火災への取り組み“もしも”の火災に備えることが、日々の安全・安心に

「火」がもたらした、光と影

「火」の利用は、人類にとって最初で最大のイノベーションだと言われています。暗闇を照らし、体を温め、食材を調理する。人類は火の利用とともに文明を築いてきました。
そして火によってはじまった文明の歴史は、同時に火災の歴史でもあります。令和となった現代でも平均して1日に99件の火災が発生し、4人が亡くなっています(令和5年版消防白書より令和4年統計)。

火災の延焼がもたらす人命被害

建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況

消防庁『令和5年版消防白書』のグラフをもとに当社作成
消防庁『令和5年版消防白書』のグラフをもとに当社作成

建物火災による死者数は1,173人。そのうち752人が火災により建物が全焼したケースと、焼損の程度が大きいほどに死者が発生していることがわかります。火災の発生時に延焼を抑えることが、人命を救うためには必要です。

火災を発生させないことが一番であることは言うまでもありませんが、火災発生の原因となる地震などの天災や過失・放火などの人災、そのいずれもゼロにするのは容易ではありません。火災は起こり得ること。その前提に立ち、被害を最小限にする「火災に強い」建物が求められています。

世界は「火災」とどう向き合うべきか?

ゼロになることはない火災。求められるのは、人々が日常を営む裏で、“もしも”火災が起きたときを日々想定し、汗をかく存在。火事の被害を最小限に抑える。私たち積水化学は化学の力で、その難題に向き合い続けています。

SEKISUI’s Innovation

簡単、確実。熱で膨らむ新発想

熱膨張耐火材 フィブロック

一定以上の大きさの建物では、火災時に延焼を防ぐために防火区画が設けられます。しかし、ライフライン(電気、空調、給水・排水)が必ずこの区画を貫通するので、区画貫通部分から別の部屋への延焼を抑えるために防火処理が必要となります。従来は防火区画と他の区画の間のパイプに、金属製の固定治具を用いて耐火パテを埋め込む処理を施さなくてはならず、職人の技術と手間がかかっていました。

また、防火処理を施す工事事業者では人手不足が慢性化しています。熟練した就業者の高齢化が進み、労働環境改善の観点から就業者の労働時間も短縮化していることなどを背景に、職人の技術と時間が足りていません。「火災に強い」建物を実現するために、施工現場の変革も、同時に求められています。

「フィブロック」は200℃以上の熱で瞬時に膨張して断熱層を形成する耐火材。貫通部に施すことで、火災時に膨張して隙間を埋め、延焼を防ぎます。「フィブロック」は薄いシートで、施工時は貼ったり巻きつけたりするだけ。熟練した職人でなくても、簡単に確実に施工をすることができます。

確かな耐火性を有しながら現場作業者の負担を軽減することのできるフィブロックは、多くの現場で使われ、日本の建物・住宅の防火を支えているのです。

暮らしだけでなく、施工現場の安心・安全も

不燃ポリウレタンフォーム PUXFLAME(パックスフレーム)

建物の床や壁面などに施すことで、冷気や熱の伝達を遅らせ、暑さや寒さを防ぐ役割を果たす断熱材。快適な暮らしに欠かすことのできない断熱材ですが、その一方で従来のウレタン断熱材は燃えやすいという欠点がありました。そのため、建築施工現場の溶接火花による火災事故が発生する例が後を絶ちませんでした。

PUXFLAMEは有機系吹付断熱材として国内初の不燃材料認定を取得したウレタン系現場発泡不燃材料。溶接火花などによる燃え広がりを抑止し、建築施工の現場での火災事故防止にも有効です。

また従来の不燃断熱材の工法はウレタン断熱材を吹き付けた後、数日乾燥させてから、燃えにくい無機コート材を吹き付ける2回層の工程が必要でした。PUXFLAMEであれば一度吹き付けるだけで火災対策が出来るので、従来の工法と比較して工期が短縮できます。現場就業者の作業時の安全・安心に加えて、労働環境改善にもつながっているのです。

防災技術の進化と想いを未来に

ここ10年で火災の出火件数・死者数は減少傾向にあります(令和5年版消防白書)。火災と向き合ってきた人類の歴史は確実に積み重なり、私たちの暮らしの安全へとつながっているのです。

そこには、“もしも”の状況に備え、日々現場で汗をかく工事事業者の皆さん、そして積水化学のような存在があります。私たちの仕事も防災の歴史の一部となり、これから未来を生きる人々を守ることにつながるはず。

積水化学は火災発生時の安全に貢献し、未来につづく安全・安心のため、これからも火災被害の抑制と向き合っていきます。