DX

戦略
(姿勢・考え方)

基本的な考え方

積水化学グループにとってのデジタル変革(DX)のミッションは、長期ビジョン実現のための成長戦略・構造改革を加速、下支えすることです。
当社グループは、外部環境の大きな変化を背景に、ガバナンスや労働力不足、経営データの分散、市場変化にともなう収益力低下という4つの危機感を持っています。これらを踏まえ、グローバル競争に勝ち抜くための「手段」として、DXに取り組んでいます。
当社グループのDXは、「ビジネスプロセス変革」を軸に、ガバナンス革新、ビジネスモデル変革の3つの変革を「見える化・標準化」「生産性向上」「高度化」の視点で進めています。これらの変革を下支えするITシステムや人材といった基盤強化も、併せて推進しています。

ガバナンス

DX全体像

積水化学グループでは、「ビジネスプロセス変革」として徹底的な標準化とデータを活用した生産性の向上を進めています。
長期ビジョン実現に向けてグループ・グローバルでの成長戦略と構造改革を加速するため、グローバル経営基盤、購買、営業・マーケティングの各領域において、さらなるデジタル展開と効果創出のフェーズにシフトチェンジしています。グローバル経営基盤の稼働や間接購買システムの展開によりガバナンスを強化するとともに、これまで仕込んできたDXテーマの効果創出を本格化していきます。
また、これらの実現を支えるため、デジタルツールやデータを駆使できる人材の育成とグローバルでのサイバーセキュリティ対応体制の確立を図っています。

  • 06-01
  • 「見える化・標準化」:業務標準化、グローバル経営基盤導入、インフラ・ネットワーク刷新

DX推進体制

  • 10-01
リスク管理

リスク認識と対応体制

積水化学グループにおけるDXの遅延や停滞は、ますます高度化するガバナンスなどの社会要請への対応が遅れるリスクにつながります。また、現在の人手に頼った業務のやり方が継続する恐れもあります。
このため、サステナビリティ委員会の下に、デジタル変革推進部担当役員を委員長とした「DX分科会」を設置し、経営の観点からデジタル変革の進捗状況のモニタリングや対応策の判断を行っています。
また、DXの推進においては、情報システムやデータの活用が不可欠であるため、情報管理に係るリスクへの対応が重要になります。当社グループでは、サイバーセキュリティ対応体制としてCSIRTを設置しており、あわせて従業員への啓発活動やインシデント訓練なども実施しています。

指標・目標

目標

主要実施策 管理指標 現中期最終年度(2025年度)
目標
2023年度実績
グローバル経営基盤の革新 グローバル標準の業務・システムモデル構築に向けた開発状況と展開進捗 グローバル経営基盤の刷新・展開開始、目指す業務変革の具現化(導入拠点) 対象ビジネスプロセスの開発完了・テスト結果に基づきロードマップ見直し、グローバル展開に向けた要件定義完了・設計中
グローバル間接購買の改革 間接材購買で目指す施策の進行状況(展開・活用計画) 集中購買による有利購買の実現、海外展開着手 間接購買システムの国内主要拠点への展開完了、利用定着による効果発現開始
営業・マーケティング
業務の高度化・効率化
営業・マーケティング改革で目指す施策の進行状況
(カバー率・工数シフト)
データに基づく営業活動定着と顧客管理強化によるトップライン向上 営業データ活用による新業務プロセスの定着、外部データ利用の検証
DX人材の育成 デジタルツールやデータを活用して効果を出す人材の確保に向けた施策の進行状況 DX推進人材の継続的な確保 デジタルで業務課題解決を行う実践講座の開講によりコア人材育成
デジタルによる多様な働き方の実現 ニューノーマルな働き方の定着とグローバルコミュニケーション強化に向けた施策の進捗と利用状況 グローバルコミュニケーション基盤の提供と標準端末の海外展開 利用クラウドサービスへの統合認証基盤の展開、グローバルコミュニケーション基盤の国内提供と一部海外拠点への先行導入、標準端末の調達スキーム策定
主な取り組み

グローバル経営基盤

グローバルに成長していく積水化学グループの戦略を支えるため、経営基盤となる基幹システム(グローバルERP)の刷新を図っています。これにより、以下の実現を目指します。

  • グローバル連結利益の最大化に向けた意思決定に必要なデータの可視化・分析
  • 業務標準化・効率化による間接業務の生産性向上
  • グローバルでの業務標準化と可視化によるガバナンス(内部統制)向上とリスク極小化

2023年度は対象ビジネスプロセスの開発を完了し、稼働テスト結果に基づき展開ロードマップの見直しを行いました。また、グローバル展開に向けた要件定義と設計も進めました。今後、本番稼働の準備を進めるとともに、展開に向けた調整を行っていきます。

  • ERP:Enterprise Resources Planning の略。企業の会計や人事、生産業務や販売業務などの基幹となる業務を統合し、一元的に管理するシステム。

購買

グローバル購買改革として、システムを使った購買業務の標準化と取引データの可視化に取り組んでいます。
グローバルな取引を可視化することで、不正行為の抑止や早期発見が可能となります。また、全体最適購買を実現することにより、購買力の向上や調達コスト削減を実現します。さらに、システム導入により低付加価値業務を極小化し、継続的にコスト削減できる仕組みや基盤の定着も図ります。
2023年は間接購買システムの国内主要拠点への導入を完了し、利用定着の取り組みを行いました。また、蓄積されたデータの活用による調達コスト削減や集約化による交渉力と管理・統制の強化も進めています。

営業・マーケティング

当社グループでは、営業・マーケティングに関わる業務の標準化・自動化による徹底的な効率化・生産性向上と、営業データの活用によるトップラインの向上を目指しています。
営業・マーケティングに関わる業務には、各カンパニーで用いるシステムが異なっている、属人化した部分が多いなどの問題が発生していました。これらの問題に対し、業務プロセスをより効果的に行うことで、お客様により良い価値提供ができるよう、価値業務へのシフトに取り組んでいます。
2023年度は、顧客取引状況の可視化を進めるとともに、外部データの活用を含め、データ分析による営業プロセスの強化の取り組みを拡大しています。
また、DXの取り組みに必要不可欠な営業データのさらなる情報セキュリティ対策も推進しています。

DX人材

業務の大幅な生産性向上のためには、デジタル技術とデータ活用により業務の標準化や自動化、効率化を進めることが重要です。当社グループでは、DXを加速するため、デジタルを使って業務課題を解決し、その活動を現場で広めていく、いわゆるDX人材の育成も進めています。
2023年度は業務課題の解決をゴールとした5つの実践講座を開設しました。デジタルツールの座学と業務課題を解決する実習によりデジタルスキルを高め、DXの効果を実感したコア人材が現場にてさらにDX活動を進めていきます。

多様な働き方

当社グループでは多様な働き方を実現するため、事務所以外の場所(自宅・外出先など)から社内の業務システムを活用して業務を行う働き方、『リモートワーク』を推進しています。また、グローバルでの長期成長に向けてグローバルコミュニケーションの強化を図っています。
2023年度は急速に導入が進むクラウドサービスを安全・安心に活用するための『統合認証基盤』のさらなる展開と、グローバルで利用可能なコミュニケーション基盤や端末への移行を開始しました。
これらの仕組みにより、在宅勤務をはじめとしたさまざまな働き方における業務の生産性と情報セキュリティの確保を両立することができました。引き続き、グループ・グローバルでの安全かつタイムリーな情報共有を実現していきます。

デジタルサイエンスによる素材開発の高速化

当社グループでは、新素材開発を取り巻く環境変化(製品寿命の短期化、資源の制約、素材への要求多様化と研究開発加速の両立)に対応するため、マテリアルズインフォマティクス(MI)の活用を推進しています。当社グループのMIの特徴は、計算科学、画像解析、評価分析、システム設計力などの情報科学技術の融合を強みとしていることです。
現在、MIによる複数の開発テーマが進行しています。具体的には、化学業界の中でも速いペースでのフィルム製品の配合設計の検討や、電子材料テープの接着剤開発にかかる期間の大幅な短縮などの成果があがっています。
今後は、素材開発の加速と合わせて、長期ビジョンにおける革新領域への展開を加速させます。デジタルの力を用いた価値創造領域を拡大させることで、当社グループの持続的な成長の原動力とします。