協業3年で見えてきた、暮らしを変える「ZEH水準リノベーション」という選択
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その開発にはどんな想いや物語があり、
それは地球に暮らす⼈々や社会とどのようにつながっていくのか。
「SEKISUI|Connect with」は、積⽔化学とつながる未来創造メディアです。
最初に結論
1. ZEH水準リノベーションは、快適性・経済性・省エネといった“暮らしの質”を底上げし、ストック住宅の新しい価値の軸をつくり出している。
2. 中古マンションを“未来の住まい基準”へアップデートする先駆的な協業モデルは、徐々に広がりを見せている。
3. 性能・間取り・安心感がそろったとき、生活者の実感として「良質なストック」になることが明確になった。
なぜ、いま「ストック住宅」が問われているのか
積水化学グループとリノベる(株)との協業が始まってもうすぐ3年。中古マンションにZEH水準リノベーションを施し、“未来基準”の住まいへと引き上げる取り組みが進む中で、実際の暮らしに何が起きたのかを確かめるために、今回、住まい手であるUさんご夫婦(70代、2023年にリノベる社と積水化学グループが手がけたZEH水準リノベーション物件を購入)の声とともに、積水化学グループで協業プロジェクトを担う山田攻男、斎藤遙、リノベる社でSpecial Projects担当マネージングディレクターを務める杉谷武広氏に話を聞いた。

日本の住宅市場は、これまで新築中心で発展してきた。一方で、住まい手の価値観や社会環境の変化を背景に、既存の住宅ストックをどう活かしていくかが重要なテーマになりつつある。都市部には築年数を重ねながらも、生活利便性の高い場所に建つマンションが数多く存在している。
そこへ気候変動の加速やエネルギー価格の高騰といった課題が加わる。
夏の猛暑、冬の底冷え、電気・ガス料金の上昇——。住宅の性能は、家計や暮らしやすさに影響が表れやすい。
さらに高齢社会。
温度差による負荷、乾燥や湿度ムラ、結露によるカビリスクなど、住まいは、年齢を重ねるほど日々の暮らしや生活の快適さに影響を及ぼす。
積水化学の斎藤は話す。
「断熱改修と居住者の健康に関する調査報告※では、断熱改修を行うと健康診断の結果や血圧の低下に有意に影響するという知見も蓄積されつつあります。建物が古いから価値が低い、という時代ではもうないと思っています。断熱や間取りといった要素をリノベーションで整えることで、住まいの選択肢を広げていくことができる。その価値をどう世の中に伝えていけるかが私たちの課題です」
※出典:住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査(スマートウェルネス住宅等推進調査委員会)。<本プロジェクトを対象にした調査ではありません>
こうした問題意識を共有しながら、積水化学とリノベる社は2023年に協業を開始した。
中古マンションを“未来基準”へアップデートする
協業の中心にあるのが、ZEH水準リノベーションである。
ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。
高断熱、高効率設備、創エネ(太陽光発電など)を組み合わせ、ネット(正味)のエネルギー収支をゼロに近づける家のことを指す。
今回両社が行っているのは、そのうち
・断熱性能の強化
・エアコンや給湯機器など設備の高効率化
の2つの基準を満たす「ZEH Oriented」への適合である。
積水化学の山田は「リノベーションにおけるZEHの価値」をこう説明した。
「中古マンションのリノベーションにZEHを組み込む理由は、暮らしの中で“体感の違い”を実感してもらいやすいからです。温度や湿度、音の環境が整うと、生活のストレスは目に見えて減っていきます。この快適さの提供にZEH水準リノベーションの価値があると感じています」

積水化学グループが長く培ってきた高性能住宅の技術と、リノベる社が持つ中古マンションのリノベーションに関する設計・デザイン力。その両方を掛け合わせながら、フルスケルトンにした中古マンションを高断熱・高効率設備で再構築し、“未来基準”へ引き上げる。
リノべる社の杉谷氏は、導入時のコストアップに議論が偏りがちな現状に触れ、「光熱費削減のみならず、日々の暮らしの中での快適性向上や将来のリセールバリューの上昇まで含めて体験価値を可視化し、正しく訴求していくことで、ZEH水準リノベーションを新たなスタンダードにしていくことが今回の協業の重要なテーマです」と語った。
実際の暮らしはどう変わったのか
ここから話題は、実際にこのZEH水準リノベーション住宅に暮らすUさんご夫婦の体験談へ移った。
Uさん(夫)が一番の魅力として最初に語ったのは、光熱費の変化である。
「リビングのエアコンは夏場(2025年7月~8月)、ほぼつけっぱなしでしたが、それでも電気代とガス代を合わせて7,956円。冬場(2025年2月〜3月)でも一日中暖房をつけていても1万円を切ったんです」
※光熱費は外部環境や料金単価、生活環境等によって変動します。
以前暮らしていた軽井沢の戸建てでは、冬場の灯油代だけで数万円かかることもあったという。
冬の暖かさについては、Uさん(妻)が語る。「帰ってきても家が冷えていないんです。こたつもいらなくなりました。脱衣所も寒くならないですし、お風呂のお湯が本当に冷めないんですよ。冬場の“底冷え”がなくなるだけでこんなに楽なんだと実感しました」
温度だけではない。湿度も安定し、乾燥しにくくなった。
「以前の家では足が乾燥してカサカサすることが多かったのですが、ここではそういえば気にならなくなりました」
そして静かさ。
電車が近くを走る立地ながら、Uさん(夫)が「窓を閉めると驚くほど静か」と語る。二重窓による効果がしっかり現れているのだ。
さらに暮らしやすさを実感しているのが回遊動線だ。玄関、洗面、ウォークスルークローゼット、キッチン、リビングがひとつの線でつながり、家の中を一周できる。

Uさん(妻)は「家事がひとまとめにできるので、本当に動きやすい。機能的で暮らしのリズムが整いました」と語った。
住み始めてから実感した価値について、Uさんはこう振り返る。
「最初は間取りや立地が気に入って購入を決めたのですが、暮らしていくと断熱性能が“後から効いてくる”んです。湿度、温度差、体の負担が少ないこと。こういう部分が生活の安心を支えてくれています」
体験価値をどう可視化するか
Uさんご夫婦のように住まい手の体験を、どのように価値として届けていくべきか?
斎藤は「湿度や静かさといった体感の価値は数字だけでは伝わりづらい。けれど、お客さまの声として返ってくると説得力が段違いに上がる」と語る。
杉谷氏は「暮らしの中で自然と省エネになる仕組みこそがZEHの価値。その実感をどう届けるかが課題」と続ける。
山田は「デザインで選び、暮らしの中で性能の良さを実感できることが安心につながる。この順番も意外と大事です。生活の中でZEHの価値が染みていくイメージですね」とまとめた。
「良質なストック」はどうつくられるのか
山田は「今回は光熱費や温湿度・音の快適性、暮らしやすい動線設計などが体験価値の向上に寄与することが明らかになったが、良質の定義は一つではなく、住まい手によって感じ方が違う。だからこそ事例を積み重ねることで、多くの人が共感できる共通項を見つけていく必要がある」と語り、それを社会へ届けることが協業の役割だとした。
杉谷氏は「光熱費の削減の実績や『お風呂が冷めにくい』といった住まい手の実体験は、非常に強い訴求力を持つ。こうした体験価値を社会全体に広げる仕組みづくりを進めていきたい」と意欲を語った。
現在、両社協業のZEH水準リノベーション事例は50戸を超え、2025年3月に竣工した一棟全住戸をリノベーションした賃貸マンションは満室となっている。今後は、これらの住まい手の声の収集・分析、ZEHで育った若い世代へのアプローチ、光熱費や体感温度の数値化、さらなるパートナーとの連携など、活動範囲はさらに広がっていく。


