品質
積水化学グループは、「CS品質」を経営の基軸と定め、すべての事業活動において、モノの品質革新に徹底的にこだわり、お客様の期待に応える価値(商品・サービス)を常にお届けし、お客様に継続的に当社グループを選択していただき、お客様とともに長期的に発展、成長し続けることを目指します。私たちはこれらを実現するために、品質を支えるのは現場でのモノづくりであると認識し、基盤品質の強化と品質コンプライアンスの遵守を重視しています。
不具合の未然防止と日常管理の強化と、品質不正の抑止
当社グループは、「お客様の声」を貴重な経営資源として位置付け、「モノづくりのはじまりはお客様の声から」をモットーに、「モノの品質」「人の品質」「仕組みの品質」の革新に積極的に取り組むとともに、お客様や社会に対し新しい価値を提供し続けることで、安心で豊かな社会の実現に貢献します。
当社グループでは、品質コンプライアンスの遵守を重視しています。不具合発生の未然防止や日常管理の強化といった品質を支える基盤の強化に継続的に取り組むことで、不正を生み出さない、品質を最優先とする文化構築に努めています。特に品質不正については、品質に関する資源配分の不足や組織体制、内外からのさまざまなプレッシャーなどにより発生するとの仮説のもと、そのリスクの根本断ちをするために、2020年から「組織体制見直し」「品質データのデジタル化・堅牢化」「品質コンプライアンス教育」「新規事業のレビュー強化」に取り組んでいます。
CS品質現中期計画
- 15-04
CS品質経営取り組みロードマップ
- 「CS品質の磨き上げ」を参照
- SPMC(セキスイ・プロセス・マネジメント・チャートの略)
現中期経営計画では、重大インシデント発生による企業価値毀損を防ぐことを目的とし、「重要品質問題の発生件数ゼロ」をKPIに掲げ、品質活動を推進してきました。
2022年度の全社重大インシデントに該当する事案は0件でしたが、カンパニー個別基準による重要品質問題は2件発生しました。主要実施策の結果は以下の通りです。
主要実施策 | 管理指標 | 現中期最終年度(2022年度) 目標 |
2022年度実績 |
---|---|---|---|
重大品質問題の 発生未然防止 |
開発未然防止手法活用率(開発未然防 止手法実施テーマ数/開発テーマ数)※ |
100% | 100% |
- 商品開発の段階において開発未然防止手法を活用した割合
サステナビリティ委員会の下部組織としてCS品質分科会を開催
当社グループは、取締役会において、財務・非財務すべての取り組み、方針に関して審議し、決定を行っています。
非財務面の「CS品質」に関しては、サステナビリティ委員会およびその下部委員会であるCS品質分科会を、それぞれ年2回開催しています。2022年度のCS品質分科会は、10月と3月に計2回開催しました。
- 15-03
CS品質経営 推進体制
事業特性に応じた品質保証体系の構築
当社グループでは、商品開発の段階から設計・生産・販売に至るプロセス全般にわたる「品質保証体系」を構築しています。
各プロセスで品質保証の体制を整え標準を重視した日常管理を推進すると同時に、品質を支えるのは現場でのモノづくりであると認識し、生産活動の革新に注力しています。また、製品の開発や改良にさいしては、品質保証・安全などの観点から厳格な設計審査を行っています。
そして、販売後もお客様へのサービスを維持管理できる体制を構築しています。
- 09-39
品質データ不正・改ざん防止の取り組み
2020年度より開始したCS品質中期計画に基づき、データの不正や改ざん防止を徹底するための体制づくり、仕組みづくり、運用を進めました。
2022年度は、お客様との仕様の取り決めの遵守を目的に、特に製品検査および成績書作成に関するデータ信頼性と透明性の確保に向け、データ入力ミスや改ざんができないようなシステム構築の実現や、日常管理業務の見直しと展開を進めました。また、検査データをデジタル化し業務改善へ活用することに力を入れています。
今後も当社グループは、品質保証力の向上を目的に、不正が発生する余地を撲滅するためコンプライアンス意識の再徹底を図り、社内品質管理の強化および品質コンプライアンス教育を継続的に実施していきます。
品質問題の未然防止をテーマとする研修の実施
当社グループでは、品質問題の未然防止をテーマに、①効果的で効率的な未然防止手法を習得することを目的とした「開発未然防止セミナー」、②DR※1を行う従業員のスキルアップを目的とした「DRレビューア育成セミナー」、③新製品開発に関する情報の整理方法を習得するための「QFD※2セミナー」を開催しています。
2022年度もオンライン研修で、「開発未然防止セミナー」「QFDセミナー」を実施しました。
- DR:Design Review(デザイン・レビュー)
- QFD:Quality Function Deployment(品質機能展開)
- 05-03
QFDセミナー
新規事業における設計審査の仕組み構築
当社グループで新規事業を立ち上げるさいに、厳格な設計審査を実施する仕組み「ゲートレビュー」(GR)※を構築し、2020年度より運用しています。設計時に気を付けるべき観点を示した設計チェックシートを活用し、設計審査時の議論のポイントを明確化しています。また、新規事業に関連する業界や法律などの事項についての設計初期のインプット情報として、社内外の有識者から新たな知見を得ることを目的とした「外部知見者レビュー」を行っています。
- GR:次のステージへの移行の可否を判断する組織的な活動(関所管理機能)。
CS品質人材グローバル育成仕組み構築
当社グループでは、品質を支える現場のモノづくり力向上を目指し、グループ改善活動を支援しています。
現中期経営計画では、以下の3つの柱を軸に活動を展開してきました。
-
1.「グループ改善活動の質の変革」
オンライン発表の普及とともに、形にとらわれない自由な改善活動や発表、という姿が広がり、質の変革につなげることができました。 -
2.「グループ改善活動の自立化」
基礎教育を含むテーマ支援を進めた結果、国内だけでなく海外でも、活動を自力で推進出来る事業所が着実に増えてきました。 -
3.「グループ改善活動モニタリング」
2022年に初の試みとして『改善交流会』をオンライン開催しました。各事業所で推進されている改善テーマの中から、紹介したい内容、聞きたい内容を広く募り、最終的に5チームによる紹介と聴講者による質疑を展開、多くの方にご参加いただき、有意義な交流ができました。
- 05-04
グループ改善交流会
グループ改善活動の新しい姿:グループ改善発表会をハイブリッド形式で開催
2023年1月、グループ改善活動発表会(全社大会)をハイブリッド形式で開催しました。
新型コロナウイルス感染拡大対策のために集合参加者を制限し、一方でオンライン参加人数を増やす、という調整を行いました。海外3地域を含む多くの発表事業所が3年ぶりに講堂に集い、事業所間の交流も盛り上がる中、無事終了することができました。
今回の発表テーマは品質強化に関する内容が多く、各事業所の現場第一線で働く従業員一人ひとりの、品質意識の高さを感じることができました。
- 05-05
2022年度 グループ改善発表会
新QMS体系構築と効果的運用
ISO9001:2015への認証移行時、プロセスアプローチへの対応を強化するために、「SPMC(セキスイ・プロセス・マネジメント・チャート)」と名付けた当社グループオリジナルの管理シートを考案しました。このシートは管理フローが一目で分かるので、日常管理のチェック、是正処置、内部監査、品質教育などに効果的に活用できます。
2022年度は、継続して開催している「SPMC内部監査実践研修」について、模擬監査演習などのカリキュラムを見直し、受講者がより理解しやすい内容に刷新しました。また、「SPMCを活用した統合内部監査の進め方ガイドライン」や「内部監査シナリオの音声付動画」などを作成し、浸透度・理解度強化を図りました。
引き続き、品質マネジメントシステムの質を向上させる取り組みを推進していきます。
- 05-06
- 05-07
-
SPMCを活用した
統合内部監査の進め方
ガイドライン -
SPMC内部監査実践研修
製品の安全に関する法令および自主規制の遵守
当社グループでは、品質の最も重要な要素として製品安全を位置付け、お客様に安全な製品をお届けするために、グループ各社が製造・販売する製品の安全確保に努めています。設計開発段階で、製品安全の確保のためにセーフティーレビューを実施しています。また、製品の安全に関する法令に違反する事例が内部で確認または外部から指摘された場合には、その事実を迅速に情報開示し、原因究明や再発防止に努めることとしています。これは、グループ各社が自主的に定めた製品安全の基準に違反した場合も同様です。
2022年度末、製品の安全に関する法令違反事例が2件発生し、23年4月に国土交通省へ報告をいたしました。当社グループは今回の事象を厳粛に受け止め、迅速な是正を実施するとともに、全社を挙げて再発防止に努めてまいります。
製品品質表示とラベリング:製品情報表示に関する法令および社内規定の遵守
当社グループでは、製品の品質や安全性に関する情報表示について、関連する法令および社内規定の遵守を徹底しています。開発段階で法令、製品情報表示のチェック項目を設定し確認し、DRを実施しています。
2022年度、品質および安全性に関する製品情報表示およびラベリングに関する違反事例はありませんでした。
サプライヤーとの協業による品質保証体制
当社グループでは、サプライヤーからの購入品の品質を確保する活動を行っています。例えば、住宅カンパニーではサプライヤーと4M変更※管理をルール化しており、確実に実施していくことで製品の品質保証体制を構築しています。
-
※ 4M変更:Man(人)、Machine(機械設備)、Material(材料)、Method(方法)の4つの要素の変更を管理することで、製品の不具合を予防し、市場への不具合品流出を防ぐ手法
品質に関するガイドラインの制定
当社グループでは、商品開発から設計、生産、販売、アフターサービスというバリューチェーン全体で一貫した品質管理を行い、各プロセスレベルの向上を図ることを目的として以下の3つのガイドラインを制定・発行しています。
「品質保証力強化のための開発ガイドライン」は、商品化後に起こりうる品質リスクを事前に予測することで、品質に関わる問題の発生を未然に防ぐことをねらいとしています。「日常管理の進め方に関するガイドライン」は、製造部門が実行すべき日常管理の基本的指針をまとめています。
「契約・仕様書に関するガイドライン」は、製品販売において、拡大補償※発生リスクを削減することを目的としています。
- 製品に不具合があった場合に、当該製品の返品・交換だけではなく、顧客が加工・施工・使用した製品・施工物・対象物、および関係する損害についても補償が求められること。
- 05-08
2022年度の実績
2022年度は重要品質問題※1は2件でした。(カンパニー個別基準による)
外部損失費※2は2016年度比で99%となりました。
引き続き、グループ全体の品質保証システムの強化および設計開発プロセスに着目し、開発未然防止手法(QFD、DRBFM※3など)の活用を推進することによって外部損失費の削減を目指します。
2022年度の開発未然防止手法活用率は100%でした。
- 重要品質問題:「製品・技術・サービスの品質」に関し、緊急に根本解決を図らなければ、お客様・社会・当社グループに対し重大な損害を与える問題。
- 外部損失費:製品に関するクレーム対応の費用。
- DRBFM:Design Review Based on Failure Mode(変更点、変化点に着目して新設計の問題を発見し、解決する未然防止手法)
品質マネジメントシステム第三者認証取得事業所
積水化学グループの全生産事業所数に対し、ISO9001の認証取得事業所の割合は88%です。ISO13485、IATF16949も含めると99%です。
重要品質問題に関するデータ
- 09-78
重要品質問題の発生件数
指標 | 算定方法 |
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重要品質 問題 |
商品・サービスの品質に関し、緊急に根本解決を図らなければ、お客様・社会・積水化学グループに対し重大な損害を与え、社会的信頼が失墜すると品質保証責任者が検討・判断し、コーポレートまたはカンパニープレジデントが決定した問題をいい、次の項目を含む
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外部損失費に関するデータ
- 09-80
外部損失費
指標 | 算定方法 |
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外部損失費 | 製品に関するクレーム対応の費用 |
その他のデータ
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
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開発未然防止セミナー参加者数(累計人数) | 302 | 418 | 502 | 555 | 604 | 657 | 710 |
DRレビューア育成セミナー参加者数(累計人数) | 166 | 259 | 283 | 296 | 349 | 363 | 363 |
QFDセミナー参加者数(累計人数) | - | - | 31 | 90 | 188 | 251 | 325 |