イノベーション

戦略
(姿勢・考え方)

基本的な考え方

積水化学グループは、長期ビジョンのビジョンステートメントに「Innovation for the Earth」を掲げています。また、ビジョン実現のための重要なドライバーとして、イノベーションを重視しています。気候変動をはじめ、非常に難しくかつ喫緊の社会課題が山積する中、新たな課題解決手段を創出するイノベーションの重要性はますます高まっています。
現中期経営計画では、長期ビジョン「Vision 2030」に基づき、各事業ドメインにおいて既存事業のさらなる成長を目指す強化領域と、新たな事業基盤を創出する革新領域を定めて、それぞれの領域においてイノベーション強化を図っています。
また、事業ドメインをまたいだ事業機会の発掘や、技術の掛け合わせを定常的に検討する全社創発座談会を発足しました。これにより、全社総合力としてのイノベーション力強化に取り組んでいます。
イノベーションの源泉であるコア技術の強化については、全社で技術プラットフォームを定義し、中長期的な技術強化を進めています。同時に、社外との連携・オープンイノベーションに注力し、迅速に新たな価値を創出することで社会課題解決力を高めていきます。

ガバナンス

イノベーションの推進体制

積水化学グループは、イノベーションの源泉は積水化学が保有するコア技術にあるととらえています。その中でも特に競争力のある技術や強化すべき技術を技術プラットフォーム(TPF)として定義し、継続的に技術強化を進めています。TPFは中期経営計画ごとに見直しており、現中期経営計画においては26のTPFを定めています。また、各TPFの技術強化を牽引するリーダー人材をスペシャリティ職(S職)として任命する制度を設けています。S職はS1職からS4職までの4段階のグレードで構成されています。2023年度は全社で39名の技術者をS職として任命しました。S職は各TPFの継続的な技術強化を牽引するとともに、次の技術リーダーを育成する役割も担っています。

  • 05-45

イノベーションを生み出し、推進するための研究開発体制は、テーマの時間軸で2つに分かれています。顧客ニーズの獲得を発端とした研究開発テーマは、それぞれの事業環境に即して迅速な活動ができるよう各セグメントの研究所で取り組みます。
一方、中長期テーマはコーポレートが主管しています。研究開発テーマの初期探索・企画と基礎技術の確立はR&Dセンターが、事業化推進は新事業開発部が担い、事業として立ち上げた後は速やかにカンパニーへ移管できる仕組みにしています。各セグメントおよびコーポレートには独立した知的財産部門を設けています。各セグメントの知的財産部門と事業部門、研究開発部門とが常時連携することで、それぞれの事業領域の特性に基づき、競合他社に対する競争優位性をはかり、当社グループの事業の拡大・成長へとつなげています。

イノベーションの取り組み状況は、R&D委員会で定期的にモニタリングしています。経営トップを交えて、さらなるイノベーション強化に向けた議論を進めています。

  • 10-18

R&D委員会の目的

  • 次世代事業創出に関する全社R&D基本方針の策定
  • 次世代事業創出に関する全社R&Dテーマおよび実行計画の策定

研究開発・知的財産推進体制

リスク管理

不確実性に適切に対応するための情報収集・分析

イノベーションにおいては、中長期的な将来を想定した活動となるため、今後さらに高まるであろう不確実性に適切に対応しながら進めることが重要です。国内外の社会動向や技術動向など、積極的に社外の情報を入手し、想定される未来のシナリオを描出することが必要となります。
積水化学グループでは、内部のシンクタンク機関である積水インテグレーテッドリサーチが、幅広く国内外の情報を収集、分析することで、当社グループの事業環境変化や事業継続リスクについての調査を進めています。得られた知見を社内の関係部署に展開、共有し、具体的な対策検討にも貢献しています。

指標・目標

目標

積水化学グループは前中期経営計画において、強化領域におけるイノベーションの指標として、新製品や新プロジェクトの件数をKPIとして定めました。
現中期経営計画では革新領域におけるイノベーションのKPIとしてオープンイノベーションによる社外連携数を定めています。積極的な社外との連携活動により、2023年度は目標を上回る連携数を達成しています。引き続き長期ビジョンの実現に向け、強化領域、革新領域の両面でのイノベーション強化を進めていきます。

主な取り組み

社内外の技術融合

積水化学グループは、イノベーションを実現するためには社内の各部署や社外との連携が重要と考えています。この考えに基づき、社内外の技術連携を「融合」と表現して、積極的に取り組んでいます。
社内融合については、当社グループのR&Dセンターが社内の関係部署と連携して、「コア技術融合」「企画融合」「開発融合」の3つの観点から、各カンパニーとの融合を進めています。
コア技術融合については、R&Dセンターに一本化した基盤技術のひとつである情報科学において、マテリアルズインフォマティクスを用いたカンパニー開発テーマの支援を推進しており、着実に実績を積み上げています。
企画融合については、カンパニー企画部門とR&Dセンターの企画人材が連携することで、新たな開発テーマを創出することができました。さらなる企画融合に向けて、社内の技術交流イベントによる活性化を図っています。
開発融合については、コーポレートがカンパニー横断の開発テーマを支援する仕組みを通じて、融合の促進を図っています。
重要な開発テーマにおける社外との融合も積極的に進めています。当社グループが開発を進めているペロブスカイト太陽電池は、東京大学や立命館大学との連携により国の開発プロジェクトに採択されています。さらに東京都との共同実証も進めており、実用化に向けた開発を加速していく予定です。
また、カーボンリサイクル技術においても、世界最大級の製鉄企業であるArcelorMittal社とパートナーシップを締結し、製鉄時のCO2排出量削減に向けた取り組みを進めていくとともに、CO2有価物変換に向けたコスモエネルギーホールディングスとの共同検討にも取り組んでいます。

新事業創出に向けた仕掛け

当社グループは、「Vision 2030」で掲げる社会課題解決に寄与するイノベーションを起こし続けることをねらいとして、2021年、新事業開発部にイノベーション推進グループを設置しました。
イノベーション推進グループでは、新規事業の企画・創出、社内起業制度の設計と運営、イノベーション文化の醸成に取り組んでいます。2023年度には、起業家としてのスキルを磨くテーマの企画に専門家を伴走させてプロジェクトを動かす人材強化策として、社内起業制度を開始しました。100件の応募を目標としていたこの制度に対し、当社グループ全体から目標を上回る206件の応募がありました。事業化に挑戦したい人材が多いことに、手ごたえを感じています。また、水無瀬イノベーションセンターとも連携し、イノベーションが生まれるきっかけづくりとして、グループ内外の人材が多様な情報・知識に触れ、交流する場を提供しています。

パフォーマンス・データ
  • 09-01

研究開発費・研究開発費売上高比率