積水化学工業株式会社(代表取締役社長 髙下 貞二、以下 積水化学)とミズノ株式会社(代表取締役社長
水野 明人、以下 ミズノ)は、スポーツ施設およびレクリエーション施設等の企画・設計・製品開発・施工・運営・維持管理分野において業務提携することで合意しました。
また、現在両社では陸上競技場トラック等スポーツサーフェイス(※)の表面温度を下げる新冷却システムの開発を共同で進めており、2015年度内の発売を目標に耐久性、工法の検証を進めています。
(※)スポーツサーフェイス:陸上競技場やサッカー場、テニスコート等のスポーツをする場所の表面材のこと
1.背景
近年、スポーツ施設は高齢化社会における予防医療、健康促進の場としての機能が注目されている他、都市機能の観点から防災・減災施設としても活用が進んでいます。
積水化学の環境・ライフラインカンパニーでは、水道・ガス・下水道等のインフラから建物内の給排水・空調等幅広い配管資材を持つ管路メーカーとして、近年ではストック市場(住宅・ビル設備・学校・工場等)の管路の改修事業にも注力しています。特に、地中熱・下水熱等未利用の自然エネルギーを活用したシステムや災害トイレシステム、地震・火災に強い配管材等、環境貢献や防災を目的とした商品・システムを積極的に開発し、販売しています。
一方、ミズノでは、運動機器・設備の販売や各種スポーツ施設の施工の他、スポーツの楽しさを伝え、向上心を育む場として、全国で722のスポーツ施設の運営に関わっています(2015年度)。総合スポーツメーカーならではの強みを活かした、幅広い競技に対応した設備で、誰もが気持ちよく、気軽にスポーツを楽しめる空間づくりを目指しています。
2.業務提携の狙い
学校等の体育施設においては、スポーツをする場所としてだけでなく、地震等の自然災害発生の際に地域住民の避難場所として提供されることも多く、快適な運動環境に加え、防災拠点としての機能や安全設備も重要になってきています。
そこで、積水化学がこれまで培ってきた管路の調査・診断から設計・施工・維持管理に至るまでの技術・ノウハウや防災・安全に関わるインフラ資材と、ミズノが保有する運動機器・施設関連商品やスポーツ施設の運営・管理ビジネスをマッチングすることで、施設利用者や周辺地域の住民に対し、安全で快適な場を提供していくことを目的とした業務提携に至りました。
3.業務提携の内容
国内のスポーツ施設(新設、改修)に関し、以下の業務を共同で推進していきます。
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1) |
スポーツ施設(公共、民間)の新設、改修の共同受注を目的とした営業活動および調査・診断、設計、製品開発、施工、運営、維持管理 |
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2) |
スポーツ施設等の指定管理事業への提案業務 |
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3) |
PPP(PFI等)※への提案、受注活動 |
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4) |
スポーツ施設等向けの製品・システムに関わる研究および開発 |
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5) |
スポーツサーフェイス冷却システムの共同開発および共同受注を目的とした営業活動 |
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※
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PPP(Public-Private Partnership):官民が連携して公共サービスの提供を行うスキーム |
上記を推進する上で、それぞれが果たす役割は以下の通りです。
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①管路の新設・更新に関わる調査・診断、設計および資材供給 |
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②水廻り防災システム、自然エネルギー利用システムの新設・更新設計に関わる業務 |
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③スポーツサーフェイス冷却システム、融雪システムの設計、資材供給に関わる業務 |
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④官公庁、市町村への設計提案業務 |
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⑤スポーツ施設等向けの製品・システムに関わる研究および開発 |
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①スポーツ施設等のスポーツサーフェイス(陸上競技場トラック舗装材、体育館床下地材等)および機器の新設または改修に関わる工事 |
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②スポーツ施設等の新設または改修の設計、提案および受注活動業務 |
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③スポーツ施設等の整備または運営管理に関わる官民連携スキーム(PPPビジネス等)の提案および受注活動業務 |
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④既存スポーツ施設等への提案ならびに受注活動業務 |
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⑤スポーツ施設等向けの製品・システムに関わる研究および開発 |
4.共同開発について(陸上競技場の地表温度を下げる新冷却システム)
新冷却システムは、配管システムを用いて地中熱等の自然エネルギーシステムを有効活用する技術を保有する積水化学と、スポーツに関わる知見と陸上トラック舗装材および施工技術を保有するミズノとが、2014年4月から共同で開発を進めてきました。
陸上競技場、サッカー場、野球場等のグラウンド表面は、熱の伝導性が低い樹脂製が多いため熱エネルギーが留まりやすく、特に夏季期間は表面温度が60℃以上に上昇し、選手のパフォーマンスの低下や熱中症の一因となっています。
現在開発を進めている新冷却システムは、地中内に水を通す管を施工し、地表に溜まった熱を管内を流れる水で冷却することにより表面温度を下げる仕組みです。
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1)ミズノの陸上トラック舗装技術と積水化学の配管技術、自然エネルギー利用技術を活かした新設計 |
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2)温度ムラを低減する配管、材料設計により地表温度60℃の場合、40℃までの低下を確認(実験値:管に通す冷却水温10℃の場合) |
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3)陸上トラック等の融雪システムとしても使用可能 |
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4)今後の活動予定 |
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新冷却システムは2015年度内に発売できるよう進めていきます。主な販売先はスポーツ施設を運営する自治体やレクリエーション施設を運営する民間企業です。両社の営業ルートを通じて販売します。 |
5.今後の取り組み
各地域で管理するスポーツ施設(体育館含む)は、全国でおよそ5万施設あると言われています。この施設に新たな価値を提供することを、今後両社で検討していきます。
事例の1つは、避難拠点となる多機能型スポーツ施設の提案です。日常は快適・安全なスポーツを楽しむ場として機能し、非常時には避難所として水やトイレ等のライフラインや自然エネルギーを活用した温度制御システムによる快適な利用環境の提供に努めていきます。
この取り組みを「社会問題解決ビジネス」として位置づけ、両社で進めていきます。