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今年度の株主総会を経て取締役会は、監督に専念する取締役6名(うち、社外取締役5名)と、監督と執行の責任を持つ取締役3名の9名となり、監督に専念する取締役の比率、社外取締役の比率、いずれも過半数を超える新たな取締役会体制へと移行しました。
今回、社外取締役5名が、新体制への期待や今後の課題、中長期の成長に向けた考えを語ります。

新体制へと移行しますが、改めて、取締役会への期待、皆さまが活動において意識されていることについて、ご自由にコメントいただけますでしょうか。

大枝取締役会の本質的な役割のひとつは、経営を担う執行を監督することです。今回の体制変更によって、監督と執行の役割分担がより明確になりました。取締役会は監督に徹し、執行は大きな権限を持って経営の実行に専念する。そして、双方が円滑なコミュニケーションを取りながら、適度な緊張感を持ってそれぞれの役割をしっかりと果たしていくことが重要であると考えています。

野崎経営の根幹は、企業価値を持続的に高めていくことにあります。そのためには、株主、お客様、従業員、サプライヤーをはじめとする、あらゆるステークホルダーにとって価値ある企業であり続けることが重要です。今後はより一層、各ステークホルダーにどのような価値を提供できるのかという視点が欠かせません。私自身は、一人の生活者の視点から、「社員はどう考えるだろうか」「お客様各位はどう受け止めるだろうか」という視点を常に意識しながら、取締役会で議論を重ねています。

肥塚新体制における取締役会の構成も、委員会の構成も、我々社外のメンバーが加わって討議を重ねたうえでの結論です。新体制となったことで、取締役会はガバナンスの強化と持続的な成長の両面でより機能する体制になったと思います。監督機能を果たすためには、厳しい指摘をすることもあれば、適切な提案を認め、承認することも必要です。そうしたメリハリのある議論を重ねられる取締役会になっていると感じています。

宮井監督と執行を分離した大きな意義として、意思決定のスピードを高められることがあります。今の時代はリスクを適切に取りながら、市場の変化を捉えて素早く打って出ることが求められる時代です。だからこそ、執行はスピードある意思決定と実行に専念し、取締役会は透明性と客観性を担保しながら判断し、執行の実行性を高める。それぞれの役割を明確にすることに、この新しい体制の大きな価値があると思います。

畑中執行と監督、取締役会のあるべき関係性は、企業が何を目指し、社会にどのような価値を提供しようとしているかによって変わるものだと考えています。当社は、サステナブルな社会の実現のために、サステナビリティ貢献製品の創出と市場拡大を加速することを経営目標としています。その実現に向けて、新事業領域の創出、現有ポートフォリオの見直し・強化に必要な投資を、執行側が柔軟かつ機動的に投資判断を行えるよう後押しすることも、取締役会による監督の重要な役割だと考えています。

現在の取締役会をどのように評価し、今後どのような進化が必要だと考えていますか。

大枝当社の取締役会は私が在任しているこの8年間で環境の変化に合わせて着実に進化を遂げ、実効性、および透明性両方の観点で高い水準にあると考えています。また、毎年の取締役会実効性評価を通じてPDCAサイクルを回し、継続的に改善を続けていることも評価できます。

畑中各カンパニーが自律的に経営を進め、高い競争力を発揮していることは当社の大きな強みだと感じています。一方で、今後はカンパニーを横断したリソース配分やグローバルベースでの最適な資源配分について、さらに議論を深めていく必要があります。将来的に海外売上高比率がさらに高まり、日本の売上比率がその経済規模に見合う比率に変化していく事業構造になれば、グローバルな視点でガバナンスや経営資源を配分することが自然と求められるようになります。取締役会においても、そうした将来を見据えた議論を積極的に提起していきたいと考えています。

独立社外取締役 大枝 宏之

大枝手前味噌になりますが、現在の取締役会は社外取締役5名全員が企業経営の経験を有し、それぞれ異なる知見を持つ多様性に富んだ最適な構成になっています。全員が熱意を持って業務にコミットしているのは当社の強みだと考えます。

野崎私もその点は強みだと思いますし、実効性という点では、執行側が社外役員からの質問に十分答えられるよう丁寧に準備していることは高く評価しています。一方で、提案段階できれいに議案がまとまりすぎている印象を受けます。取締役会の場で、「この観点はどうなの?」「ここはどうなっているの?」とカンパニーと取締役が活発に質問や意見を交わすことで、取締役会はさらに進化できるはずです。様々なバックグラウンドのメンバーが集まっているからこそ、その知見やスキルをもっと活用できたらと思っています。

新中期経営計画「Accelerate 2028」の策定において、社外取締役はどのような視点で議論に参加しましたか。

畑中当社は、自ら目指す事業の姿と社会に提供したい価値が明確に一致している会社です。今回の中期経営計画でも、長期ビジョン「Vision 2030」を踏まえてどのような投資を行うべきか、組織能力をどう強化すべきかに焦点を当てて議論してきました。とりわけ、革新領域での事業創出と将来の成長力を重視する当社にとって、イノベーション創出のため時間と能力のギャップを埋める手段であるM&Aは極めて重要なテーマです。

肥塚3年後、5年後の成長については、着実に業績を伸ばし、計画どおりの成果を上げていけると信頼しています。一方で、10年先を見据えたさらなる成長を考えると、その鍵を握るのはやはりM&Aです。前中期経営計画ではM&Aの投資枠を使い切れませんでしたが、執行側が着実に検討を進めていることは理解しています。だからこそ、スピード感を持って案件を提案いただき、それを取締役会で十分に議論する。その積み重ねが何より重要だと考えています。

畑中そうした視点から中長期の成長戦略を議論できたことが、今回の中期経営計画策定における大きな特徴であったと思います。

独立社外取締役 野崎 治子

野崎次世代の人材育成という観点でも、後継者の充足率などの指標に着目した取り組みが進められています。ただ、現状ではその視点も5年先にとどまっています。しかし、10年後には事業ポートフォリオが大きく変化している可能性もあります。人材面でその変化に柔軟に対応できるかどうかが、今後の成長を左右する重要なポイントだと考えています。一方で、不確実性の高い時代には、取り組むべき施策(To Do)は環境変化に応じて迅速に見直していく必要があります。同時に、当社がありたい姿(To Be)は長期的な視点で組織全体で共有しなければなりません。その目指す姿を、明確でわかりやすい言葉で発信し続けることが重要だと感じています。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池にどのような期待を寄せていますか。

宮井フィルム型ペロブスカイト太陽電池は社内だけでなく社外からも大きな期待が寄せられる中、今年からいよいよ事業化のフェーズに入りました。ESGのE(環境)は国境を越えた社会課題であり、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、再生可能エネルギーの切り札ともなり得ます。技術を確立できれば世界にも打って出られる競争力を持てるでしょう。さらに、経済安全保障の観点からも意義の大きい事業です。私はこれまでの経歴の中で、日本が太陽光パネルで世界的にリードしていたところを中国に追い越されてしまった苦い経験をしています。その悔しさもあって強く感じるのですが、ペロブスカイトの主原料であるヨウ素は日本が世界有数の産出国であり、原料を自前で確保できれば、他国に供給網を握られるリスクを避けられますので、ぜひとも当社がリーダーシップを取って日本で事業化を進め、いち早く世界に打って出られる事業へと成長してほしいと期待しています。

畑中フィルム型ペロブスカイト太陽電池は当社にとっても社会全体にとっても大きな価値を持つプロジェクトです。だからこそ重要なのは、意思決定のスピードです。競合各社も急速に技術力や社会実装力を高めていますし、多くのステークホルダーが関わるプロジェクトだからこそ、意思決定のスピードを失ってはなりません。将来が見通せない中で判断する以上、どこまでリスクを取れるかが問われます。このプロジェクトの成功には、当社の強みである今の事業構造が持っているリスク許容度の高さを生かし、思い切ったリスクテイクを行うことが不可欠です。

大枝私も、これほど有望な市場が世界中に広がる新製品は、50年に一度のレベルだと考えています。あらゆるリスクを取って、資金も人材も積極的に投入して挑戦する価値は十分にあります。ただ、心配なのは中国の存在です。長期的に、中国企業から日本市場をどう守るかという視点は欠かせませんが、一方で、日本市場を守るだけでなく中国勢に先んじて海外市場に打って出ることを期待しています。清水社長も社長就任の会見でおっしゃっていましたが、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は当社の社運をかける事業です。

宮井おっしゃる通りだと思います。中国企業に先んじて当社がこの分野でリーダーシップを取るためには、自社だけではなくパートナー企業との連携が不可欠となりますから、その際には、スピードを優先するのか、採算性を重視するのか、そのバランスの見極めこそが経営の役割であると思います。世界に打って出るためにはスピードを優先することも必要ではないかと考えています。

当社のESG経営をどのように評価し、今後どのような進化を期待していますか。

独立社外取締役 肥塚 見春

肥塚当社は、サステナビリティ貢献製品が売り上げの大きな割合を占めるなど、経営と結びついたESGを実践している会社だと思います。特に環境分野への取り組みは着実に進んでおり、その方向性をしっかり監督していくことが取締役会の重要な役割です。一方で、今後さらに強化すべきテーマが人材です。ダイバーシティの観点では、経営人材のパイプラインやキャリア採用、女性管理職の育成などに課題があり、執行側もその必要性を強く認識しています。

宮井私自身も当社の経営に加わって、これほどESGに誠実に取り組んでいる会社はそう多くないだろうと強く感じています。10年間の長期ビジョンを掲げ、組織全体で共有してきたことも大きかったのでしょう。トップから現場まで、その考え方がしっかり浸透しているのは大きな強みだと思います。一方で、誠実さゆえに取り組みが総花的になっていた面もありました。ESGは企業価値を高めるための経営そのものですので、これからはより「攻めのESG」へ転換していくべきではないかと申し上げてきました。サステナビリティ貢献製品はその一丁目一番地です。その価値を社会にわかりやすく発信していくことが、企業価値のさらなる向上にもつながるはずだと思います。

今後の成長に向けて、どのような人材が必要だと考えていますか。

肥塚フィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界と戦っていくには、海外営業やロビー活動を担う人材など、これまで以上にグローバル人材の育成が重要になります。さらに、当社には第2、第3のフィルム型ペロブスカイト太陽電池となる技術の種も育っています。それらを事業へと育てていくことも見据え、長期的な成長に必要な人材をどう育成し、キャリア採用でどう獲得していくかについて、取締役会でも議論を重ねています。

野崎特に海外マネジメント人材は、早い段階で海外へ送り出し、実践を通じて育成することが重要だと考えます。「100人送り出して10人が残れば十分に成功」というくらいの覚悟で、資本的にも人材的にも余力のある今のうちから取り組むべきです。

大枝コーポレートの人材、特に幹部人材はカンパニーの人材と比較すると強化の余地があると感じています。DXやAIなどの専門領域では、外部から執行役員クラスを登用する企業も増えており、今後はキャリア採用も重要な選択肢になるでしょう。また、女性や外国人についても、管理職層では着実に育成が進む一方、経営層ではまだ十分とは言えません。執行役員としてキャリア採用、女性、外国人を含む多様な人材に活躍していただきたいと思っています。

社員一人ひとりの挑戦を促すために、どのような組織づくりが必要でしょうか。

野崎人材育成では、これまで進めてきた挑戦文化をしっかりと根付かせ、本人の力を試す機会を与えることが重要だと思っています。社内異動や新規事業への手挙げ、社内コンペといった仕組みはすでにありますが、全体的に制度設計がやや細かすぎる面があります。もう少し遊びの部分が増えれば、社員がより伸び伸びと力を発揮できるのではないでしょうか。

独立社外取締役 宮井 真千子

宮井同感です。当社は技術に立脚した会社であり、しっかり管理されている点は良い面ですが、管理し過ぎてやや遊びの部分が少ないと感じています。もっと「余白」をつくることも必要ではないかと思います。

野崎挑戦とは0から1を生み出すことだけではありません。10を100にすること、100を1000にすること、品質を一つひとつ改善していくことも、同じように挑戦です。そうやって、あらゆる場面で小さな挑戦を重ねていく。もちろん失敗もありますが、日々の挑戦によって小さな失敗を積み重ねておく方が、大きな失敗の回避につながります。実際、当社ではトップ自らが、従業員に失敗を恐れずに挑戦していくことを推奨しており、それが着実に実を結んできています。

宮井着任して4年になりますが、私も「挑戦行動」という考え方が全社員に正しく理解され、定着してきたと 実感しています。

最後に、当社が持続的な成長を実現するために、最も大切だと考えることを教えてください。

独立社外取締役 畑中 好彦

畑中「Innovation for the Earth」を掲げる当社には、革新的な技術や興味深い研究テーマが数多く生まれています。一方で、それらを迅速に事業化し、グローバル市場へスケールアップしていくには、社内の人材を育成するだけでなく、外部の力も積極的に活用していくことが大事です。また、人材育成という観点では、私自身、前職の経験からも、人は育成制度以上に製品であったり事業によって育てられることの方が多いと感じています。この観点から、中間膜事業やフィルム型ペロブスカイト太陽電池事業など今の成長牽引や成長期待事業そのものが、企業価値を高めるだけでなく、人を育てている面はとても大きいと思います。そうした挑戦の機会をさらに広げていくことが、当社らしい人材育成につながるのではないかと感じています。

野崎外部の力を活用するには、“自前主義”を捨てることも大事だと思っています。当社は技術の際立ちで成長した会社であり、技術力を大切にする社風です。ただ、イノベーションには起承転結があり、「起」で0から1をつくり、「承」でそれを大きくしていく。今は「起承」のあたりに、少し意識が行き過ぎているのではないかと感じることがあります。ペロブスカイトの協議会での取り組みを考えても、当社の一番の強みが何なのか──封止技術や耐久性、実証技術、調達力や施工力、挑戦力なのか──を見極め、他社の強みと組み合わせて世界のデファクトを目指すべきです。技術面の際立ちを支えるチャレンジングで粘り強い人材など、グループのもつ多様な強みを再点検してもよいのではないでしょうか。

宮井おっしゃる通り、当社はカンパニー基軸の経営ではありますが、カンパニーとカンパニーの間に面白い種が眠っているようにも感じています。コーポレートの視点で人材やR&Dなどを横断的に見ていくことで、グループとしての価値がさらに上がるはずです。

大枝当社の直近の規模や成長率を考えれば、よくぞここまで人材が自前で育ったと感じます。人を育てるという当社の文化を大切にしながら、当社が一段上の成長を遂げられるよう、私は社外取締役として引き続きその挑戦を後押ししていきたいと思います。