音声による認知機能検査機器の治験開始のお知らせ

2024年6月3日
積水化学工業株式会社

  積水化学工業株式会社（代表取締役社長：加藤敬太、以下「積水化学」）は開発を進めている音声による認知機能検査機器(開発コード：DMP-2301）に関し、委託先を通じて独立行政法人医薬品医療機器総合機構（以下「PMDA」）に提出した治験計画届書について、このたびPMDAによる30日調査が完了し、治験を開始する準備が整いましたのでお知らせいたします。

本治験の概要

本治験機器の概要

  取得した被験者の音声データを、クラウド上の音声解析プログラムで分析し、認知機能のスクリーニングを行います。
  本音声解析プログラムに使用したアルゴリズムは、積水化学とＰＳＴ株式会社^*1（代表取締役：大塚寛、以下「ＰＳＴ」）により共同開発されました。
  また使用する機器の共同開発およびPMDAへの治験届の提出等の薬事関連業務は、ドリームメディカルパートナーズ株式会社^*2（代表取締役：平松義規、以下「ＤＭＰ」）へ委託しています。

本治験に対する専門家のコメント

【治験調整医師　神戸大学医学部附属病院脳神経内科 古和 久朋 先生】

  本年５月８日の最新の認知症患者数に関する発表によれば、認知症患者以上に軽度認知障害^*3患者が存在することが初めて報告されました。またアルツハイマー病による軽度認知障害患者には昨年末に発売された新薬の適応となることから、従来以上に軽度認知障害患者の早期発見や診断が重要になってきます。
  軽度認知障害の検査にはMoCA-J^*4を用いることが一般的ですが、本検査は専門医や臨床心理士など、専門家による問診を必要としており、また時間も10分以上かかることから、かかりつけ医で実施されるケースはごく希となっています。この状況を打開するためには従来の評価検査に代わる簡便で、かかりつけ医での実施が可能な新しいスクリーニング方法が望まれています。
  プログラム医療機器として開発、治験が開始される本装置では、音声データの取得のみでスクリーニングが可能となるため、現在の検査体制の機能強化に資するものと考えており、本治験の成功により我が国における認知症や軽度認知障害に早期診断体制の整備が飛躍的に進むことを期待しています。

背景

  認知症患者の増加は社会問題となっています。2025年には認知症患者が472万人、軽度認知障害患者が564万人に上ると推計されています。
  これに対し国は認知症基本法^*5を制定。今年1月より施行しており、その中で国や自治体に認知症および軽度認知障害の早期発見、診断、そして対応を推進するための施策を講じるとしています。

今後の展開

  積水化学では「健康寿命の延長」を重要な社会課題と捉えています。開発中のプログラム医療機器の社会実装により、かかりつけ医から専門医への医療連携の強化に貢献し、軽度認知障害の早期発見、診断につなげられるよう努めて参ります。

用語の解説

＊１：ＰＳＴ株式会社
  音声から病態を分析する技術を研究開発している企業です。

＊２：ドリームメディカルパートナーズ株式会社
  薬事コンサルタント。PMDAへの治験届提出の委託先です。

＊３：軽度認知障害（MCI：Mild Cognitive Impairment）
  健常な状態と認知症の中間の状態。当該状態では認知症に進行するリスクが高まりますが、適切な対応をすることで、健常状態に改善する可能性があります。

＊４：MoCA-J（Japanese version of Montreal Cognitive Assessment）
  認知症が疑われる時に実施する神経心理検査の一つで、他の同様の検査に比べ、MCIなど軽度な認知機能障害の判別に有用な検査です。

＊５：正式名称「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」

※治験計画届書の提出は、2024年5月7日に当社リリースにて公開しています。
URL：https://www.sekisui.co.jp/news/2024/1402104_41090.html