
物資不足の時代、補修の必需品となった
セロハンテープ
開発のヒントは米国の雑誌記事

戦後、進駐軍によって持ち込まれた封筒に貼り付けてあるセロハンテープに注目していた積水化学は、1948年からその製造方法を研究していた。そんな時に見つけたのが、粘着テープの考案者3M社のR.G.ドルー氏の苦心談が紹介された米国の雑誌「リーダーズ・ダイジェスト」の“貼りつけ男”という記事。これによってテープの粘着技術についての着想を得た積水化学は、当時ポバール皮膜の製造にともなって、原料である酢酸ビニール樹脂重合を行っていた大阪工場で、酢酸ビニール樹脂の粘着性を利用したテープ技術の研究、試作を開始した。
しかし、開発は思いのほか困難で、温度に敏感な酢酸ビニール樹脂は、夏は軟らかいが冬には固くなって粘着性が失われ、年間を通して使われるテープには適さないことが判明する。苦心惨憺しながらも、しだいに技術を改良していったが、この時培ったフィルムの押出成形技術と粘接着技術は、後の高機能プラスチックス事業に大きく寄与することになる。
そしてついに1950年4月の「プラスチック展覧会」にセロハンテープ試作品を展示するまでにこぎつけ、大きな反響を得る。これは、壊れたものや破れたものをなんとか補修して使いたいという、この時代のニーズにマッチしていたからであろう。積水化学のセロハンテープは、その後順調に需要を伸ばし、便利な接着用具として家庭やオフィスの常備品となった。
テープ新製品への展開
セロハンテープで出発したテープ事業は、その後、徹底したコストダウンによって競争力を強化し、技術改良を加えた新製品のラインもさらに拡充していった。包装用テープとして、クラフトテープ、布テープ、ビニロンクロステープなどの多彩な製品を発売し、また工業用テープとしては、電気絶縁・防食材料のテープを始め、テープ基材の特性に感圧性粘着剤の特性を組み合わせ、工業用両面テープ、プロテクトテープ、医療用テープなどを開発、新しい機能を持つ製品を世に送り出している。
HISTORY
1948年 | セロハンテープ試作開始 |
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1949年 | 酢酸ビニールの重合実験開始 |
1949年 | 3M社、R.G.ドルー氏「貼り付け男」の記事発見 |
1949年 | セロハンテープの製造実験開始 |
1950年 | プラスチック展覧会でセロハンテープの試作品発表 |
1950年 | スプライシングテープ開発試作 |
1955年 | セキスイバンが厚生省公定書外医薬品として製造許可取得 |
1959年 | 塩ビテープ(エスロンテープ)製造開始 |
1963年 | 布テープ製造開始 |
1963年 | クラフトテープ販売開始 |
1969年 | OPPテープ(オリエンテープ)開発 |