室温プロセスによるフィルム型色素増感太陽電池 事業化へ

~ロール・ツー・ロール量産技術を完成、エネルギーハーベスト用途へ展開~

  積水化学工業株式会社(代表取締役社長:髙下貞二,以下「当社」)のR&Dセンター(所長:上ノ山智史)は、室温プロセスによるフィルム型色素増感太陽電池の開発に取り組んできましたが*1、この度、世界で初めて*2フィルム型色素増感太陽電池生産プロセスでのロール・ツー・ロール*3量産技術を完成させるとともに、パイロット生産機を当社つくば事業所(所在地:つくば市)に導入しました。
  今後、「低照度でも発電(照度500ルクス以下)」「薄い(1mm以下)」「軽い(ガラスの1/10以下)」「曲がる」「貼れる」というフィルム型色素増感太陽電池の特長を活かし、屋内(住宅、事務所)・車内・地下街など様々な場所で使用されるエネルギーハーベスト*4向け独立電源として事業化していきます。まずは、電子広告およびIoTセンサー分野の独立電源として2017年度に発売します。将来的には、2025年度に売上高100億円規模に事業を拡大させたいと考えています。


*1

開発経緯や基礎技術等につきましては、2013年12月5日に発表しました当社プレスリリース「世界初!室温プロセスでフィルム型色素増感太陽電池の試作に成功」をご参照ください。


*2

2017年3月時点 当社調べ。

*3

ロール状の材料フィルムをほどきながら加工し、またロール状にする連続生産技術。下記1.の「図1.ロール・ツー・ロール生産プロセスのイメージ」をご参照ください。


*4

エネルギーハーベスト・・・光や熱、振動などの微小なエネルギーから電力を得ること。


フィルム型色素増感太陽電池

写真1.フィルム型色素増感太陽電池(25cm×25cm)


1.色素増感太陽電池について

  色素増感太陽電池(DSC*5)は、二酸化チタンなどの酸化物半導体層に色素を吸着し光電変換層として利用する有機太陽電池の一種で、結晶シリコン太陽電池と同様にガラス基板上に半導体層を形成したガラス板形状のものが主流です。また、半導体層の形成には、通常約500℃での焼成が必要です。


*5

Dye-sensitized Solar Cellの頭文字をとったもの。


2.フィルム型色素増感太陽電池の生産技術および生産体制

  今般当社では、プラスチックフィルムを基板としたフィルム型色素増感太陽電池の開発を完了するとともに、室温下で電極形成工程からサブモジュール組立工程までを連続して行うことができる生産性の高いロール・ツー・ロール量産技術を完成させ、2万㎡/年の生産能力を有するパイロット生産機を当社つくば事業所に導入しました。


フィルム型色素増感太陽電池の生産技術および生産体制


電極形成工程・・・フィルム表面に光電変換層として二酸化チタン多孔膜を形成する工程
染色工程・・・二酸化チタン多孔膜に色素を付加する工程
サブモジュール組立工程・・・電解質を塗布し別のフィルムと重ね合わせ封止するなどの工程

図1.ロール・ツー・ロール生産プロセスのイメージ


3.フィルム型色素増感太陽電池の特長

  フィルム型色素増感太陽電池の特長は、「低照度発電」「薄い」「軽い」「曲がる」「貼れる」の5つで(図2ご参照)、これらの特長から、従来太陽電池が設置できなかった場所への適用が可能となります。


図2.当社太陽電池の特長とおもな利点

図2.当社太陽電池の特長とおもな利点


写真2.「薄い」太陽電池モジュール

写真3.「曲がる」太陽電池モジュール

写真2.「薄い」太陽電池モジュール

写真3.「曲がる」太陽電池モジュール


4.今後の事業展開

  昨年の「エコプロ2016」(2016年12月8日~10日)において、パートナー企業様と共同で、屋内照明で駆動する電子広告製品(下記写真4、5ご参照)を参考出展し、環境面はもとより、電源を簡単に貼れる点やケーブルレスでどこにでも置ける点を、ご来場者に高く評価いただきました。
  これらの電子広告のほか、IoTセンサー向けの独立電源としてパートナー企業との連携を進め、2017年度に発売します。将来的には、2025年度に売上高100億円規模に事業を拡大させたいと考えています。


写真4.電子看板(A1サイズ)

写真5.電子POP(7インチサイズ)

写真4.電子看板(A1サイズ)

写真5.電子POP(7インチサイズ)


図3.様々な用途のイメージ

図3.様々な用途のイメージ


ご参考

当社フィルム型色素増感太陽電池を活用したセンサーを株式会社Secualと共同開発します。

株式会社Secualのプレスリリース(2017年3月30日発表)link