安全
積水化学グループでは、現中期経営計画において、「監査の仕組み再構築」「グローバル設備設計基準の明確化」「拠点の地力アップ」「デジタル技術の積極活用」を軸に、安全管理活動を推進してきました。
活動の成果として、国内生産事業場安全監査における設備本質安全化に関する指摘を、その翌年度内に改善する活動が定着しました。また、国内施工現場における安全キーパーソンの活動によって、労災件数(特に墜落・転落)は減少し、国内外における重大な設備災害(火災・爆発)の発生はありませんでした。
一方で得られた課題は、今後の生産事業場自身での設備起因労災リスクの発掘やその手法・範囲の見直し、施工現場におけるルール逸脱行動を抑止するための見守りカメラによる自動検知技術の開発、年々厳しくなる夏季暑熱環境における熱中症対策、海外事業場における設備本質安全化とそれを推進する人材の育成などです。
一人ひとりが危険を危険と判断できる人材に
当社グループでは、従業員が安全に安心して働くことができる職場づくりは、企業としての責任であり経営における最重要課題のひとつであると考えています。この考えのもと、①~⑤の5つのテーマを柱とするトータルセーフティー活動(労働災害ゼロ、設備災害ゼロ、通勤災害ゼロ、疾病長欠ゼロ)に取り組んでいます。しかし、いくら会社が安全安心な環境を整えても、そこで働く従業員一人ひとりが「自分の身は自分で守る」ことをしなければ、事故を防ぐことはできません。最後は各個人の安全行動がなくては、安全は成り立たないのです。そのため、安全教育や危険への感受性を高めるための取り組みとともに、「定めたルールを守り、守らせる」風土づくりにも力を入れています。
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①OHSMSによる「安全管理」
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②設備本質安全化※
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③従業員の「安全教育」
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④リスクアセスメントなどの「リスク管理」
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⑤上記の活動状況を評価する「安全監査・防災監査」
- 当社グループが推進する「機械安全」活動の名称。生産設備の不安全箇所に対し本質的安全設計方策および安全防護による改善を推進している。
- 06-10
現中期経営計画では、重大インシデント発生による企業価値毀損を防ぐことを目的として、「死亡労災事故発生件数ゼロ」をKPIに掲げ、安全活動を推進してきました。その結果、死亡労災事故発生件数は1件(2020年度)でした。主要実施策の結果は以下の通りです。
主要実施策 | 管理指標 | 現中期最終年度(2022年度) 目標 |
2022年度実績 |
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安全監査、相互巡視、 現場リスクアセスメントによる 指摘と着実な改善 |
設備起因 災害発生件数 |
0件 | 4件 |
労働安全の基本理念として、「積水化学グループ 安全方針」を制定し、全従業員と共有しています。
労働安全衛生に関する取り組みは、サステナビリティ委員会の下に設置した「安全分科会」において方針や活動指針を策定し、生産基盤強化センター安全環境グループの主導のもと、各事業場が実働、推進しています。
当社グループの労働安全衛生に関する各種データを、生産・施工現場での作業中や研究活動で発生したもののほか、グループ外の協力会社を含めて集計しています。
2022年度の安全分科会は、10月と3月の計2回、オンラインで開催しました。
実際に労働災害が発生したさいには、被災者の雇用形態を含めて情報を収集し、事業場における管理に問題があれば必要な改善を求めていきます。
当社グループでは、事業場ごとにISO45001認証の要否を判断し取得または取得活動を推進しています。認証を取得しない事業場もISOやOHSASの要求事項を反映した安全衛生マネジメントシステムを構築・運用しています。安全監査・防災監査を通じて活動状況のモニタリングを行い、安全管理活動の維持・活性化を促しています。
【外部認証(ISO45001)を受けている事業場】
- 積水化学工業株式会社 滋賀栗東工場
- 積水化学工業株式会社 滋賀水口工場
- 積水化学工業株式会社 多賀工場
- 千葉積水工業株式会社
- 四国積水工業株式会社
- 徳山積水工業株式会社
積水化学グループの国内の全生産事業所数に対し、ISO45001の認証取得事業所の割合は13%です。
- 09-02
安全 推進体制
安全衛生委員会の開催
当社グループの各事業場においては、事業場単位で法定の「安全衛生委員会」を開催し、労働安全衛生について労使間で災害調査、対策立案などを行っています。
グループ全体での労使間の会議体として、2019年度まで本社にて「中央安全衛生委員会」を開催していました。2020年度以降は新型コロナウイルス感染の影響などにより対面の会議の開催を控えていましたが、2022年度から「中央安全委員会」として再開し、労使間で安全活動の課題・対策を議論しています。
各部門トップによる「私の安全行動宣言」の発表
安全活動では、各事業場のトップがリーダーシップを発揮し率先垂範することが最も重要であるという認識のもと、社長をはじめ各部門のトップが自筆の「私の安全行動宣言」を毎年度発表し、イントラネットに公開しています。
- 09-03
イントラネットに掲載した「私の安全行動宣言」
安全監査の実施
労働安全衛生マネジメントシステム評価項目を整備し、各事業場での自己評価およびコーポレートによる安全監査の評価に活用しています。全社的な安全管理活動上の課題を勘案し、毎年評価項目を見直しています。
2022年度は2021年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から一部の事業場ではオンラインによるリモート監査を行い、当初の計画通り国内17事業場を対象に安全監査を実施しました。
リモート監査における書類審査は対面での実施とほぼ同等に進行できましたが、現場巡視はウェアラブルカメラを装着した現場のスタッフと遠隔地にいる監査員とのコミュニケーションに時間がかかり、通常の巡視よりも多くの時間が必要でした。今後、目的や状況に合わせたより適切な安全監査を実施できるよう、改善を続けていきます。
労働安全アセスメントの実施
当社グループでは、「安全管理規則」第14条で、新規事業などを立ち上げるさいに、当該事業部長の責任で労働安全に関する総合的な事前評価を行うように定めており、この安全規則に基づいて事業を立ち上げるカンパニーがアセスメントを実施しています。
海外事業場においては、地域・国・州により法令規制が異なるため、外部コンサルタント(地域法令有識者)による監査により、法令順守状況を確認しています。
健康診断の実施
従業員に対する健康診断については、ハイリスク者に関する就業判定ガイドライン(健康管理責任者向け)によるハイリスク者健康診断結果に基づき、措置を講じています。また、各事業場にて以下の法定健康診断を実施していることを安全監査等で確認しています。
- 特殊健康診断
- 特定業務従事者健康診断
安全活動を率先する人材の育成
当社グループでは、安全活動を強化するため、各事業場で安全管理者を補佐し安全管理活動を推進する人材の資格として、セーフティリーダー(SL)認定制度を構築し、2017年度より推進しています。
2022年度には35人(2017年度からの累計157人)の「セーフティリーダー(SL)」が認定されました。各自が所属する事業場でリスク発掘・改善を進めるとともに、当社グループ内のSLが集結して研鑽会を開催し、安全教育内容の充実や好事例の展開を進めています。
また、2017年度より機械安全活動を推進する「セーフティサブアセッサー(SSA)※」資格取得支援を継続、2023年3月現在197人が取得しています。さらに、SSAの上位資格である「セーフティアセッサー(SA)※」資格も23人が取得、「セーフティシニアアセッサ(SEA)※」資格も1名が取得しています。
- 日本認証(株)による国際安全規格に基づく機械安全の知識能力を認証する安全資格
新設備安全設計基準
当社グループで使用する生産設備に必要な安全仕様を示した「新設備安全設計基準」は設備本質安全化※1活動のスタートとともに、機械安全のISO/JIS規格を反映させた内容に刷新し、生産設備改善のための重要な文書となっています。 文書としてもISO/IECガイド51にならって体系化を図り、A基準:基本安全基準、B基準:共通安全基準、C基準:個別安全基準で構成されています。 2020年には、SSA※2資格者12人で構成された改定委員会を発足。 年1回の内容改定を目標として活動し、内容のブラッシュアップを行っています。
- 積水化学グループが推進する「機械安全」活動の名称。生産設備の不安全箇所に対し本質的安全設計方策および安全防護による改善を推進している。
- 日本認証(株)による国際安全規格に基づく機械安全の知識能力を認証する安全資格
相互巡視によるリスク発掘機会の増加・好事例の展開
2021年度より、各カンパニーの技術・CS部が主体となり、異なる製造拠点間の従業員が、互いの拠点のリスクを発掘し合う相互巡視の取り組みを開始しました。従来の安全/防災/環境監査では、3年に1回の実施で頻繁な監査ができず、また他事業場の好事例を水平展開するのが困難でした。
相互巡視では、巡視に参加する従業員のリスクへの気づき・感受性を向上するとともに、巡視を受ける現場リーダーなどが他事業場から学ぶことができ、自事業場のリスクの再認識と好事例の速やかな水平展開がしやすくなりました。
また、各事業場の安全担当者には、自らリスクを発掘するための指針として、安全環境グループが作成した「現場リスク抽出ハンドブック」を配布しています。
- 06-05
緊急事態対応スキルの向上
当社グループでは、リスクが高く特に予防に注力すべき災害として、生産事業場における「挟まれ・巻き込まれ」、施工現場における「墜落・転落」、化学プロセスにおける「火災・爆発」を設定しています。
化学プロセスを製造の軸とする工程では、「頭上訓練」を実施しています。「頭上訓練」とは、トラブルに遭遇したさいの従業員一人ひとりの判断力を鍛えるための訓練です。具体的には、現場で長年勤務している指導担当者が「想定していた危険回避のための装置が機能しなかったらどうする?」などの質問を投げかけ、訓練を受ける側は対処法を頭の中で考え回答します。このように現場レベルで長年培った安全ノウハウを後進に伝えることで、災害発生時の想定外事態対応のスキルを向上しています。
また、訓練を通して設備的対策の改善や、作業手順書の見直しも進めています。この訓練は、トラブル処置以外にも避難訓練や防災訓練などさまざまな機会に応用しています。
「安全基本原則」の浸透
当社グループでは、設備本質安全化※活動により生産設備に起因する労働災害を防止する一方、働く人の行動に起因する労働災害の防止にも取り組んでいます。グループ内の事業場で実際に発生した過去の労働災害から得られた教訓をもとに、作業時の遵守事項・禁止事項を作業工程ごとに6項目にまとめた「安全基本原則」を制定し、運用しています。
この原則を速やかにグループ内に浸透させるため、イラストを交えて分かりやすく示したポスターを作成し、国内外の各事業場に配布しました。
- 当社グループが推進する「機械安全」活動の名称。生産設備の不安全箇所に対し本質的安全設計方策および安全防護による改善を推進している。
- 09-10
「火気使用工事6原則」ポスター(タイ語版)
火災・爆発防止対策
ひとたび起こると周囲の環境や事業の継続に大きな影響を与える火災・爆発災害を防止するため、安全監査を行うさいに外部の防災専門家を迎えて、「防災監査」を実施しています。
「危険物の保管・取扱状況」「自然災害などの被災時の復旧体制」などを確認し、災害リスクを早期に発見し、未然防止対策を進めています。2022年度は14事業場で実施し、298件の指摘がありました。指摘については、各事業場にて改善を進めています。
- 09-07
監査の種類 | 監査の対象・ねらい |
---|---|
安全監査 |
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防災監査 | 主に事業継続に関わる災害防止対策を監査
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海外事業場安全監査
法規制や文化が異なる海外の生産事業所において安全活動レベルを底上げするために、安全に関するグローバル基準を定め、展開しています。
2022年度は2021年度に引き続き、事業場内の映像をリアルタイムで確認しながら16事業場で遠隔での現場巡視を実施しました。また、当社グループに新規参入した事業場に絞り込んで当社評価基準に基づく労働安全衛生マネジメント審査を実施しました。
安全表彰
毎年「積水化学グループ安全大会」を開催しています。
2022年度は社長による表彰、安全成績優秀事業場による事例発表などをオンライン形式で5月27日に開催しました。
サプライチェーンにおける安全管理
住宅カンパニーでは、住宅の現地施工に関わる協力会社従業員の安全を確保するため、協力会社と「セキスイハイム協力会」を組織し、定期的な会議などを開催しています。会議では、当社グループの安全方針の共有、安全教育会、労働安全に関する各種の研修機会の提供などを行っています。
緊急時に備えた訓練
各事業所では、緊急事態が発生したときの環境汚染の予防および拡大防止のため、事業所の特性に合わせて、さまざまなケースを想定した緊急時の処置・通報訓練を年1回以上の頻度で実施しています。
積水メディカル株式会社の創薬支援センター実験棟における
放射性物質を含む廃水の漏えいについて
2022年8月4日、積水メディカル株式会社創薬支援センター(茨城県那珂郡東海村)敷地内の建物解体工事中にRI(放射性物質)排水管の破断を発見し、その破断部周辺の土壌から微量の放射能が検出されました。このような事案に備え以前より自治体と共同で訓練を実施しており、本事案についても定められた手順に従い、迅速な原子力規制庁、自治体などへの連絡、プレス発表、周辺地域からの問合せ応対を適切に実施しました。本事象による人体および環境への影響はないと判断しております。
環境関連の苦情・事故
分類 | 件数 | 内容 | |
---|---|---|---|
事故 | 火災 | 0 | - |
漏洩 | 1 | 敷地内建物解体工事中に床下配管破断部の周辺土壌から微量の放射能を検出(上記参照) | |
苦情 | 0 | - |
安全成績
国内
集計範囲:国内47生産事業所、5研究所
- 09-11
- 09-12
-
労働災害発生件数
指標 算定方法 労働災害発生件数 当該年度(4月~翌年3月)に発生した労働災害(休業災害・不休災害)の件数 -
重大設備事故発生件数
指標 算定方法 重大設備事故発生件数 当該年度(4月~翌年3月)に発生した下記の①~③のいずれかひとつ以上の項目(積水化学グループ基準)を満たす設備に関する不具合事象(火災・漏えいなど)の件数 -
①人的被害:損失日数30日以上の休業災害
-
②物的被害:10百万円以上
-
③機会損失:20百万円以上
-
- 09-15
- 09-16
-
疾病長欠件数
指標 算定方法 疾病長欠件数 当該年度(4月~翌年3月)に国内生産事業場・研究所で発生した疾病や怪我で暦日30日以上休業したもので、新たに発生したものをいう。出勤開始後6ヶ月以内の再発はカウントしない。ただし、労働災害が原因の場合は労働災害としてカウントし、疾病長欠としない -
通勤災害発生件数
指標 算定方法 通勤災害発生件数 当該年度(4月~翌年3月)に、国内生産事業場・研究所で発生した通勤中の災害件数。加害・被害・自損・事故をカウントする。歩行中の事故を含む
- 09-19
- 09-20
-
度数率の推移
全国製造業データ出所:厚生労働省「労働災害動向調査」
指標 算定方法 度数率 当該年度(4月~翌年3月)の総労働時間1,000,000時間あたりの休業災害死傷者数。計算式:(休業災害死傷者数/総労働時間)×1,000,000 -
強度率の推移
全国製造業データ出所:厚生労働省「労働災害動向調査」
指標 算定方法 強度率 当該年度(4月~翌年3月)の総労働時間1,000時間あたりの労働損失日数。計算式:(労働損失日数/総労働時間)×1,000
- 09-23
- 09-24
-
休業をともなう災害発生率(LTIFR)
指標 算定方法 休業をともなう災害発生率 (休業災害発生件数/総労働時間)×1,000,000 -
業務上疾病発生率(OIFR)
指標 算定方法 業務上疾病発生率 (業務上疾病発生件数/総労働時間)×1,000,000 -
業務上疾病:熱中症、腰痛、化学物質中毒など、厚生労働省が定義する業務上疾病。
-
- 09-27
- 09-28
-
住宅カンパニー施工現場における安全成績
指標 算定方法 住宅カンパニー施工現場における安全成績 住宅カンパニー管轄施工事業場において当該年度(4月~翌年3月)に発生した労働災害(休業災害・不休災害)の件数 -
環境・ライフラインカンパニー施工現場における安全成績
指標 算定方法 環境・ライフラインカンパニー施工現場における安全成績 環境・ライフラインカンパニー管轄施工事業場において当該年度(4月~翌年3月)に発生した労働災害(休業災害・不休災害)の件数
海外
集計範囲:海外47生産事業場
- 09-31
-
労働災害発生件数
指標 算定方法 海外生産事業場、研究所における労働災害発生状況 当該年度(4月~翌年3月)に海外生産事業場、研究所で発生した労働災害(休業災害・不休災害)の件数
国内、海外
-
集計範囲:国内47生産事業場、5研究所、31施工事業場
海外47生産事業場、2施工事業場
労働災害による死亡者の発生状況
2018 年度 |
2019 年度 |
2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
||
---|---|---|---|---|---|---|
社員 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
国内 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
海外 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
協力会社 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | |
国内 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | |
海外 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
合計 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
安全衛生・防災コスト
集計範囲:国内46生産事業場、5研究所、コーポレート各部署、カンパニー間接部署
防災コスト(2022年度)
項目 | 積水化学グループ | ||
---|---|---|---|
分類 | 内容 | 費用額 | 投資額 |
1)事業場エリア内コスト | 安全衛生対策、救護・保護具関係、作業環境測定、健康管理、労災保険など | 1,406 | 3,384 |
2)管理活動コスト | OHSMS構築・運用、安全教育、人件費など | 2,262 | - |
3)その他 | 安全表彰金など | 9 | - |
合計 | 3,676 | 3,384 |
- 09-35
- 09-36
-
費用額・投資額の推移
指標 算定方法 費用額 当該年度(4月~翌年3月)の安全衛生・防災活動にともなってって発生した費用 投資額 当該年度(4月~翌年3月)に承認された安全衛生・防災関連の投資金額 - 2021年度より、事業場エリア内コストに保全(生産・物流・受変電設備管理)コストを追加して集計
-
損失コストの推移
指標 算定方法 損失コスト 当該年度(4月~翌年3月)に発生した労働災害・設備災害・通勤災害・疾病長欠発生時の対応費用および工数分費用