IR English Site

セルサイドアナリスト向け 社長Small Meeting質疑応答(2023年06月27日開催)

2023年06月30日更新

開催趣旨 当社は2020年5月に長期ビジョン「Vision 2030」を発表しました。そしてこの長期ビジョン実現に向け、重要な2nd ステップとなる中期経営計画を5月23日に発表しました。中期経営計画の方向性、社長の想いなど、当社の経営、事業について、より広く、深くご理解いただける機会とすべく、本ミーティングを開催しました。
日時 2023年6月27日(火)
場所 積水化学工業 東京本社
出席者 当社: 代表取締役社長 加藤 敬太、代表取締役専務執行役員 上脇 太、経営戦略部 IRグループ長 岡野 剛
セルサイドアナリスト: 8名

長期ビジョン Vision2030 に向けて・中期計画 Drive2.0 について

  • 前中期計画の評価はどうか。長期ビジョン実現に向けて、今中期計画はオンラインと考えて良いか。

    (加藤)長期ビジョン策定当時は、オーガニックの成長で売上1兆5,000億円程度、M&Aなどで残りの5,000億円をカバーするものと想定していた。営業利益率10%については、高付加価値品へのシフトを進めて、充分到達できるだろうと考えていた。策定時はコロナも、原材料高騰も、ロシアによるウクライナ侵攻も想定していなかったが、前中期計画2年目で2019年度の営業利益を超えることができた。前中期を終えて、現有事業の強化、新事業・新製品の創出に注力してきたことで、オーガニックだけで売上1兆6,000億から7,000億円を考えられるくらいまで、成長へのドライブはかかったと考えている。前中期計画ではM&Aが実現しなかったという点はあるが、全体としては今中期計画を達成することでオンラインと認識している。

  • 前中期計画では実績がなかったM&Aに、今中期計画で3,000億円の枠がある。具体的な案件や、方向性についてご説明をお願いしたい。

    (加藤)過去数年間に渡り、特にモビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスの3つの分野で、かなり緻密に市場と個別案件を見ている。ロングリスト、ショートリストは充実している。実現には至らなかったが、交渉もいくつか実施した。当社はM&A検討にあたっては単純な合算ではなく、双方にとってのシナジーがあるかどうかをしっかり吟味していこうとしている。当社の財務余力から言えば、レバレッジを活用した枠内においては、今回強化した株主還元への影響なく、事業運営できると考えている。

  • 2030年に向けて、何が成長の大きなドライバーになると考えているか。

    (加藤)2030年までは、成長ドライバーは引き続き高機能プラスチックスが担う。伸長を期待する海外への展開が進んでいる。エレクトロニクス、モビリティについては、まだまだ拡大できる余地がある。一方、環境・ライフラインでは徹底した構造改革や、海外の不採算事業からの撤退を進めてきた。重点拡大製品が伸長し、また、成長が期待されるFFUやSPRの海外展開も進捗して、営業利益率は大幅に改善した。全体としての底上げができる様になった。住宅については着工数が減っていく中でどう伸ばしていくか、まちづくりや家の性能、また、高機能プラスチックスや環境・ライフラインの高機能品を組み合わせたトータルの価値を、どう訴求していくかがポイントとなると考えている。

  • 2030年の営業利益のセグメントごとの内訳はどの様なイメージか。

    (加藤)2025年の1,150億のうち半分強の610億は高機能プラスチックスで稼ぐ。2030年に向けては引き続き高機能プラスチックスが牽引するが、全セグメントで増益させることを考えている。

高機能プラスチックスについて

  • エレクトロニクス、モビリティ、インダストリアルの3分野が、2025年に向けてそれぞれどのような方向性か。

    (加藤)エレクトロニクスは今年の上期まで、スマホの市中在庫の影響が残りイレギュラーな状態。下期以降には回復し、25年に向けて順調に回復すると見ている。また、液晶分野への依存度を下げるために注力してきた半導体用途や放熱材料も順調に推移。モビリティでは、中間膜が販売量の拡大以上に、高機能品へのシフトが進んでいる。ヘッドアップディスプレイ(HUD)向けに加えて、EV向けの遮熱膜も伸びている。EV向けの放熱グリスも好調で、ヨーロッパに続きアメリカで工場を建設中である。いずれも2025年まで成長を継続できると考えている。

  • 中間膜は高機能品へのシフトが進んで、HUD向けが伸長しているとのこと、今中期計画で新設・増設の計画はないか。

    (加藤)現時点で決まった計画はない。計画以上に伸長した際には、ラインの新設か、既存ラインの能力増強か、全体の供給能力やアロケーションを勘案して検討していく。

  • ヘッドアップディスプレイには様々な方式があって、御社の中間膜はそれらすべてに対応できるのか。方式が変わって使えなくなるというリスクはないのか。

    (加藤)もともといろいろな方式があったが、どれもコストの課題が大きく、今の方式に落ち着いてきたと認識している。HUD向け中間膜は、通常の中間膜とほぼ同じプロセスでヘッドアップディスプレイ用のフロントガラスになる。当分は今の方法が続くのではないか。

  • 成長ドライバーとされている航空機分野は、既存の航空機で伸ばすのか。次世代のプロジェクトが見えているのか。具体的な内容についてご説明をお願いしたい。

    (加藤)この数年はコロナ等の影響を大きく受けたが、ようやく市況が回復しつつある。2025年に向け、利益の大幅な改善ができるだろう。Aerospace社はCFRPについての強い成型技術を持っており、高熱になるエンジンのパーツや、金属代替としてドローンなどにも用いられることで、今後の伸長が見込める。ドイツのボロコプター社に出資した。今後、eVTOLへの更なる展開の可能性を模索していく。

住宅について

  • 今後、海外のパワービルダーを買収するなどして、住宅事業を成長させる可能性はあるか。海外への事業展開についてご教示いただきたい。

    (加藤)継続してウォッチはしている。ただし当社は家の8割以上を工場で作る工法であり、その技術を活かして海外で展開できる事業パートナーを見つける必要がある。

  • 分譲・建売の強化の施策についてご教示いただきたい。

    (加藤)分譲・建売を強化することで、全体の販売棟数が増えるだけでなく、工場の生産効率が上がる。生産、施工時期を調整しやすい建売を活用して工場の稼働平準化を図ることで、棟当たりの固定費を下げる効果があるので、全体の利益の底上げという意味でも強化していく。

  • 他の大手プレハブ住宅メーカーと比較して、御社の工業化比率は高いのか。

    (加藤)工業化比率は高いと認識している。現地での作業が少なく、現場工期が短くて済む。ユニット構造で地震にも非常に強い。

  • 中古やリサイクルといった点ではどうか。

    (加藤)2020年度に、「Beハイム」というブランドを立ち上げ、買取再販の事業をスタートした。お客様がライフステージの変化等により住宅を手放されるタイミングで、当社が買い取り、リフォームをしてまた新たなお客様へ販売するもので、順調に拡大している。

  • 有価証券報告書の記載内容が変わって、女性管理職の比率や、気候変動について記載されている。住宅で、女性管理職がいることで今までと違った成長ができるのかどうか、少しアイディアをいただきたい。

    (加藤)女性の管理職は、住宅ではグループ会社に比較的多い。特に女性目線でのリフォームや、展示場でも女性の基幹職が活躍しており、住宅事業に大きく貢献してくれていると認識している。有価証券報告書は特に今年度から色々と開示の要請があるが、当社はマストの項目に加えて、積極的な開示をするという方針で進めた。

  • 気候変動のどういったシナリオで、御社の住宅事業にどんな影響があるとお考えか、お聞かせいただきたい。

    (加藤)災害の激甚化という点では、当社の住宅はもともと震災に強い家だが、最近では停電や、原燃料高騰による電気代の値上がりに対して、ゼロエネルギーハウス、ソーラーパネルと蓄電池とで非常に好評をいただいており、新築の9割にソーラーが採用される状況になっている。また水害等に対しては住宅以外の、例えば環境・ライフラインの高排水の配管や雨樋、また公園や各ガレージスペースの下に雨水貯留のマスを導入するといったことで、これが競争優位な、街のレジリエンスとして非常に高い評価をいただいている。まちづくりプロジェクトは順調に進んでいる。

DXについて

  • 御社のDXについてご説明をお願いしたい。化学工業は標準化しやすい工業だと思われるが、住宅事業は標準化されていないところが多く、標準化テーブルを使わなくてはいけないシステムを導入すると、そぐわない面もあるのではないか。

    (加藤)当社は独自の、旧式のシステムを使ってきているが、標準化と会計不正防止強化も考えて、会計の基幹システムERPをSAPに変えようとしている。調達、購買関連もそのSAP下で対応する。この3年間、仕事自体をスタンダードなテーブルに合わせるための、徹底的な標準化を進めてきた。今年度からは一部の部門で導入トライアルを始める。

  • 住宅におけるDXについてはどうか。調達、生産、営業など、それぞれに対して何がどの様に進んでいるか、ご説明をお願いしたい。

    (上脇)住宅は、全社のDXと並行して、独自のSCOPEというシステムの導入を進めている。全国の工場ごとに部材展開や調達などの人員を置いていたが、このシステムを使って統合し、効率化を図っていく。

人的資本への投資について

  • 人的資本への投資120億円について、説明会でもキャリア形成で20億円、労働条件で100億円程度とのご説明があった。この具体的な内容について、ご説明をお願いしたい。

    (加藤)中期計画と、その先の長期ビジョン達成のためには、社員の高いモチベーションが欠かせない。当社では社内KPIの一つとして、挑戦行動の発現度を、エンゲージメント調査の中で測定している。今中計では、例えば配当性向を40%に上げるなど、投資家への還元を強化した。すべてのステークホルダーに配慮するという観点では、従業員の賃上げも決めた。前中期でドライブがかかったことに報いるだけではなく、今中計での挑戦行動発現にも期待して、まず賃上げをしたというものだ。また、働き方改革や、従業員のリスキルのための投資も考えている。要は従業員1人当たりや時間当たりの生産性向上を期待している。

  • 円安が進行したことによって、日本の技術者などの給料が、ドルベースで見たときに非常に見劣りすることになっている。御社の場合は海外の技術者をあまり採ることがないので、大丈夫なのか。日本の賃金のレベル感をどう考えるか、お聞かせいただきたい。

    (加藤)技術の流出などのリスクがあるため、マーケティングは海外で広くお客様の要望を取ってくるが、開発は基本的に日本国内で進めている。当社も、優秀な人材に継続して活躍してもらうために、エリアごとの相場感として、給与水準や初任給については意識している。海外では工場の生産技術者は現地採用が必要になる。現地通貨ベースで、他の会社と比較して遜色ない水準で採用している。

環境関連投資について

  • 2030年までの環境関連投資400億円について、ご説明をお願いしたい。

    (加藤)当社は化学メーカーとして世界で初めてSBTの認証を取ったが、その当時は2℃シナリオだった。今回、温室効果ガスの削減の取り組みが中期の目標を超えて前倒しで達成できたこともあり、あらたに1.5℃シナリオでSBTの認証を取り直した。今後、再生エネルギーへの転換とともに、ケミカルプラントではユーティリティ部分にどう取り組むかが問題になってくる。それらへ予算を振り向け、2050年のカーボンニュートラルを目指して、前倒しで取り組みを進めようと考えている。

ペロブスカイト太陽電池について

  • ペロブスカイト太陽電池について、アップデートなどがあればお願いしたい。

    (加藤)今のところ当社の強みである耐久性を活かして、屋外での実証試験ができている。強みは封止技術であり、エレクトロニクス分野の、例えばスマホなどで、液晶を守るためのシール材などで活かされている。当社は実験室の促進レベルで10年間の耐久性が得られていることで、業界内でもリードしていると認識している。実用化に向けて、1m幅での製造プロセスの確立、耐久性や発電効率の更なる向上を目指して、NEDOのグリーンイノベーション基金も活用して開発を加速させている。