積層されたナノレベルの凝集シート)をマトリクス樹脂に均一分散させることによって、高剛性で、耐衝撃性に優れたナノコンポジットを開発しました。

 

 

図:高剛性軽量樹脂シートの構成

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 写真:成形例

図:高剛性軽量樹脂シートの構成

 

写真:成形例

 

 このような積層構造を有するため、軽量性と高剛性が両立でき、下グラフに示したとおり、鋼板の1/3の重量で、同一の剛性を発現させることができます。

 

グラフ:同一の剛性を発現させるのに必要な重量

グラフ:同一の剛性を発現させるのに必要な重量

 

 また、「高剛性軽量樹脂シート」は熱可塑性樹脂を主成分としているため、炭素繊維強化樹脂やガラス繊維強化樹脂と異なり、通常のプラスチックスと同様に、プレス成形などの熱成形が容易で、意匠性にも優れます。


2.スペック例

 開発品の代表的なスペック例を下記の表に示しました。Type Aは剛性を重視、Type Bは軽量性を重視したグレードです。このように、用途に応じた幅広い品質設計が可能で、耐衝撃性も樹脂材料としては高い水準です。

 

 物性

単位

Type A(剛性重視グレード)

Type B(軽量性重視グレード)

 軽量性(目付)

g/m2

3500

2200

 剛性(弾性勾配)

N/cm/5cm

750

550

 シート厚み

mm

10以下

10以下

 

  

3.今後の展開について

 今後は、建築・土木資材などの住インフラ材や、船舶、航空機、鉄道などの車輌・輸送など、さまざまな分野における用途展開を目指し、幅広く事業パートナーを募って連携を進め、事業化に取り組みます。また、量産化技術開発を進めるとともに、2015年夏を目途に、「高剛性軽量樹脂シート」開発品のサンプル供給を計画しています。