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【Column】これまでもこれからも…「チームひな」は世界的な躍進を支える“もう一つの家族”/早田ひな
October 26, 2023
異例の環境から生まれた「チームひな」
今年5月の世界卓球選手権大会(南アフリカ・ダーバン)女子シングルスで、日本選手として58年ぶりに中国選手に勝利し、銅メダルを獲得した早田ひな選手。さらに9月のアジア大会では日本選手として29年ぶりの決勝進出を果たし、銀メダルを獲得しました。2024パリ日本代表選考でもトップを独走している早田選手は、たびたび会見で「チームひな」という言葉を口にします。早田選手をサポートする仲間たち「チームひな」はどんな存在か、あらためて本人に聞きました。
「いろんな人からたくさんのことを教えてもらって、今の自分はここにいます。その中でも、(石田)大輔先生、フィジカルトレーナーの岡(雄介)さん、練習相手を務めてくださる日本生命のお二人、それから母の6人で基本は活動することが多いです」
プロ選手であれば、こうしたサポート体制があることは珍しくありません。ただ、他の卓球選手たちのチームに比べて、「チームひな」の特別なところはどこにあるのでしょうか。
「まず両親が卓球をしていないというのがあります。大輔先生にこれだけ長く教えてもらっているというのもありますし、すべてが石田家から始まっているというのも、考えれば考えるほど全部違いますね」
日本のトップ選手で、両親がいずれも卓球経験がないというのは極めて異例なこと。早田選手が4歳のとき、お姉さんが通っていた「石田卓球クラブN⁺」の門を叩いたのが、すべての始まりでした。
やれることは全部やってくれた両親
早田選手のお母さんは、今も卓球のことはあまり詳しくないとのことですが、遠征中も「基本はご飯と洗濯を担当」してくれています。
早田選手がここまで来ることができたのは、本人の努力と、さまざまな方々からのたくさんのサポートのおかげ。その中でも、両親の早田選手に対する献身は、より大きなものと言えます。
「自分はどちらかというと頑張りたいタイプだったので、それに応えてくれるというか。休みの日でも『サーブ練習に行きたい』って言ったら車を出してくれたり。強くなるかならないか、素質があるのかないのかはわからないですけど、とにかくやれることは全部やってくれて、感謝しています」
できないことさえも楽しさに変える練習
早田選手は石田眞行・千栄子夫妻から指導を受け、小学生の頃には全国大会で活躍を始めます。そして、中3から現在まで早田選手の専属コーチを務めるのが、三男の大輔氏です。
8年以上もタッグを組んでいますが、長い間には、お互い感情をぶつけ合うことはなかったのでしょうか。
「言い合いみたいになったことはないですけど、全然楽しくなさそうに練習をしていた時があって、それを怒られたことがありました」
上手くできない技術があるのは当たり前。何かを変えて、上手くいくことを楽しみに変えていく意欲が大事なのだと、大輔氏は早田選手にアドバイスしたというのです。そうしたこともあって、今はより、さまざまな練習に楽しく取り組むようになりました。
「もちろん試合で勝つことも嬉しいし、楽しいですけど、技術が上がっていったり、トレーニングした成果が出て、取れなかったボールが取れるようになったりとか、そういう嬉しさや楽しさもある。それをどんどんパワーに変えて、毎日練習を頑張れるようになっているかなと思います」
できないことさえも楽しさに変える練習。これが早田選手の躍進の秘密と言えるのかもしれません。
家族同然のチームとさらなる高みへ
大輔氏のサポートは卓球だけではありません。早田選手のために料理まで担当してくれるそうで、遠征中はもちろん、日常生活においても、アスリートとして必要な栄養素を考え、なおかつ早田選手の好みに合わせて食事を作ってくれているそうです。
食事に関してはこんなエピソードも。それは、ある海外遠征で、大輔氏が日本からルーを持ち込んで、早田選手の好物であるハヤシライスを作った時のこと。良かれと思ってトマトを入れたところ、それが普段と違う味なので「これ何かいれました?」と早田選手が気づき石田コーチは「バレたかー笑」と、まるで家族の中での出来事のようですが、そんなところからもチーム全体の関係性の良さが伺えます。
今や日本卓球史に残る存在となった早田選手。その活躍を支えているのは、家族同然の信頼関係で結ばれている「チームひな」なのです。