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ペロブスカイト太陽電池など革新的技術を次々に生み出す源流 積水化学のイノベーション力に迫る

 
⼈々の暮らしの多様な分野で積⽔化学の製品・技術がどのように活かされているのか。
その開発にはどんな想いや物語があり、
それは地球に暮らす⼈々や社会とどのようにつながっていくのか。
「SEKISUI|Connect with」は、積⽔化学とつながる未来創造メディアです。

1947年に創業した積水化学グループの歴史は、くらしの根幹にある社会課題を解決するイノベーションの歴史であったといえる。なぜ積水化学グループは革新的な技術を次々に生み出せるのか、そのイノベーション力の源泉について積水化学工業株式会社 代表取締役社長 加藤敬太氏に語ってもらった。

ペロブスカイト太陽電池が気候変動課題解決の切り札に

積水化学は、創業以来、社是である「3S精神」(Service、Speed、Superiority)のもと、製品・技術で社会課題解決に挑戦しながら成長してきた。その原点は、1961年に始まったプラスチック製ゴミ容器「ポリペール」の販売だ。当時、東京都は急激な都市化で家庭ゴミが増大し、ゴミ処理が大きな社会問題になっていた。積水化学は、東京都と連携して製品開発を行うとともに、ゴミ収集車による回収システムを提案。消費者に向けて街を美化する啓蒙活動を展開した。このゴミ処理と収集方法は「清掃革命」と呼ばれ、全国に展開されて街を美化した。

「我々は様々な社会課題の中でも、世界の人々の安全や健康といった社会の課題、あるいは気候変動や自然災害などの社会の存続に深刻な影響を与える地球環境の変化といった『くらしの根幹にある課題』に一貫して取り組んできました。地震や豪雨などの自然災害などからくらしを守る住宅・社会インフラや、生活や健康の質を向上させる高機能素材やメディカルまで、多様な事業はすべて『くらしの根幹にある課題』の解決に取り組み、『人々のくらしに対する安心が、今を生きる私たちだけでなく、次世代そして未来にずっと続いていくこと』を目指しています。この『未来につづく安心』を社会に届けることこそが我々の使命なのです」

積水化学グループの軌跡

深刻化する気候変動への貢献で現在注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」だ。昨年のG7広島サミットでも、カーボンニュートラルに貢献する日本最先端技術として紹介され、2025年の社会実装に向けて自治体や企業と連携し、多様な設置場所を想定して実証実験を進めている。

「カーボンニュートラルの実現に向けて再生エネルギーの導入拡大が求められていますが、日本は平地面積が少ないので、従来のシリコン系太陽電池では適地が限られます。その点、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、従来は設置が難しかった壁面などの場所にも適用できます。そのため、再エネ導入量の拡大につながる有力な選択肢として期待されているのです。これには当社独自の『封止、成膜、材料、プロセス技術』が活用されており、長年培ってきた技術の集大成のような形です。開発の肝である屋外耐久性は10年相当を確認し、30cm幅のロール・ツー・ロール製造プロセスを構築しました。さらに発電効率15.0%の達成にも成功しています。原材料を海外に依存しないことも重要で、事業化に向けてさらなる耐久性と発電効率の向上に向けて開発を加速させています」

左)開発を進めているフィルム型ペロブスカイト太陽電池 右)大阪本社にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置

ゴミから微生物の力でエタノールを生み出すバイオリファイナリー技術も革新的だ。
可燃ゴミを一切分別することなくガス化し、それを微生物の力により、エタノールへ変換する。可燃ゴミをガス化した時に様々な夾雑物質も発生するが、それをリアルタイムでモニタリングし、微生物が生育できるレベルにガスを精製する技術がキーだ。

「バイオリファイナリーは、CO2を大量に排出することもなくゴミからプラスチック製品や航空燃料を生み出せます。ゴミを資源化するだけでなく、化石資源枯渇や環境破壊、気候変動などまさに社会課題の解決に貢献するサステナブルな技術だといえます」

2014年から3年間、埼玉県寄居町の1/1000スケールのパイロットプラントで研究開発し技術を確立した。 そして、現在、岩手県久慈市の1/10スケールの実証プラントで技術検証などを行っている。2028年度頃の商用サイズ初号機の運転開始を目指している。

左)バイオリファイナリー 久慈実証プラント 右)エタノール製造プロセス

「この資源循環は当社だけでは実現できません。可燃ゴミの回収、エタノールからポリエチレンの生成、プラスチック製品化など、各フェーズでパートナーとの協業が不可欠です。その第一弾として、資生堂と住友化学との3社協業によるプラスチック製化粧品容器の新たな循環モデル構築も開始しました。実質的な稼働はこれからですが、従来は分別しにくいという理由で再資源化が難しかったプラスチック製化粧品容器の循環に取り組むことには、大きな意味があるはずです」

他にも、再生医療や遺伝子治療への貢献が期待される細胞培養や温室効果ガスであるCO2を化学品の原料となるCOに変換するCCU技術など、革新的イノベーションを次々に社会実装すべく開発が進んでいる。

独自性を発揮できる領域での「際立つ技術と品質」がイノベーション創出の源泉

「イノベーション創出の源泉は、社会課題解決に製品や技術で貢献してきた長い歴史の中で培った『際立つ技術と品質』です。競争力があり、さらに強化すべきコア技術を26の技術プラットフォームと定義し、継続的に強化をしています。そして、市場の変化や社会のニーズを先んじて捉え、得意な技術を掛け合わせてソリューションを生み出し、新たな価値を創り出して社会を変革していく『先取り・加工・変革』という3つの強みで価値創造サイクルを回し、イノベーションを創出します。このサイクルを回す上で、多様な事業領域を有する当社グループの独自性が生きる。幅広い事業領域から新たなニーズを探し出し、中間素材を中心としたコア技術を生かしてソリューションを生み出し、住宅やインフラという社会基盤に直接実装することが我々には可能だからです」

積水化学グループは、社会から必要とされ、コア技術などの独自性が発揮できる領域を特定し、特化して果敢に取り組むことでイノベーションを創出してきた。

「ニーズとシーズのマッチングが重要です。社会課題解決に貢献しない製品は淘汰される可能性がありますし、独自性が発揮できなければ課題解決に貢献しても競争に勝ち残ることはできません。この特化する領域を定めたのが戦略領域マップです。このマップを羅針盤に現有事業の強化と革新領域でのイノベーションに挑戦しています」

現有事業の強化領域と、コア技術の延長線上でのイノベーションに挑戦する革新領域を定めた「戦略領域マップ(2024年9月時点)」

「そして今後は、一社単独で解決するのは難しくなってきています。社会課題も複雑化しているので、オープンイノベーションの重要性を認識しています。オープンイノベーションの拠点を構築し、世の中のニーズの探索をしています。新事業開発はコア技術から離れた飛び地ではなく、その少し外側へコア技術を伸ばし、あるいは外部技術と掛け合わせることで新しい事業を生み出していきたいと思っています」

オープンイノベーション拠点 水無瀬イノベーションセンター

継続的にイノベーションを生み出すための製品制度が「サステナビリティ貢献製品制度」だ。

「この製品制度は、社会課題を解決しサステナブルな社会を実現することがグループの持続的な成長につながるという考えに基づいて発足しました。新製品の開発においては、コンセプト設計の段階からサステナビリティ貢献製品の要素・視点でレビューすることでその創出を促進します。そして、社会課題解決への貢献度と収益性が特に高い製品を『プレミアム枠』と設定し、ヒト・モノ・カネの経営資源を重点的に投入して拡販できるようにしています」

「また、製品認定の条件には社会課題への直接的な貢献効果だけでなく、ガバナンスやサプライチェーンマネジメントなど社会や製品の持続可能性も考慮しています。認定にあたっては社外の有識者との対話によって、基準の透明性や登録の信頼性を担保しています。この製品制度を活用、進化させることで、社会課題解決への貢献度が高いイノベーションを継続的に創出していきます」

サステナビリティ貢献製品の例

「未来につづく安心」を創る積水化学の挑戦

イノベーション創出に向けて、加藤社長が経営をする上で大切にしていることを聞いた。

「『収益をつくる』だけでなく『未来をつくる』という両輪を大切にしています。持続的な成長は既存事業だけでは難しく、常にイノベーションを生み出し続けることを視野に入れなくてはいけない。重要なのは、『健全な危機感』を持つこと。成長している事業は、将来に備えた技術の仕込みを常にしているからです。そして、忘れてならないのは、イノベーションを生み出す原動力は人だということ。新技術を生み出し、くらしの根幹にある課題解決に貢献するには、得意技をもった際立つ人材とその一人ひとりが挑戦することがカギ。一人ひとりが健全な危機感を胸に、自らの力を最大限に発揮して行動し続ける。そんな失敗を恐れない挑戦の風土づくりも大切にしています」

最後に、「未来につづく安心」の実現に向けて今後の展望についても語ってもらった。

「イノベーションを生み出し、『未来につづく安心』を届けていく志を一言で表現した言葉が、現在取り組んでいる長期ビジョンのステートメント 『Innovation for the Earth』です。イノベーションで課題解決に取り組み、その貢献の量と質を高めることで利益ある成長を図る。様々なステークホルダーと共に複雑化する社会課題に向き合い、当社の強みを生かしながらソリューションを提案していきたい」

本記事は、日経BPの許可により日経ビジネス電子版2024年9月27日-10月26日に掲載した記事広告を転載したものです。© Nikkei Business Publications, Inc.