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【Column】見る人を幸せな気持ちにする早田ひなのプレー、その先にあるパリオリンピック/早田ひな

May 26, 2022

見る人を幸せな気持ちにする早田ひなのプレー、その先にあるパリオリンピック/早田ひな|SEKISUI×SPORTS「挑戦のTASUKI」|積水化学工業株式会社

2022年3月5日、日本卓球協会は、早くもパリオリンピック2024の日本代表選考会を開始しました。東京・立川で行われた『2022 LION CUP32』。これから約2年をかけて、合計ポイントを競う最初の大会。かつ、今年9月に中国・成都で行われる世界選手権(団体戦)の代表選出も兼ねた重要な試合。

東京オリンピックに出場した伊藤美誠選手、石川佳純選手、平野美宇選手も参加したこの大会で、早田ひな選手は見事、優勝を飾りました。

試合は1度負けたら終わりのトーナメント戦。早田選手は、世界選手権代表がかかった準々決勝で石川選手と対戦。日本選手の中で、世界ランキング2位と3位の選手、どちらかが代表落ち(代表は5人)する、厳しい組み合わせでした。

「難しい対戦でしたが、大会に出るときの自分の目標は、常に優勝に設定していてブレなかったので、自分を信じて戦い、勝つことができました」

早田選手はそう語ります。

決勝戦の大逆転勝利「ここから勝ったら凄い」

そして迎えた決勝戦。対戦相手は所属するTリーグチーム日本生命レッドエルフの後輩、長﨑美柚選手。過去に負けたこともある強敵に、早田選手は開始から3ゲームを連取される苦戦を強いられます。

「長﨑選手はラケットを振ったら何でも入る完璧な状態で、こんなに何も効かないことってあるのかという感じで、もう完敗の形で追い詰められました」

誰もが長﨑選手の優勝を疑いませんでした。しかし、早田選手はある考えを抱いていました。

「もし、ここから自分で何かひらめいて勝ったら凄いなって思ったんです」

そこから劇的な大逆転勝利を飾ったのです。

殻を破るためにコーチと挑戦した意識改革

こうした、ピンチをも楽しんでしまう早田選手の性格は、生まれついてのものなのでしょうか。

「中学3年生の全国中学校大会で、シングルスの3連覇がかかっていたんですけど、年下の選手に負けてしまったんです。勝たなきゃいけないというプレッシャーで、守りに入ってしまった。それで、どういう気持ちで試合に臨めばいいのか試行錯誤した時期がありました」

ちょうどその頃から専属コーチとなっていたのが石田大輔氏でした。石田氏の指導方針は「どんな状況でも常に笑顔で取り組む」というもの。

早田選手は、練習では上手くできるのに、試合ではできないことが多かったのです。

「試合になると勝ちたい気持ちが強すぎて、安全策でプレーしてしまう傾向がありました。その殻を破るため、大輔先生が練習と試合をつなげるために色々と工夫してくれたんです。それがどんな状況でも常に笑顔で卓球を楽しむことでした」

“卓球楽しい”って思うことも素直な心

そうは言っても、もともと負けず嫌いな性格。その上に中学校大会で2連覇し、高1でインターハイも優勝。国際大会にまで出る立場になると、なかなかそれは難しいことです。早田選手自身も、本当に楽しみながらできるようになったのは、ここ何年かのことだと言います。

「今ではオープン戦に出ている一般の方々と同じように、本当に試合を楽しんでます。試合をしている!という感覚はあまりないです。練習でできたことが試合でできると“うわー、すげー、できた!”って感じで。練習のときは、もう試合の何倍も大爆笑しながらやっていて。伊藤選手もそうなので、ダブルスの練習をすると、笑いすぎて練習が進まないんです(笑)」

楽しみながら試合に臨み、ピンチをも楽しみに変える。それは石田氏と早田選手の長年の工夫の成果でもあったのです。

「大輔先生だけじゃないですけど、石田卓球クラブのもうひとつの方針が“素直な心”を持って何に対しても取り組めというのがあります。小さい頃から常に言われていました。今となっては大輔先生や石田卓球クラブの男先生、女先生が考える“素直な心”と違ってるかもしれないですけど、日本代表になって勝たなきゃいけないプレッシャーを感じながら日々戦っている中で、卓球を始めたときのように“卓球楽しい”って思うことも素直な心に繋がるんじゃないか、それが一番大事なんじゃないかなって思ってます」

大好きな卓球を楽しむことが力の抜けた良いプレーにつながり、結果としてそれがパリオリンピックにまでつながる。なんと幸せな選手生活なのでしょう。

「応援をいただいた恩は試合結果でしか返せない」と語る早田選手。ですが、見る人を幸せな気持ちにする楽しそうな笑顔と素晴らしいプレーは、すでに十分すぎるほどファンを楽しませています。

Text by 伊藤条太