目標

積水化学グループの環境課題の長期目標は、環境長期ビジョン「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2050」に示した“生物多様性が保全された地球”を実現することです。そのために、気候変動、資源循環、水リスクといった環境課題の長期ゴールを同時に実現していくことが重要と考えています。環境中期計画「SEKISUI 環境サステナブルプランAccelerateⅡ(2020-2022 )」では、各課題の相関を認識しながら環境課題解決に向けた取り組みを展開してきました。今後はさらにほかの環境課題に対してトレードオフとならないよう取り組みの質をあげ、課題解決に向けて取り組んでいきます。各環境課題の進捗については長期ゴールからバックキャストしたマイルストーンを設定し、個別の管理目標をもって進捗をマネジメントしています。環境課題全体の進捗については、統合指標「SEKISUI環境サステナブルインデックス」をひきつづき活用し、当社グループの環境経営全体の進捗をモニターしていきます。

環境課題に対する取り組み姿勢と長期に目指す姿:
環境長期ビジョン「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」

当社グループは、“生物多様性が保全された地球”の実現のために、企業活動や製品、事業を通してさまざまな自然環境および社会環境課題の解決に貢献しています。「地球の自然資本、社会からの有用な社会資本を活用して企業活動を行っている」ことを認識し、ステークホルダーと連携しそのリターンを加速していくことを宣言しています。
私たちの目指す“生物多様性が保全された地球”とは、さまざまな自然環境や社会環境における課題が解決された社会がなくては実現できない地球であり、それは2030年のSDGs達成に向けて取り組んでいく姿勢と同じだと考えています。
そして、課題解決に貢献していくための活動として、重要視しているのは次の3つです。

  • (1)
    サステナビリティ貢献製品の市場拡大と創出※1
  • (2)
    環境負荷の低減
  • (3)
    (自然および社会※2)環境の保全
  • 08-86

※ステークホルダー:「お客様」、 「株主」、 「従業員」、 「取引先」、 「地域社会・地球環境」

これらの活動の活性化と課題解決の加速のためには、従業員一人ひとりがさまざまな環境課題を認識し、課題解決貢献力の高い集団となるだけではなく、あらゆるステークホルダーとのパートナーシップをもって連携して活動を進めていく必要があると考えています。
当社グループは2050年に目指す姿からバックキャストし、中期単位でのマイルストーンを設定し、環境ロードマップを設定しています。2022年度には、社会要請や環境課題の状況、企業としてのリスクとチャンスなどをとらえ直し、以下の観点から環境ロードマップを更新しました。

  • 環境課題に関して取り組むことで、中期スパンでどのような状態を実現していくか
  • 取り組むべき重要実施項目と中期におけるマイルストーン
  • 07-01

環境ロードマップ

環境課題ごとに長期ゴールを設定

環境長期ビジョンで目指す“生物多様性が保全された地球”
の実現のために、特に重要と位置付けている環境課題と2050年に目指すゴールは以下の通りです。

  • 気候変動:企業活動による温室効果ガス排出ゼロの実現(カーボンニュートラルの実現)
  • 資源循環:サーキュラーエコノミーの実現
  • 水リスク:健全な水に満ちた社会の実現

これら環境課題の長期ゴールをすべて達成することで、

  • 生物多様性:生物多様性が保全された地球(=ネイチャーポジティブの実現)

を目指します。

  • 07-02

環境課題ごとの長期ゴール

各環境課題については、2050年のゴールからバックキャストしたロードマップを描き、中期ごとにマイルストーンを設定しています。
環境課題は相互に関連しており、そのいずれに対してもトレードオフにならない解決策を選択し、推進することが長期ゴールの同時実現につながるため、次期中期計画においては、環境課題解決策の質の向上に注力していきます。

  • 07-03

環境課題同士の相関

  • 07-21

環境課題取り組みの強化点の推移

中期マイルストーンと実行計画:
環境中期計画「SEKISUI 環境サステナブルプランAccelerateⅡ(2020-2022)」

2020年度から3ヶ年計画で環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプラン AccelerateⅡ」を推進してきました。前述のように環境長期ビジョン「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」で描いた2050年のあるべき姿に向かってバックキャスティングを行い、設定した中期計画ごとのマイルストーンを目指し、各重要実施項目の取り組みを実施してきました。

当社グループが取り組むべき重要な環境課題は「気候変動」「水リスク」「資源循環」と定めています。それらの長期ゴール達成に向けた課題解決を加速するために前中期計画から引き続き重点的に取り組む核となる項目として設定していることが、「サステナビリティ貢献製品の市場拡大と創出」、「環境負荷の低減」、「環境の保全」です。
次期中期計画においては、さらに特化して取り組む項目として、
・サプライチェーンマネジメント
・従業員の社会課題解決貢献力の向上
を定めています。

環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプラン AccelerateⅡ」においては、以下の重要実施項目について、以下の目標を立て、取り組みを推進してきました。

自然および社会資本のリターン率向上
統合指標「SEKISUI環境サステナブルインデックス」での進捗把握:自然資本へのリターン率100%以上を持続

製品による地球および社会のサステナビリティ向上
サステナビリティ貢献製品の売上高:8,000億円

気候変動課題に対する取り組み
[脱炭素化]
購入電力の再生可能エネルギー比率:20%
温室効果ガス排出量削減:9%以上(2013年度比)

資源枯渇課題に対する取り組み
[再資源化の促進]
廃棄物の再資源化率:現状把握、ベンチマークを設定(2025年度にはベンチマークの2倍以上)

水リスク課題に対する取り組み
[水資源の維持]
水使用量の多い生産事業所の取水量:10%削減(2016年度比)
COD排出量の多い生産事業所の河川放流水のCOD総量:10%削減(2016年度比)
[水リスクの最小化]
流域特有の水リスクの把握と課題となる取り組みの実施

従業員の課題解決貢献力の向上
SDGs貢献活動の推進

そして、2023年度から始動する中期計画では、“SEKISUI環境サステナブルプランEXTEND”として以下の目標を目指し、取り組みを推進していきます。

自然および社会資本のリターン率向上
統合指標「SEKISUI環境サステナブルインデックス」での進捗把握:自然資本へのリターン率100%以上を持続

製品による地球および社会のサステナビリティ向上
サステナビリティ貢献製品の売上高:10,000億円超

気候変動課題に対する取り組み
[脱炭素化]
購入電力の再生可能エネルギー比率:70%
温室効果ガス排出量削減:33%以上(2019年度比)

資源枯渇課題に対する取り組み
[再資源化の促進]
廃プラスチックのマテリアルリサイクル率:65%

水リスク課題に対する取り組み
[水資源の維持]
水使用量の多い生産事業所の水使用量:10%削減(中期3年間)(2016年度比)
COD排出量の多い生産事業所の河川放流水のCOD総量:10%削減(中期3年間)(2016年度比)
[水リスクの最小化]
水リスクによる事業影響が大きい事業所で影響最小化の取組み実施

従業員の課題解決貢献力の向上
教育研修の推進
SDGs貢献活動の推進

現環境中期計画における重点実施項目の概要

サステナビリティ貢献製品

サステナビリティ貢献製品の前身の制度である環境貢献製品制度は、2006年に始動して以来、環境課題の解決に対して貢献度が高い製品に関して、社内基準をもって登録を行い、全社製品におけるその比率を拡大することを社会にコミットし、社会課題解決型の製品の創出と市場拡大を推進してきました。制度の運用当初より、製品による環境課題解決を加速し、“エコロジーとエコノミーの両立”を目指して取り組みを継続しています。

2017年度、環境貢献製品の対象を自然環境だけでなく、人的資本や社会資本をも包含する社会環境にまで広げました。当社グループが目指しているのは「人々のくらし」と「地球環境」の向上であり、「人々のくらし」の向上には「福祉と健康の促進」や「強靭なインフラの確保」、「地球環境」の向上には「気候変動の緩和と対応」など、2015年に国連が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」で示されている課題の解決が必須と考えます。まずはこれらの課題解決に軸足を置いて取り組みを推進しています。

2020年度からは、環境を含む社会課題解決を持続的に行い、社会課題解決によって企業成長していくため、全社として強化に努める持続経営力や利益創出力の向上のため、製品制度の名称も“サステナビリティ貢献製品”と改め、2つの運用を始動しました。

  • 持続性評価:企業および製品のサステナビリティ向上に向けて、サプライチェーンにわたってガバナンス(内部統制)、顧客満足、開発プロセスにおける環境配慮を含む社会的責任およびリスクとなる事項の確認・評価を実施しました。改善や強化すべき点を把握し、各項目の運用に役立てています。
    特に環境課題については、原料サプライヤーの温室効果ガス排出量の削減や、持続可能な森林からの調達、原料から廃棄にいたるまでの環境課題への配慮の確認などがあげられます。
  • プレミアム枠:環境を含む社会課題解決への貢献度が高く、利益をけん引している製品を戦略的に伸長させる製品の“戦略枠”として設定しました。

気候変動課題

気候変動課題に関しては、2050年には温室効果ガスの排出をゼロにする長期目標を設定しています。その達成のために描いた2℃目標の道筋での温室効果ガス削減のロードマップでのマイルストーンが、中期計画の半ば(2021年度)には前倒しで達成できました。これを受けて、取り組みによる加速を目指し、1.5℃目標へとロードマップを見直しました。
Scope2である購入電力について、2030年にはすべて再生可能エネルギーに転換するというマイルストーンはそのままですが、燃料転換も視野に入れた温室効果ガス排出量の低減にも注力することで2019年度比で50%削減を目指します。

現中期計画では、生産工場における使用電力を再生可能エネルギーへの転換を積極的に推進するため、2020年度以降は“エネルギー調達革新”の時期と設定し、推進してきました。購入電力を再生可能エネルギーに20%転換することを目標とし、転換支援策も始動しています。Scope1である燃料由来については、老朽化した設備の更新による効率化や電気へのエネルギー転換、そして生産現場での地道な省エネルギー活動を継続的に推進しています。

水リスク課題

2020年度には“健全な水に満ちた社会の実現”を2050年ゴールと定め、重点項目におけるマイルストーンをバックキャストして設定し、水リスク低減のロードマップを策定しました。これに基づき水リスク課題に関しては、従来から引き続き全社で使用する水の量を低減し、循環利用を進めるとともに、河川に放流する水の質をCOD指標においても向上するように努めていきます。また、地域固有の水リスクを把握し、リスクの高い事業所に関しては、地域に応じたリスク低減の対策を考え、実行していきます。
これにより生産事業所を中心とした流域の水環境の改善、サプライチェーンにおける水リスクの低減に努め、企業および社会の水リスクを低減していきます。

資源循環課題

資源循環に関しては、2030年に向けて業容が倍増する中でも廃棄物総量の低減(リデュース)に努める一方で、再資源化(リサイクル)を重視し、2050年には循環型社会、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを推進していきます。サプライチェーンにおける資源循環の取り組みが、脱炭素社会の実現に不可欠であると認識し、2021年度には資源循環方針、戦略および2050年のサーキュラーエコノミーの実現に向けた資源循環ロードマップを策定しました。

資源循環のためのサステナビリティ貢献製品の創出によるイノベーションを核として、既存製品の原料転換、生産過程で排出する廃棄物の価値あるマテリアルへの再資源化への取り組み強化を始めています。
自社のみならず社会の資源循環を加速する技術としては、廃棄物から微生物の力でエタノールを生産するバイオリファイナリー(BR)技術を確立し、実証を行い、社会実装に向けて進めています。
環境課題に対しては、サプライチェーンが一丸となって取り組むことで、解決が加速すると考え、これまで以上に製品のライフサイクルにわたるサプライチェーンマネジメントを重視して施策を展開し、活動を行っていきます。

環境中長期計画と2022年度実績

〇・・・2022年度目標達成
×・・・2022年度目標未達成

項目 ねらい 指標 基準年 中長期目標 2022年度の目標と実績 対象
中期目標
(2020~2022)
2030年
目標
2050年
目標
2022年度
目標
2022年度実績 自己評価 参考ページ 国内生産
事業所
研究所 国内
オフィス
海外生産
事業所
海外オフィス そのほか
自然・社会資本の
リターン率
企業活動を通して“生物多様性
が保全された地球”を実現
SEKISUI環境サステナブルインデックス
自然資本へのリターン率
100%以上を持続 100%以上維持 127.3% 詳細
サステナビリティ貢献製品 価値(社会的・経済的価値)の
最大化
サステナビリティ貢献製品の売上高
(伸長率(2019比))
8,000億円 課題解決型製品の
売上高拡大
環境・社会のサステナビリティを高める製品とサービスにより、企業の持続的な成長をけん引 8,000億円 9,089億円 詳細            
新規登録製品の件数 6件/年 6件/年 18件/年 詳細            
環境負荷低減 GHG 脱炭素化・GHG排出量ゼロ 購入電力の再生可能エネルギー比率
(自家消費型太陽光発電を含む)
20% 100% 100%維持 20% 36.4% 詳細
GHG排出量 2013 年度 ▲9% ▲26% ▲100% ▲9% ▲26.8% 詳細
エネルギー
使用量
の削減
生産時のエネルギー効率の改善
およびエネルギー費用の削減
エネルギー使用量の生産量原単位 2019
年度
▲3% ▲10% ▲3% ▲1.1% × 詳細        
資源循環 再資源化促進 廃棄物発生量の生産量原単位 2019
年度
生産量原単位
▲1%/3年間
サーキュラー
エコノミーの
実現
生産量原単位
▲1%/3年間
▲1.7% 詳細        
紙使用量の人数原単位 2019
年度
▲3% ▲3% ▲39.0% 詳細        
住宅新築現場における棟当たりの廃棄物発生量 2019
年度
▲6% ▲6% ▲8.9% 詳細          
水リスク 水資源の維持 水使用量の多い生産事業所の取水量 2016
年度
▲10% ▲10%
(中期3年間)
▲7.8% × 詳細          
COD排出量の多い生産事業所の
河川放流水のCOD総量
2016
年度
▲10% ▲10%
(中期3年間)
▲14.3% 詳細          
化学物質
影響の低減
化学物質の排出・移動量の削減 VOC大気排出量(国内) 2019
年度
▲3% ▲3% ▲17.1% 詳細          
生態系 生態系影響
生態系劣化へのリスク最小化
土地利用通信簿®評価点数 2019
年度
+3ポイント/3年間 全事業所で
生態系配慮※推進
※生態系配慮:生物多様性の定量評価の向上
全事業所で
生態系配慮の維持
+3ポイント/3年間 +4.9ポイント 詳細        
教育・啓発 社会課題解決貢献力向上のための教育 従業員の社会課題解決
貢献力の向上(従業員教育)
人材の課題解決力指標 2020
年度
課題解決力の高い人材に必要なスキルを伸ばすための教育と人材指標チェック実施。2020 年度にベンチマークを把握し、目標値を設定 課題解決力の高い人材としてのレベルアップ 課題解決力の高い人材として社会をけん引 51点(ベンチマーク+10点) 39点 × 詳細      

次期環境中期計画「環境サステナブルプラン EXTEND」 目標値(2023~2025年度)

項目 ねらい レベル設定の目安 指標 基準年 2023年度
目標
2024年度
目標
2025年度
目標
2030年度
目標
2050年度
目標
対象
国内⽣産
事業所
研究所 国内
オフィス
海外⽣産
事業所
海外
オフィス
そのほか
統合指標による進捗管理 企業活動を通して" 生物多様性が保全された地球" を実現 環境に与える負荷以上に環境へリターン SEKISUI環境サステナブルインデックス
自然・社会資本へのリターン率
100%以上維持 100%以上維持 100%以上維持 100%以上維持 100%以上維持
サステナビリテイ貢献製品 TOTAL 経済価値と社会価値の
両立
2030年業容倍増を牽引 サステナビリティ貢献製品売上高 9,600億円 1兆円超            
主要な環境
課題別
再資源化促進(特に炭素)
への貢献
循環型社会の実現 資源循環に資する製品の売上高拡大 2020年
553億円
1.6倍
(885億円)
1.65倍
(912億円)
1.7倍
(940億円)
2倍以上
(1,106億円)
全製品            
非化石由来および再生原料使用製品の売上高 2019年
30億円
380億円 390億円 400億円 1,000億円            
環境負荷低減 GHG 脱炭素化
GHG排出量ゼロ
パリ協定1.5℃目標
脱炭素化社会の実現
GHG排出量削減率 2019年度 ▲26% ▲30% ▲33% ▲50% ▲100%  
購入電力の再エネ比率 50% 60% 70% 100% コージェネ含む
全使用電力100%
 
燃料由来GHG排出量削減率
(非エネルギー起源GHGを含む)
2019年度 ▲10% ▲10% ▲12% ▲11% ▲100%  
エネルギー使用量の削減 生産時のエネルギー効率の改善及びエネルギー費用の削減 再エネ購入による費用
増加分以上の費用削減
エネルギー使用量の生産量原単位削減率 2022年度 ▲1% ▲2% ▲3%        
資源循環 再資源化促進(特に炭素) 資源循環型社会の実現
海洋プラ問題
廃棄物発生量の生産量原単位削減率 2022年度 ▲1% ▲2% ▲3% サーキュラーエコノミーの実現        
廃プラスチックのマテリアルリサイクル率 国内;61%
(海外;BM取得)
国内;63%
(海外;BM+3%)
国内;65%
(海外;BM+5%)
100% 100%      
オフィスにおける
資源使用量削減
紙使用量の人数原単位削減率 2022年度 ▲1% ▲2% ▲3% サーキュラーエコノミーの実現        
新築現場における
廃棄物発生量削減
棟当たりの廃棄物発生量削減率 2022年度 ▲4% ▲8% ▲12% サーキュラーエコノミーの実現          
水リスク 水リスクによる事業影響最小化
流域固有の水課題解決に貢献
持続的な操業が可能
自然資本へのリターンに貢献
国内外5拠点固有の水リスクに対する
事業影響最小化の取組み実施
事業影響大きい個々の事業所で最小化の取組み 水リスクが
顕著な拠点で
環境負荷最小化
すべての地域で
水リスクを最小化
       
水資源の維持 流域の水ストレスを増加させない 水使用量の多い生産事業所の
水使用量削減率
2016年度 ▲10%/3年間          
流域の水環境の負荷を
増加させない
COD排出量の多い生産事業所の河川放流水のCOD総量削減率 2016年度 ▲10%/3年間          
生態系 生態系影響
生態系劣化へのリスク最小化
生物多様性の保全 土地利用通信簿評価ポイント 2022年度 +3ポイント/3年間 全事業所で生態系配慮推進 全事業所で生態系配慮の維持        

主な重点項目の2022年度の実績について

サステナビリティ貢献製品の市場拡大と創出

2022年度は、18件の製品・サービスを新たに登録しました。例えば、
・住宅の寿命向上にもつながる“外壁リフレッシュ塗装”
・気候変動課題の解決に寄与するEV普及のため、レアアース低減にもつながる“低温分解性樹脂”
・インフラを乾式工法によって更新し、寿命延長が可能となる“防食テープ”
など、新たな資源循環課題の解決にもつながる製品が挙げられます。

気候変動課題の解決に向けては、
・原料からの工程における温室効果ガス排出量を低減する製品:“プラント配管”
や、5G進化に向けて必要な機能向上を支える製品についても、低炭素、脱炭素要求の高まりを受けて、売上が拡大し、サステナビリティ貢献製品全体の売上高向上に寄与しています。

<製品による課題解決に対する貢献効果の定量化>
2022年度は、サステナビリティ貢献製品売上高の5割相当の製品による環境価値を把握しました。
また、社会資本へのリターン、価値に関しては、インパクト加重会計の手法を用いて経済価値換算を行い、検討を進めています。
見える化した製品・事業の環境および社会的価値(課題解決への貢献度)を活用して情報公開を行い、社会に対して啓発を行っていくとともに、事業にもフィードバックできる活動を強化していきます。

環境負荷の低減

GHG排出量:購入電力の再生可能エネルギー由来への転換などによる効果で削減が加速しました。
省エネルギー:生産量の回復によりエネルギー使用量の生産量原単位も削減となりました。

廃棄物発生量
国内:高機能樹脂製品の生産工程で発生する端材の原料戻しによる廃棄物発生量の削減を継続、生産量の回復により原単位も削減
海外:環境・ライフラインカンパニーの事業所で廃棄物発生量の削減を継続

今後は、生産工程で発生する廃棄物の削減のみならず、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、再生資源の利用促進や製品、廃棄物の再資源化の推進に取り組んでいきます。

環境の保全

SDGs貢献活動
事業所、あるいは従業員が中心となって実施している環境保全や次世代育成などの社会貢献活動については、従来の活動を継続しながらも、SDGsを意識するよう意識の転換を図ることを推奨しています。
どの社会課題の解決に焦点をあてるか、なぜその社会課題解決に取り組むのかをSDGsを軸に考えることで、従来活動の意義が明確になり、活動の見直しやさらなる効果の向上が期待できると考えています。

統合指標「SEKISUI環境サステナブルインデックス」

自然・社会資本へのリターン率

統合指標「SEKISUI環境サステナブルインデックス」

SEKISUI環境サステナブルインデックスは、積水化学グループの企業活動が環境に与える負荷(自然・社会資本の利用)と環境への貢献の度合い(自然・社会資本へのリターン)をひとつの指標で表したものです。
自然資本のみならず社会資本への影響やリターンに関しても、徐々に対象範囲を拡大してその認識を広げてきました。
環境中期計画における重要実施項目である各種環境負荷低減、自然・社会環境に貢献する製品・サービスの拡大、環境の保全などの項目による効果をこの指標で統合化し、2013年度に手法を確立し、2014年度から試算を行っています。2017年度からは、このインデックスを、会社の環境経営全体の進捗をモニターする指標として活用しています。
2020年度からの環境中期計画において、SEKISUI環境サステナブルインデックスとしては、自然環境のみならず社会環境への負荷や貢献を評価し、自然資本および社会資本へのリターンに貢献していくことを宣言しています。
2050年には、業容を拡大していく中でも、自然資本に加えて社会資本に対し、100%以上のリターンを維持しながらESG経営を推進していきます。

算出の結果

2022年度の実績を用いたSEKISUI 環境サステナブルインデックスの計算結果は、自然・社会資本の利用(自然・社会環境への負荷)を100とすると、自然・社会資本のリターン(自然・社会環境への貢献)は127.3%となりました(2021年度117.7%から9.6pt向上)。

リターン率の推移については以下のように分析しています。

  • (1)
    自然・社会資本の利用(負荷)について
    購入電力の再生可能エネルギー転換が進んだことで、影響量の削減が進んだと考えられる。
  • (2)
    自然・社会資本のリターン(貢献)について
    サステナビリティ貢献製品によるリターン(貢献)は着実に増加傾向にある。一方で環境保全活動については、事業所における新型コロナウイルスの感染対策などの方針により、活動の実施や内容が制限されてきたが、徐々に活動が可能な状況となり、貢献は増加している。

今後は、企業として成長し、業容を拡大していく一方で、自然・社会資本へのリターンにおいて100%以上を持続していきます。そして、2050年には地球上の自然資本および、地球上の人間社会において生み出された社会資本の持続的な利用の実現を目指します。

このインデックスにおいて、製品による課題解決を進めることは地球および社会のサステナビリティ向上に貢献し、自然・社会資本へのリターンを向上させていくことは積水化学グループおよび製品のサステナビリティ向上につながると考えています。

  • 11-05

上述の(1)で元となるデータを収集した後、(2)(3)の段階では、早稲田大学 伊坪教授らによって開発された日本版被害算定型影響評価手法「LIME2」を用いて計算を実施しています。
リターン率の算出に使用しているLIME2を用いた計算システム“MiLCA”において、引用しているLCAデータベースIDEAver2.3からver3.1へと更新されたことにともない、次期中期計画からはバージョンアップしたMiLCA3.1を活用していきます。
MiLCA3.1では、把握されたデータをもとに、特に化学物質による生体系影響などを中心に単位量あたりの環境インパクトが大きくなっています。2023年度始動の中期計画からは、生物多様性側面への影響についてこれまで以上に重要視し、ネガティブからポジティブになるように活動をを進めていきます。このような当社の考え方とMiLCAの更新の方向性は同じと判断し、2023年度以降は更新された計算システムを活用することで、現状の再確認を行い、リターン率を活用した環境課題への取り組みの進捗確認を継続します。

  • この考え方により、再計算を行うと
    2022年度の自然資本・社会資本へのリターン率 127.3%(MiLCAver2.1使用)
    2022年度の自然資本・社会資本へのリターン率 97.6%(MiLCAver3.1使用)
    となります。
指標 算定方法
SEKISUI環境サステナブル
インデックス
SEKISUI環境サステナブルインデックス=グループ全体の自然・社会資本のリターン量/グループ全体の自然・社会資本の利用量
自然・社会資本の利用量、自然・社会資本のリターン量 の算出
LIME2(早稲田大学伊坪教授らにより開発された日本版被害算定型影響評価手法)を用い、LIME2の定める4つの保護対象すべてを対象とし、「人間健康(地球温暖化の影響含)」「社会資産(地球温暖化の影響含)」「植物への影響(生長阻害の軽減)」「生物への影響(生物絶滅の抑制)」ごとに影響評価し、単一指標化
自然・社会資本のリターン量は、グループ全体の各種環境貢献の取り組みによって、取り組みを行わなかった場合と比べて自然資本への被害のリスクが低減したとして算出
  • 自然・社会資本の利用量に算入した項目
    • 直接的な利用:
      土地利用、温室効果ガス、PRTR物質と大気汚染物質の大気排出量、水域排出のCOD量
    • 間接的な利用:
      購入原材料※1、エネルギー使用、取水量、廃棄物排出量、サプライチェーンでの間接的GHG排出量(Scope3)
  • 自然・社会資本のリターンに算入した項目
    サステナビリティ貢献製品による自然資本利用削減貢献量、環境保全活動による貢献量、環境関連寄付、メガソーラー発電量
    • ※1
      2017年度までは、一般社団法人 産業環境管理協会のデータベース「MiLCA」を使用して、GHG排出量を含めた環境負荷を計算し、把握を行っていたが、2018年度からは、主要4樹脂(PP、PE、塩ビ、PVA)に関しては原料サプライヤーの実際のGHG排出量を反映している。

<<算定範囲/算定分類別で記載>>以下の想定条件で試算
  • ●原材料:
    購入原材料を対象とし、推定を含めて算入
    住宅に関しては、1棟あたりの構成原材料に生産棟数を乗じて算入
  • ●生産/有害化学物質の排出:
    <国内>排出量1t/年以上のPRTR対象物質を計上、<海外>含まず
  • ●生産/土地の維持:
    国内工場・研究所の敷地面積を使用し原則として建物用地として算入※2、海外工場の敷地面積は推定。土地利用の影響は土地購入後30年間として算入
  • 2 土地利用に関しては、2017年度より、日本国内で推進している「土地利用通信簿®」において、土地の質が向上したものは、土地利用による影響が軽減したものとみなして重み付けを行い算入
  • そのほか:
    サプライチェーンとして資本財、そのほか燃焼およびエネルギー関連活動、輸送・配送、廃棄物、出張、雇用者通勤、リース資産(下流)、販売した製品の加工、使用、廃棄
    • ・出張・雇用者通勤:
      連結の従業員を対象とし、一部推定を含む
    • ・販売した製品の使用:
      当該年度に販売の住宅を対象とし、今後60年間のエネルギー使用を想定して算入。2017年度までは太陽光発電によるGHG削減分を負荷低減分として計算していたが、2018年度からはZEH仕様の住宅において使用エネルギーが削減される効果も算入を行っている。
    • ・販売した製品の加工:
      エネルギー使用量が大きいと想定される製品の顧客による加工時のエネルギー使用を想定して算入
    • ・販売した製品の廃棄:
      当該年度の主要原材料を対象とし、それらが製品となり当該年度に廃棄されたと想定して算入
  • ●製品貢献:(1)
    該当製品と従来技術との環境貢献の差を、ライフサイクルごと(原材料調達、生産、流通、使用・維持、廃棄・リサイクルの5段階)に自然環境および社会環境に対する貢献をCO2削減・省エネルギー、廃棄物削減、省資源、節水・水循環、汚染の防止、 生物多様性の直接的保全、QOL向上などの対象別で定性評価を行い、有意な差が推定されるものに関して、製品単位あたりのデータを調査
  • (2)
    得られた調査結果※3をもとに、各データに応じて環境負荷を算出する係数を乗じて、製品単位ごとの環境貢献度を算出
  • (3)
    (2)の結果に製品の当該年度の販売実績を乗じて製品ごとの環境貢献度を算出し、結果を算入。サステナビリティ貢献製品の売上の52%に相当する製品の効果を試算
    ※3 カンパニーの個別基準に基づく
  • ●直接貢献/負荷低減活動による貢献:
    当該年度の生産に関わる環境影響を「2016年度の生産に関わる環境影響×(当該年度売上高/2016年度売上高)」と比較した差分を算入。売上高と生産に関わる環境影響は比例関係にあり、 その差分が活動による努力分との考えに基づく。
  • ●直接貢献/自然環境の保全:
    すべての活動内容に対しての参加人数と従事した時間を把握し、スギ植林した場合のCO2固定量(1.1t-CO2/人・hour)に人数・時間を乗じて算入。2017年度より、日本国内で推進している地域と連携した活動に関しては、地域連携、活動の自立(自主化)によって活動推進力の向上も目標にしていることから、この推進力の成長軸に対して重み付けを行い算入
  • ●直接貢献/寄付:
    保全のための支払い意思金額として、被害算定金額と同等とみなして算入
  • ●直接貢献/メガソーラー:
    発電量を創エネルギーとしてCO2換算して算入