2025年01月14日更新
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サステナビリティ貢献製品のプレミアム枠が、どの様にして増収になってきているのか、補足をお願いしたい。オーガニックなのか、新製品を新規に認定したのか、改良したのか、M&Aとか、どういったものが多いのか。
(清水)オーガニックで、シェアを増やしていく分と、新製品で増えていっている分、あとは新用途というのもある。
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プレミアム枠は、普通の製品と比べると競合が多いのか少ないのか。収益性については粗限界利益率を開示していただいているが、営業利益率で見ても高いと言えるのか。
(清水)競合との関係については、もちろんレッドオーシャンの様なところでは勝負していない、高付加価値製品が多い。競合が少ないところで増えていく様な製品がプレミアム枠に入っている。したがって、粗限界利益率にリンクして、営業利益率も高くなっていると考えて頂いて良い。
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今後、プレミアム枠の稼働率をまだ高める余地があれば、これから更に収益性が高くなるということになると思う。今どういうステージにいるのか。また、普通の製品と、プレミアム枠では、どちらの稼働率のほうが高いのか。
(清水)一概には言えないが、プレミアム枠の製品は重点的に拡大しようとしており、稼働率も今後更に上がっていくものと考えられる。稼働率は、汎用品が高くて、プレミアム枠の製品が低い、といったことはない。
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プレミアム枠には、具体的にどういった製品が主に含まれているのか。売上高は過去から開示されているが、中身は変わっていないのか。もともとZEH住宅が入っていたと思うが、それは今も含まれているのか。プレミアム枠が伸びてはいるが、実は定義が変わっていて、中身が変わっているのではないか。
(清水)プレミアム枠の具体的な製品名については、事業上の理由により、回答は控えさせて頂きたい。ご指摘の通りZEH住宅など、過去からの分の積み上げはある。また、新用途で使われ始めた製品等も加わって、増えてきているということもある。
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プレミアム枠の定義は、変わってきているのか。製品が抜けたり入ったりしているという認識で良いか。
(多田)プレミアム枠については、中期計画の3年単位で見直しをしている。一方で、中期の期間中での新製品があって、その中でプレミアム枠に該当してくるものは、新しく登録をしている。中期単位で考えれば連続性は見られると思う。
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プレミアム枠の製品の今後の成長をどう見ているか。他に例えばバイオリファイナリーや、次世代通信部材など、様々な用途で、社会に貢献する新製品を生み出せると思う。そういったものが今後どうなって、プレミアム枠の売上高はどう伸びていくのか。
(多田)BRも含めて、これから市場導入する新製品は基本的にプレミアム枠に入ることを前提としている。一方で計画においては、BR等の新事業の数字は保守的に算入している。
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プレミアム枠全体の売上も、大きく伸びていくという見方で良いか。
(多田)当社の事業を牽引しているものや、これからリソースを追加して力を入れていくものが、まさにプレミアム枠であり、これから間違いなく伸ばしていくということになる。
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サステナビリティ貢献製品の売上高は、22年度は前年比で1,300億円ほど増加している。一方、同じくプレミアム枠のほうは1,000億円ほど増加しており、つまりかなりの部分がプレミアム枠の増加になっている。3年に一度見直されるとのことだったが、この年の変化について、補足のご説明をお願いしたい。
(三浦)先ほど、製品の用途の拡大による、というご説明をした。22年度には、資源循環戦略を策定し、その観点でどの様な貢献をしているかを見直した。それが大きく伸びていることの一つの要因になっている。
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DXにかかる、今中期計画での200億円程度の投資について、期待される効果はコスト面なのか、売上の伸びなのか。定量的な指標があるか。
(清水)DXによる効果については、直接部門、間接部門の生産性向上を一つの指標にしている。売上伸長においては、DXを活用した営業革新活動等による、売上自体の拡大と、営業活動の効率化。その2つを考えている。
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DXの効果を数字で表現できるものはあるか。
(多田)数字を出してはいない。社内では、直接生産性、間接生産性というのを指標としている。売上高を直接人員数や間接人員数で割ったものが、どれくらい伸びているか。一人あたり限界利益率とあわせて、生産性、パフォーマンス、付加価値を生み出しているか、といったところを見ている。
(清水)生産性についての数字は統合報告書に記載しており、2030年度で、直接生産性で2019年度比30%増というのを目標にしている。
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バイオリファイナリーの事業は、やり方によって限界利益率が高くも低くもなるのではないかと思える。コストのかかり方のイメージが湧きにくい。事業として始めるからには、おそらくサステナビリティ貢献製品に入ってくるものと思うが、外から見ると、プレミアム枠には入りづらいのではないかとも感じる。事業スキームをご説明いただくのは難しいかも知れないが、ヒントをいただくことはできないか。
(上脇)ビジネスモデルをまだいろいろと模索しているというのが正直なところではあるが、大きく考えるところでは、ライセンスや、当社が持っている技術、ノウハウで事業をしていくのが、高付加価値化のビジネスパターンであると考えている。もう一方では、ゴミから取り出したエタノールを実際にプラスチックの原料として販売していく、そこにブランド価値をつけて付加価値をもって販売していくのがもう一つのビジネスパターンとしてある。大きくはこの2つのビジネスモデル、いずれであっても、当社として資源循環価値というものを適切に訴求して付加できれば、プレミアムと呼べる事業にしていける可能性は充分高いと考えている。
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プレミアム枠の製品について、伸ばしていくのはもちろん良いが、一方で競争力を失っていく、成長性がなくなっていく、そういう製品もあると思う。社内で、撤退などの基準を定めているものがあれば、ご紹介をお願いしたい。そういうもののウェイトは、どれくらいあるのか。
(清水)成長性を失った製品、事業については、当社としては資本コスト7~9%ということに対して、ROICがそれを下回った時点でアラートを鳴らす。また、収益性については例えば高機能プラスチックスでは営業利益率5%以下になると撤退対象という段階となり、GO、STOPの判断をしている。
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製品ポートフォリオについて。ニッチな市場で、競争優位性のある高シェア商品群、それらがたくさんある、そのポートフォリオの集合体が御社であると思っている。ただ、それを高機能プラスチックスとか、環境・ライフラインとかセグメンテーションしていくと、そのシナジー効果が今ひとつよくわからない。自動車なら自動車向け、住宅なら住宅、向け先別の様なセグメンテーションにされたほうがわかりやすいのではないか。御社独自のセグメンテーションと、製品別の様なところのマトリクスとが、わかりづらいことの、今後の改善の可能性はないか。
(清水)セグメント間のシナジーについて、例えばペロブスカイト太陽電池では、要素技術は高機能プラスチックスカンパニー、施工ということになれば環境・ライフラインが得意な領域、ということになる。将来的な使い方のアイディアの一つとして、例えば現在セキスイハイムに乗っているソーラーパネルの、20年、30年経ってくると出力が下がってくるところへ上から貼ってしまうとか、そういった活用もできると考えている。
(岡野)マトリクスについては、今後の開示の仕方の課題と認識している。ご指摘の通りセグメント別でご説明をすることが多いが、例えばその中でのシナジーということで顧客別でお見せするとか、今後の開示方法で工夫をしていきたい。
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DXで200億円を使って、効率を上げるというご説明があった。これがサステナビリティに貢献するというのは、製品を早く世に出すことによってお客様も環境負荷を下げることができるし、会社としても事業機会を適切に取っていける、そういった考え方でここに入っているという理解で良いか。
(清水)MIについてはご指摘の通り、これを活用して速く開発を進めて、早く世の中に出していくということが1点。もう一つ、生産工程にいろいろなセンサーを取り付けることによって、品質の変動や、機械の変動などをいち早く、事前に予測しながら、トラブルの件数を劇的に減らしている。安定した品質のものを継続的につくれる様に、そういったこともDXの一環として進めている。
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MIの活用で、5ヶ月が4時間になるというのは、凄まじい効果だと思う。これは、実験計画をほとんど飛ばして、ディープラーニングで最適化したものを最初から抽出することができて、その確認実験をするだけでスペックインができる様な、そういったレベルまで進んでいるということか。そこまでのディープラーニングのためには、かなりのデータインプット、データの標準化の必要があると思われ、それが200億円の枠内で達成できるというのは本当に素晴らしい。なぜそんなに高い、標準化の生産性が達成できたのか、教えていただきたい。
(清水)MIの活用については、200億円の外数で進めている。R&D部門に専門部隊を設置して、かなりの経営資源を投入しながら、人材も投入して、日本でも先頭グループを走るかたちで活動している。様々なデータをインプットして、ほぼシミュレーションでできて、最終的に確認実験をすれば完成に持っていける、それによって開発の速度を上げることができる。開発で遅れを取ることにならない様に、ここにはかなり力を入れて取り組んでいる。
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MIで900倍に生産性を上げる、シミュレーションでほとんどできてしまうのは、御社がノウハウとして持っているものがあるのか。競合や、ノウハウを持っていない人がやってもそうはならない、という理解で良いか。
(清水)当社単独ではなく何社か集まって、共有できるデータは共有するということもある。当社がノウハウとして持っているべきデータは、当社の中でやっていく。差別化できているデータの数を増やして、いろいろなシミュレーションができる様になっていく。
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プレミアム枠を含めた、サステナビリティ貢献製品でしっかり儲けていくためには、不要なディスカウントを行わない、適切な価格設定が極めて重要だと思われる。御社の場合は、お客様のためにスペックインしたスペシャリティ製品がほとんどであり、そこはコモディティではないので、お客様との話し合いで適切なバリューが取れているという理解で良いか。将来にわたって、高い値段、適正なバリューが取れる背景について、教えていただきたい。
(清水)特にプレミアム枠の製品については、オンリーワン、もしくは競合がごく少数という世界である。当社として、これだけの市場価値があるという価格を提示して、使っていただく。量が増えていくことで、ある程度のボリュームディスカウントはあるが、最初に製品の価値を理解していただくことが重要であると考えている。
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畑中社外取締役がおられた業界では、薬価等によって価格は適正に維持されるものと理解している。その業界と、積水化学の業界とを比較してみた場合に、積水化学の製品群は類似のレベルまで付加価値が取れていると見ているか。価格交渉力があって、まだ進歩の余地があると見ているか。
(畑中)以前携わっていた医薬品の業界では、日本やヨーロッパの一部の国には公定の価格があるが、最も成長性が高くて利益率が高かったのは米国の市場で、ここでは、自社が提供する付加価値をマーケットにしっかり訴求していく取り組みをしていた。日本のマーケットでも、価格が下落する制度的構造はあるが、各社とも自社の薬剤の価値をきちんと訴求していく方向へ動いているものと認識している。当社においても、特にサステナビリティ貢献製品のプレミアム枠など、成長している製品は非常に価格競争力が高い。また競合に対しても優位な状況にあると認識している。製品がコモディティ化していく中でその状況に応じて価格が下がっていくことはあり、価値があるうちにしっかりと収益性を確保するのが大事なことであると、私自身は考えている。
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御社の知的資本、特許資産への評価は高い。この知的資産を、フルに活かせているというご認識か。これだけの高い評価からすれば、時価総額1.2兆円よりももっとポテンシャルがあるのではないかとも感じるが、価値の具現化のボトルネックの様なものが何かあるのか。知的財産の活用、企業価値への具現化、そのための課題について、ご説明をお願いしたい。
(清水)知的財産については、これまでも重点的に費用をかけて進めてきている。以前は量を出そうとしてきたが、現在は質への転換を進めてきている。当社が特にこだわって、重要と考えているのは、他社排除にしっかり使えているか。例えば先般、中間膜の特許で、競合が当社の権利を侵害しているという案件をパブリッシングした。この様な他社排除ができる特許を増やしていく。知的財産の資産規模もしくは他社牽制力で、外部から評価されていることと自負している。
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特許資産規模の数字は貨幣的価値に置き換えられるものではないが、御社の競争力を守る障壁の高さととらえれば良いか。
(清水)そのご理解で良い。