2025年01月15日更新
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今後、利益のカーブはどの様になっていくのか。今年度は十数億円赤字のご計画だと思うが、この赤字は拡大するのか、縮小していくのか。はっきりした数字は難しいかも知れないが、2030年度の収益性はどうなっていくのか。利益についてコメントをお願いしたい。
(上脇)まだこれから建設を始める段階であり、当面は赤字の計画となる。28年、100MWの工場が立ち上がって、フル生産くらいの量になる頃に黒字に転化できると考えている。1GWになる頃には、量産効果、コストダウンが期待でき、概算ではあるが営業利益率10%くらいの事業にしていけるのではないかと考えている。
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28年、100MWで、売上高250億円の計画とのことなので、モジュールの価格としてはKWで25万円になる。耐久年数10年、1KWで1,000KWh発電できるとすると、これで25円になると思う。ここにはパワコンなど他の費用は入ってないとすると、お客様の発電コストは40円か50円か。かなり高くなってしまうのではないか。それで普及するのか。
(上脇)100MWは、まだ普及期にあたると考えており、ユーザーから見たコストはシリコンに比較して高い状態にあると見ている。ただ、ユーザーに対する政府の補助がある程度期待できると想定しており、それを利用しながら、シリコンと同等程度の価格で、ペロブスカイトの質の高さで選択していただけるかたちをつくっていくのが、28年のイメージととらえている。
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どういうところから狙っていくのか。体育館、工場、ビル等とあるが、ほとんど屋根という理解で良いか。壁とか窓とかの、側面へも使うのか。側面ではより発電できなくなる分、ユーザー側のコストは更に高くなってしまうと思われるが、それでも大丈夫なのか。
(上脇)導入の初期、政府によるユーザー補助をある程度期待しながらになると、公共施設や、防衛拠点などが一つのターゲットになってくる。屋根の耐荷重がそれほど高くない、シリコンが載せられない施設が非常にたくさんあり、100MWの出荷先としては軽量性を活かして、そういったところを第一優先で狙っていきたいと考えている。
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1KWのシステムは、何㎡くらいなのか。
(森田)単純計算で言えば、変換効率が例えば15%であれば、発電に寄与する有効面積1㎡で150Wになる。当社の目標通り20%までいけば、1㎡200Wということになる。
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2030年の発電コストはどれぐらいになるのか、もしあれば、2040年ではどれくらいの発電コストになるのか。経済産業省が発表している資料では、発電コストあたりで需要の予想がだいぶ違う様にも出ているので、御社がどう見ているのかを知りたい。
(上脇)2030年、1GWで、ユーザーから見た発電コストは、材料、施工、廃棄とかのトータルのライフサイクルでのコストを換算して、シリコン同等を狙えると考えている。2040年には、20GWという大きな単位になってくるので、トータルコストでシリコンを下回ることが期待できると考えている。
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発電コストは、2030年には14円/KWhくらいまでいけるという理解で良いか。
(上脇)30年では、20円程度かと現時点では見ている。14円までには、更なる量産効果が必要ではないかと考えている。
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生産工程のどこまでを、御社で内製化するのか。経済産業書の補助でも装置に対する補助金などがついていると思うが、外から購入してくるものはどういうものがメインとして大きいのか。そういったものがネックになる様なことはないのか。
(森田)まずスタートの段階では、安定や信頼性が大事になってくることから、バリアフィルムなどの、コストが比較的高いものに関しても外部調達になると思う。ただバリアフィルムなどについては、コストの比率としても非常に高いということを念頭に置いて、当社としても何年も前から開発をスタートさせている。サプライヤーとの関係もあり、量が増えてコストがどこまで下がるのかということを見極めながら、導入のタイミングを定めていきたい。耐久性の技術開発に関しても、バリアフィルムや封止材はキーになる。NEDOの目標としては来年度までに耐久性20年を目指すとしており、それを量産ベースでどこまで安定的に持っていけるか、開発目標としてしっかり見定めて進めていきたい。2030年の1GW級になる頃には、内製化を前提にしたいと考えている。
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海外展開について。ここまでのご説明では国内がメインだと思われるが、将来的には海外展開を考えているか。また、海外との競合についてはどうか。中国メーカーなどがかなり出てきていると思うが、海外に展開した時には勝負になるのか。
(加藤)日本でも経済安全保障の観点から、ヨウ素が原料であるペロブスカイトの重要性は増しているが、海外においても、中国製のシリコンパネルが市場を独占しているのを阻止したい、特に欧米での関心は非常に高いであろうと認識している。当社の例えば中間膜事業では市場での需要が獲得できるまでは輸出対応をして、現地でパートナーを見つけて普及をさせながら、一定の需要が見込めた時点で現地で工場を展開するといった経験を、これまでもしてきている。旺盛な需要、各国の経済安全保障の観点などからも、海外展開も充分ありうると考えている。
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耐久性20年に向けての課題についてお伺いしたい。素材としてのバリアフィルムや封止材の問題なのか、もしくは組み立ての話なのか。
(森田)バリア、封止といったあたりの技術課題については、性能だけで言えば耐久性20年の目途はもうほぼ立っている。コストをどれだけ上げずに、それを達成するかということが非常に重要になる。ペロブスカイトは水分に弱いと言われているが、光にも熱にも弱い。ガラスで完全に封止しても、光だけでも劣化するといったこともあるが、当社では封止材だけではなく、発電層の材料まで踏み込んで、解決を図っている。更に湿度に対しての長期劣化、耐久性を、コストと合わせながら考えていく。量産効果でどれだけコストを下げられるか、政府のサポートも受けながら、ここは加速して進めていきたいと考えている。
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発電層にはヨウ素を使うと一般的には言われているが、少し前にはヨウ素ではなく臭素を使って効率が上がるといったことが、海外での論文などで出ていたと思う。もうヨウ素で決まりという話なのか。技術面から教えていただきたい。
(森田)大学連携の中では、まだいろいろと選択肢としては残っている。ただ当社としては、効率を上げるだけではなく、耐久性を重要視しており、変換効率だけを追求しても、屋外ですぐに劣化してしまったり、RtoRでつくっている数百mのあいだに劣化してしまったりする材料を選定していたのでは、時間の無駄ということになる。耐久性を最優先に、耐久性があるもので変換効率を上げていきたいという戦略で、10年前から進めてきている。
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コストを上げずに耐久性を向上するのは、RtoRの歩留まり、広幅、量、こういったところが重要になるという理解で良いか。
(森田)ご理解の通り。耐久性を考えた上で、発電効率を上げて、いかに発電コストを下げるか。太陽電池そのものの値段を下げるというより、長くメンテナンスフリーで、廃棄までの製品ライフサイクル全体でどれだけ抑えられるか。円/Wではなく円/KWhで、どれだけお客様に貢献できる太陽電池を提供できるか。そういった、全体を見た上での開発というところに重点を置いている。
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将来的に1GWという事業展開の中で、ヨウ素の調達に関して問題になることはないか。また、日本はヨウ素でチリに次いで生産量が多い、そのことが一種の参入障壁になるという言い方を経済産業省などではしているが、それが本当に日本の強みになるのか。日本のヨウ素の濃度の高さが今のところ工業的に見合っているというだけで、海外で濃度が薄くても、うまく抽出すれば手に入らないものではないといった印象も持っている。そのあたりの知見について教えていただきたい。
(森田)従来のシリコンの太陽電池の発電層の厚みが100μmあるのに対して、ペロブスカイト太陽電池は何層も塗って合わせて1μmもない。材料としては極めて少なくて済むため、ヨウ素の調達について心配はないと考えている。しかし、これがあるから海外を抑えられるというものではないと思う。ペロブスカイト太陽電池は、シリコンの太陽電池の様に、シリコンウエハーとガラスといくつかの材料を持ってきたら完成というものではなく、材料、プロセス、加工などの、日本企業の得意とするところを全部あわせた太陽電池で、中身で勝負していくべきものであり、そういう意味での参入障壁は相当あるのではないかと考えている。
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御社の住宅の結晶系の太陽電池が劣化してくる頃にペロブスカイトを載せるというご説明があったが、どれくらい現実的に考えているか。
(加藤)可能性として、シリコンの太陽電池の寿命がくる2030年代後半で、新しい法制化による廃棄でのガラスの分離など、ライフサイクルコストが上がってくるのではないかと見ている。例えば大規模な発電事業でシリコンの寿命がきた際に、日当たりの良い向きで、架台も配線もあることから、その上にペロブスカイトを貼りつけることが可能になれば、廃棄の先送りができる可能性はあるものと考えられる。国の法整備や、実際に載せた場合の効果影響などを見ながらにはなるが、充分に可能性はあるだろうと見ている。
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生産ラインの今後の計画について、第1生産ライン100MWの投資額900億円から、第2ラインで430億円に減るのはなぜか。更に第3ラインでは600~800MWが、本当に1,800億円で済むのか。3,100億円超の投資額の内訳について補足をお願いしたい。
(上脇)第1期には、建物の約250億円が入っている。また初期のユーティリティ、システムなど、生産を始めるための基盤の投資がかなりのウェイトで入っているため、第2期に比べて高く見えている。第2ライン、第3ラインにおいてはほとんどが設備を追加していくという内容になることが、増加幅が少なく見える理由である。
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第2ラインは需要動向から投資判断ということであるが、どういったところが見えてくればGOサインが出るのか。かなり近いタイミングとも思える。現時点でどの様な考え方か。
(上脇)投資判断のポイントとして大きいのは、一つには需要で、防災拠点などの需要開拓が想定通り進められるかどうか。もう一つ技術的にはコスト、発電効率が、マイルストーンをクリアできているかどうかが、判断のポイントになってくる。
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第2ラインから第3ラインになるときに、生産能力増分と同様に投資額が第2ラインの430億円かける6とか、かける8とかにならないのはなぜか。
(上脇)第3生産ラインになると、大きいラインをつくることになる。その設備の大きさによる効果であると考えていただいたら良い。
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このペロブスカイト太陽電池が近々にセキスイハイムに乗ってくるという計画は、今は考えられていないという理解で良いか。
(加藤)優先順位ということでは少し後になると思う。25年度から現有設備で、例えば全国の防災拠点などの屋根に施工していく。それに対する政府からの補助金や、需要などが明確になってくれば、100MWではおそらく足りないと考えられるので、第2ラインはそういったところで判断していくことになるだろう。当面、第3ラインの1GWで自立してシリコンと同等というところまでいくまでは、補助金を活用して設置するところが優先的になってくるだろうと考えている。
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第1生産ラインが本稼働する前の現時点で、年間どれぐらいの生産能力があるのか。
(森田)現時点ではメーター幅の技術開発を進めており、そのラインができあがると、100MWのちょうど1/10ぐらいの生産量になる。それで市場検証等の事業化をスタートさせる。
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御社だけがRtoRであるとのご説明があった。シリコン型の太陽電池も基本的に枚葉でつくられていると理解しており、RtoRで生産性が高いにもかかわらず、なぜそれほどのコストになるのか。真空における蒸着プロセスという、有機ELと同様のチャレンジがあるものと推測するが、それ以外にも何か大きなチャレンジがあれば教えていただきたい。有機ELと類似のチャレンジであるとして、現在、材料費が圧倒的に安価であるはずの有機ELパネルがあまり普及していないのは、RtoRの真空プロセスを扱うことの難易度が高く、コストダウンが困難であるからと理解している。御社のペロブスカイトはそのハードルを越えられそうか。それ以外にも何か大きなコストダウンの障壁があるのか。
(森田)真空プロセスがコスト的なネックになるとは当社としては考えていない。当社の発電層はトータルでも1μmない程度で極めて薄く、そのため真空成膜と言ってもかなりの速度で流すことができる。太陽電池のセルの部分はコスト的にはウェイトが低く、モジュールにするときの封止やバリアフィルムなど、実は周辺部材のほうが高い。真空プロセスも含めてすべてRtoRであって、開発が進めばロールのスピードは速くなるので、同じ装置で生産できる量も増えていく。全体のコストに占める材料の割合が比較的低いことから、生産性を上げていけばコストは下がっていく。そのため将来はシリコンに勝てるという考え方をしている。
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封止材は要するにフロントエンドとバックエンドの2枚のフィルムと思う。現在それが高いのは市場が小さいからであって、市場が大きくなれば量産効果が出るはずである。コストも劇的に下がるのではないかと期待するが、その理解は正しいか。
(森田)仰る通り。下げしろはかなりあり、そのためある程度のところからは自社でやるべきだと考えている。当社にはそういう技術があるので、そこは課題でありながら、実は永続的な競争力の源になると考えている。
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構造からすると、おそらくバンドギャップがいくつかあって、シリコンの様に単一の変換だけではないと認識している。変換効率が同等の場合、ペロブスカイトのほうが変換を行うことができる時間が長くなって、実際の発電量は大きくなると理解しているが、その理解は正しいか。
(森田)仰る通り。ここも当社としては競争力の根源であると考えている。現時点では、ペロブスカイト太陽電池の発電効率を測る国際基準がなく、そこに出せる耐久性を持っているものが当社のものしかない状況であると当社では見ている。現在、この測定で行こうという基本の素案の様なところまでは来ており、おそらくそれが国際標準になっていくだろうと考えている。そういった枠組みなども抑えながら、耐久性も含めて、国際標準策定についてもリードできればと考えている。当社だけでなくいろいろな関係機関、JET、JEMAなどとともに、そのあたりの構築も図っている。
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環境面について。極少量ながら鉛を使うということが、今後の量産に対して障壁になることはないか。リサイクルも含めて、ご説明をお願いしたい。
(森田)ヨウ素とともに鉛が含まれているということは課題だと考えている。ただし非常に量は少なく、これが実際に環境に対してどれだけの影響を及ぼすかという環境影響評価を進めている。並行して環境関係の有識者とも議論しながら、そのあたりがはっきりするまでは、まずは公共の、当社が責任を持って回収できるところから始めようという考え方をしている。リサイクルをするのは簡単だが、量があまりにも少ないために、リサイクルしようとするとかなりの量を集めないといけないということになる。例えば当社で開発を進めているバイオリファイナリーの技術とあわせて、少しずつの鉛を集めて何かするといったことは、考えられるかも知れない。ペロブスカイト太陽電池を10000㎡集めて、鉛蓄電池1個分なんとか集まるぐらいなので、量的には微々たるものである。今後どの様にしていくかという問題はあるが、基本的に現時点では、当社が責任を持って最後まで処理をするというスタンスで考えている。
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非常に軽量で、体育館などの、シリコン型が乗らなかったところにも載せられることはよくイメージできた。フレキシブル性については、曲げられることで、どこの用途で展開できるのか、具体例があればお伺いしたい。
(森田)基本的に太陽電池は建物よりも寿命が短いため、途中の交換のしやすさを前提に考えると、軽いということは大きなポイントになる。形状追随という点で、いろいろな形にあわせて設置ができるということは言える。シリコンであれば架台をつけないといけないところにでも設置できるとか、ビルの壁面でもレールに沿って屋上から一気に設置できるとか、14円/KWは施工などもあわせたトータルコストで、それをいかに安く抑えるかが、パートナーを含めての非常に重要な課題になる。
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ビジネスモデルとして、シリコン型太陽電池と何が違うのか。15年前、20年前に国のサポート、FITもあって盛り上がったが、いつの間にか国産メーカーは赤字、撤退という状況になってしまった。その再来にならない違いがどこにあるのか、あらためてお伺いしたい。
(加藤)一番の違いは、シリコン型太陽電池は原料の大半を中国に依存していたというところ。原料を輸入する必要があり、原料を持っている中国の圧倒的なコスト競争力に劣後したというのが大きい。当社のペロブスカイト太陽電池の場合、原料は国内で手に入り、またコストの高い封止も将来的には内製化によってコストが充分下げられるだろうと考えている。もう一つ、日本にはもう平地がほとんど残っていない点もある。現状、シリコン型は地方のゴルフ場や畑で発電して、都市部、需要地に電気を運ぶため、送電のロスやコストがかかっている。それに比較してペロブスカイトによる地産地消は、圧倒的な強みではないかと認識している。少し先にはなるが耐荷重性が低い個々の家の屋根にも載せられる様になっていくと、優位性、棲み分けができて、充分にビジネスとしてやっていけることだろうと判断している。
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発電層を作る会社と、プロセスを回す会社との2社があれば対抗しうるのか。御社の、どちらも持っているということの強みは理解しているが。
(森田)当社の装置そのものは、トータルコストを下げなくてはいけないということもあって、それほど特殊なものは使っていない。ただ、それに合わせた材料との合わせこみや、装置自体も改造やマイナーチェンジをするなどして、材料とプロセスとを両方で仕上げてきたというところが、当社の強みと考えている。