ESG経営を支える基盤
事業活動の影響を受けるすべての人びとの人権を尊重
積水化学グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を擁護することを責務として認識しています。
また昨今、国内外で人権に関する法制化・ルール化が進み、人権問題に対する社会からの注目度が高まっている中、持続可能な経営基盤を強化するためには、グループ従業員に限らず、ビジネスパートナーを含む多方面のステークホルダーの人権尊重に取り組むことが必要であると考えています。人権課題の特定など、人権デューデリジェンスを実施する際には、独立した外部からの人権に関する専門知識を活用し、ステークホルダーとの対話と協議を真摯に行います。
積水化学グループ「人権方針」の理解・浸透
積水化学グループは2019年5月に「人権方針」を策定しました。この方針は国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、グループ外のバリューチェーンを含む幅広い領域にわたる人権の尊重を謳っていることが特徴です。
方針内に記載の人権デューデリジェンスや教育に関する取り組みにつき、2021年度は対象を拡大して実施しました。今後も、グループの全従業員およびサプライヤーなどビジネスパートナーに対して、本方針の理解・浸透を図っていきます。
積水化学グループ「人権方針」は以下をご覧ください。
英国現代奴隷法への対応
積水化学グループは、英国で施行された2015年英国現代奴隷法第54条第1項に基づき、自らおよびそのサプライチェーンにおける奴隷労働その他の隷属状態下での労働ならびに人身取引を防止すべく取り組んでいる内容について、取締役会で決議した声明を開示しています。
英国以外の国・地域の人権に関する法規制についても、当社グループが適用対象となるものに関しては、適宜対応を行っていきます。
「Myじんけん宣言プロジェクト」への賛同
積水化学グループは2021年9月に、法務省が推進する「Myじんけん宣言プロジェクト」に賛同し、「Myじんけん宣言」を公表しました。
「Myじんけん宣言」とは、企業、団体及び個人が、人権を尊重する行動をとることを宣言することによって、誰もが人権を尊重し合う社会の実現を目指す取り組みです。
積水化学グループは以下の「Myじんけん宣言」を表明しています。
『積水化学グループはLIFE(くらし、生命、ライフライン)の基盤を支え、あらゆる世代に「未来につづく安心」を創造するという長期ビジョンをかかげています。サステナブルな社会の実現に貢献していくために、当社グループの影響下にあるすべての人々の人権を尊重し、グローバルで人権侵害を防止、軽減する仕組みを構築していきます。』
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積水化学グループの「Myじんけん宣言」を掲げる当社社長
人権デューデリジェンス※1の仕組み構築に向けた取り組み
積水化学グループは2018年11月より、人権デューデリジェンスの仕組み構築に向けた取り組みを開始しました。2020年度までに実施した取り組みは以下の通りです。
- 2018-2019年度:専門機関(Verisk Maplecroft社※2)に依頼し、主要事業における潜在的な人権リスク分析およびその結果にもとづいた社内ヒアリングを実施。
- 2020年度:国内生産事業所における人権インタビューを実施。
2021年度は、新たにアンケート形式で、当社グループが所在する全エリアのマネジメント層および選定された事業所の、間接雇用を含む一般従業員に対して、人権リスクアセスメントを実施しました。
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※1人権デューデリジェンス:自社の事業活動において、人権に負の影響を与える可能性(人権リスク)がないかを分析・評価して特定し、もし可能性があれば、その影響を防止または軽減するための仕組みをつくり、対処する継続的なプロセス
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※2人権・経済・環境リスクについての世界的視野と知見を有するリスク分析・リサーチ企業
国内生産事業所にて人権インタビューを実施
一般的に日本国内の外国人労働者の労働環境に関する人権リスクの高さについて、頻繁に国内外から指摘されていることから、2020年12月、当社グループの国内生産事業所のうち、比較的外国籍従業員が多い以下の事業所に対して、労働環境を確認するための従業員インタビューを行いました。
- 対象
1)環境・ライフラインカンパニー東日本積水工業で勤務する外国籍従業員(契約社員および派遣社員含む)
2)上記外国籍従業員の人事労務管理担当者 - 実施方法
当初は対面でのインタビューを予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から事業所への出張は取りやめ、リモートでのインタビューを実施。経済人コー円卓会議日本委員会※が、1~4名のグループに分かれた従業員に対して各1時間ほどのインタビューを行いました。 - 結果
大きな人権リスクは見受けられなかったものの、工場内での案内、告知文の多言語化の必要性など、改善すべき課題が抽出されたため、東日本積水工業に対して、フィードバック報告会を実施しました。
今後は課題の対処に関する追跡評価などを行うとともに、2021年度に実施したリスクアセスメントによって潜在的な人権リスクが確認された事業所に対してもインタビューを実施する予定です。現場の生の声を継続的に確認することで、人権リスクの特定・軽減を進めていきます。
- 企業のサプライチェーン内の人権リスクを低減する取り組みに対する支援実績が豊富であり、国内外のさまざまなCSRイニシアチブ団体とのネットワークを有する特定非営利活動法人
グローバルで網羅的な人権リスクアセスメントを実施
2021年度は、グローバルで、ジョイントベンチャーを含む当社グループ会社と場内委託会社を対象とした人権リスクアセスメントを実施しました。
- 実施方法:アンケート形式(マネジメント層向けと一般従業員向けの2種類)
- 対象者:
当社グループが所在する全エリア(北中米、欧州、アジア、オーストラリア)のマネジメント層
2018年に実施した潜在的人権リスク分析および有識者ダイアログの結果、リスクが高いとされたタイ、中国、インドの一般従業員および日本国内の外国籍従業員(一般従業員、外国籍従業員共に間接雇用者を含む) - 狙い:
網羅的に調査を実施し、マネジメント層および一般従業員層の両方の意見を集約することで、優先的に取り組む人権テーマを選定すること
アセスメントの結果、今回の調査範囲では危機的・即時的対応を要する人権問題は発見されなかったものの、さらなる状況調査が必要とされる優先的人権課題として、外国籍従業員の就労環境、適正賃金、宗教的な慣習の尊重、採用や昇進時の不公平感が抽出されました。
上記の課題が抽出された各拠点に対しては、個別に状況確認を行い、是正対応も行っていきます。
また、人権リスク顕在化未然防止のために、グループ全体でマネジメントを強化するべき課題として、以下が抽出されました。
- 人権方針の周知・徹底と人権教育・啓発
- サプライヤーへの社会面、環境面の取り組み要請や支援等の働き掛け
- 苦情処理メカニズム
こうした全社的な課題に対して組織横断的に対応するために、取締役人事部長を部会長、コーポレート各専門部署長を会員とする人権部会を発足しました。
サプライチェーン全体で人権問題に配慮
すべてのお取引先に当社グループの人権尊重を含む調達方針をご理解いただくため、日本語のほか英語と中国語の翻訳版を作成、日本語版と英語版をWebサイトに掲載するなど調達方針の多言語化を進めています。
今までは、直接のお取引先(1次)に対してCSR調達調査を実施してきましたが、2次・3次以降のサプライヤーを含むサプライチェーン全体に当社グループの方針が理解されるように、2021年度は調達ガイドライン「積水化学グループ 持続可能な調達ガイドライン(サプライヤー行動規範)」(以下本行動規範)を策定。社外有識者の意見を聞き、さらに国連グローバルコンパクト10原則、ビジネスと人権に関する指導原則、および積水化学人権方針に沿った調達ガイドラインです。お取引先には本行動規範を2次・3次サプライヤーにも展開するようお願いするとともに、本行動規範達成に向けた取り組みを当社とともに実施していただけるようガイドライン遵守の署名を求め、国内外における重要お取引先の約61%から同意を得ました。
取引先向けCSR調達アンケートの実施
調達方針に基づき、お取引先の人権配慮、環境保全や社会的責任に関する取り組み状況をアンケート調査で確認しています。
これまで積水化学本体、グループ会社、海外地域ごとにアンケート調査を行っていましたが、2021年度からは、グローバル共通施策の迅速な対応に向け、グローバル一斉調査に変更しました。
2021年度は持続可能な調達の推進強化に向け、国連グローバル・コンパクト10原則を網羅する「持続可能な調達ガイドライン」を作成。実施したアンケートは、お取引先自身がガイドラインの遵守状況や到達状況を評価確認できる内容へと大幅に見直し、
設問数も大幅に増やして回答への難易度がアップした結果、2021年度については国内外の調査対象499社中336社から回答を得るにとどまりました。
社外ステークホルダーとのエンゲージメント
積水化学グループは、2021年10月に海外有識者との個別ダイアログ※に参加し、人権に関する有識者(人権ビジネス研究所(IHRB)、国連開発計画(UNDP))に対して当社グループの人権取り組みについて説明を行ったうえで、今後どのように活動を発展させていくべきかのアドバイスを受けました。
有識者からは、本年度国内の外国籍従業員に対して人権リスクアセスメントを実施したことについて、有効な取り組みであるとの評価を受けた一方、海外グループの移住労働者についても、人権侵害を受けていないか、今後調査していく必要があると指摘を受けました。
今後も、こうしたステークホルダーからの意見を活用しながら、「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った体系的な人権取り組みを推進していきます。
- 個別ダイアログ:経済人コー円卓会議日本委員会による主催
従業員向けの人権に関する研修・教育
積水化学グループは、人権に配慮した経営を行うため、従業員に対して人権をテーマとした研修や教育を行っています。特に入社や昇進などの節目に実施される研修に、強制労働、児童労働、ハラスメントなど人権に関わる問題について意識を高める内容を取り入れています。
パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントなど各種ハラスメント行為については、その未然防止のため、新入社員研修や新任基幹職研修などの階層別研修を通して、ハラスメント関連の内容を継続的に取り上げており、それぞれの職階や立場に応じて、ハラスメント防止のための知識を提供しています。さらに、分野別研修において定期的なハラス
メント研修を行うとともにe-ラーニングも実施しています。2021年度は1383名がハラスメント研修を受講しました。
また、2020年度からは国内外従業員向け人権教育の一環として、社内イントラネットを活用した「ビジネスと人権e-Learning」(日本語版、英語版)を開始し、2021年度には、当社グループが操業する全エリア(北米、ヨーロッパ、アジア)に展開を決定。ドイツ語、スペイン語、オランダ語、中国語、タイ語、インドネシア語版を作成し、多言語化を進めました。
これらの研修・教育を通して、人権尊重の重要性および人権方針の周知を進めています。
さらには、全グループ従業員を対象に提供している国内向け「コンプライアンス・マニュアル」および海外向け「グローバル・コンプライアンス・マニュアル」にも、人権尊重と差別の禁止、ハラスメントの防止、個人情報の保護などについて記載し、人権・コンプライアンスに関する広範な内容について従業員の理解促進に努めています。
紛争鉱物問題から責任ある鉱物調達への転換
これまで積水化学では、コンゴ民主共和国および周辺諸国での紛争鉱物問題について懸念し、CSRの観点からサプライチェーンの紛争鉱物使用の調査を実施してきました。
しかしながら昨今の状況を鑑み、2017年4月より運用してきた紛争鉱物調査マニュアルを見直し、新たに「責任ある鉱物調達」調査マニュアルの運用を開始しています。2021年度から国内についてはコバルト、マイカも含めて調査しており、さらに従来の武装勢力への資金源に加え人権侵害(児童労働など)などのリスクに関わる鉱物の排除に努めるべく、製錬所の特定とリスクレベルによる対応を行っていきます。
3TGの調査では、国内の98%、海外の99%でConformant/Active Smelter(RMIの監査に合格しているか、監査受審中の製錬/精錬所)を特定しました。国内のコバルトについては83%製錬所の特定ができましたが、マイカについては加工業者の特定には至っておらず、海外も含め次年度以降に活動を強化します。