社長メッセージ

更新日:2021年8月31日

2030年の業容倍増に向け、
ESG経営の浸透とともに、
グループ社員一人ひとりの
挑戦を引き出し、
イノベーションを加速させます

2021年6月
代表取締役社長

2020年度は世界各地で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、私たちのこれまでの常識、生活様式が大きく変わりました。企業も業務のデジタル化・オンライン化をはじめとする急激な変化を促されることとなり、企業活動がいかに自然環境や社会システムに依存しているかを痛感しました。

私は2019年4月から1年間、経営戦略部長として2030年までの長期ビジョンや中期経営計画策定に携わり、2020年3月に今度はそれを実行する立場として社長に就任しました。2020年度に発表したこの長期ビジョンには、「パンデミックのように想定外の出来事が起こり得る不確実な社会の中でも、イノベーションによって社会に貢献していくことを追い求め、健全な危機感をもって業容倍増という目標に向かい成長していく」という私自身の想いと決意を込めています。2020年度は、この長期ビジョンからバックキャストして策定した最初の中期経営計画「Drive 2022」の初年度として、事業環境は厳しい中でも収益力強化に努め、体質の強化と将来へ向けた成長投資を着実に進めることができました。

社長就任以来、海外はおろか国内事業所にも訪問できていない現状には、もどかしさもありますが、現場の社員一人ひとりの自覚ある行動により、通常通りの操業が維持できていることには、大変感謝しています。こうした社員一人ひとりに長期ビジョンを理解し共感してもらえるよう現場とのコミュニケーションを図り、目標に向かって挑戦することを促す体制をつくることは、私が果たすべき重要な役割と認識しています。

今後も引き続き新型コロナウイルスの影響が継続する前提で、積水化学グループは一丸となって、成長に向けて果敢に挑戦してまいります。まずは今中期経営計画最終年度の目標達成に向けて、一段とギアを上げていく所存です。

2020年度:上期はCOVID-19影響を大きく受けるも
収益力強化等の自助努力の継続と市場環境の改善で下期は前年同期並みへ回復

中期経営計画の初年度の2020年度は、COVID-19の影響を大きく受けた上期は各セグメントともに大幅減益となりましたが、下期は高機能プラスチックスカンパニーが前年同期比で増収増益に転じたほか、住宅と環境・ライフラインカンパニーも減益幅を縮小させ、メディカル事業もほぼ前年同期並みの営業利益を達成することができました。結果、通期での売上高は前期比6.4%減の1兆566億円、営業利益は同23.5%減の673億円、経常利益は同28.2%減の626億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同29.8%減の415億円となりました。営業利益計画の700億円には届かなかったものの、固定費削減を前倒しで進め、収益力は着実に強化されたと考えています。

カンパニー別で見ますと、高機能プラスチックスカンパニーは、エレクトロニクス分野のポートフォリオ改革が進展し非液晶分野が拡大したことや、モビリティ分野での高機能品の拡販が、下期の急回復に大きく寄与しました。住宅カンパニーでは特に第1四半期にはCOVID-19の影響で大きく受注減となりましたが、第2四半期以降には受注は回復し、また年度を通じて体質強化策を進めた結果、期末に向けて減益幅は縮小しました。一方で、環境・ライフラインカンパニーでは、国内需要回復の遅れや、航空機向けシート需要の低迷が下期も継続しましたが、コスト削減等の構造改革を強力に推し進め、減益幅の縮小に努めました。メディカル事業では、国内外ともに、外来検査数が減少した影響を大きく受けたものの、COVID-19検査キットや下期に納入を開始した新規原薬の拡販に加えコスト削減に努めた結果、下期にはほぼ前年並みの利益を確保できるまでに回復しました 。これらの結果、株主の皆様に対する配当は、期初計画通り、第2四半期末に1株あたり23円、期末で同24円とし、年間では1円増配の47円と11期連続での増配となりました。

COVID-19の影響により中期経営計画「Drive 2022」は厳しいスタートとなりましたが、販売数量の落ち込みを固定費等のコスト削減努力で可能な限り相殺し、初年度は減益幅を最小限に抑え込むことができました。中でも収益力を強化できたことは、次年度以降の業績回復につながると考えています。ESG経営の基盤強化に向けて、ESG重要課題とKPIの検討を進め、ステークホルダーの皆様にもお示しすることができました。今後このKPIに沿ったマネジメントを社内にしっかりと根付かせていきます。

2021年度:ニューノーマルに対応しながら
事業をパンデミック前の水準まで回復させ中計最終年度の目標達成への道筋を付ける

2021年度は、依然COVID-19の影響はある程度残ることを前提としながらも、業績をパンデミック前の水準まで回復させ、中計最終年度の目標達成に向けた道筋を付ける年にしたいと考えています。世界的な半導体不足による自動車・エレクトロニクス関連製品の生産の停滞や、原材料価格の高騰、航空機産業の低迷など、需要の見通しには不確実な面が多くあるものの、高機能プラスチックスカンパニーでは環境配慮型の製品など、お客様からの高度なご要望に合致する高機能品の拡販を進めます。住宅カンパニーでは“ウィズ・コロナ”時代に即した商品開発を推進するとともに、Web上での集客など、ニューノーマル時代に対応した商談も強化します。環境・ライフラインカンパニー並びにメディカル事業では、内需の回復に向けた準備を整えながら、海外での事業拡大にも注力して増益を目指します。時折、投資家の皆様から、中期経営計画を見直す可能性についてご質問を受けますが、現時点では計画の変更は考えていません。中期経営計画最終年度の計画達成に向けて、2021年度の業績回復を確実に実現していきます。

私は、COVID-19が収束しても、世の中が以前の状態に完全に戻ることはありえないと思っています。だからこそ、ニューノーマルの変化に対応した仕事のスタイルを確立しないと企業は生き残れないという強い危機感も抱いています。パンデミック下で実施した感染拡大防止のためのさまざまな工夫や努力、新しい働き方・仕事の進め方を今後もしっかりと継続することで、最終年度につなげていきます。

“イノベーションを起こし続け地球とひとびとのくらしに貢献する”
という想いを込めた長期ビジョン「Vision 2030」

積水化学グループは2020年度5月に、2030年をゴールに見据えた新たな長期ビジョンを発表しました。「“Innovation for the Earth” サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、”未来につづく安心”を創造する」としたビジョンのステートメントには、グループ全体で想いを一つにしてイノベーションを生み出し、社会に貢献するという、私たちの強い意志を込めました。これはすなわち、個人と社会のLIFE (くらし、生命、ライフライン)の土台を支え、未来の世代を含めたあらゆる世代に対し、技術に裏付けされた製品やサービスを通じて、「未来につづく安心」という価値を提供していく、私たちの決意を示したものです。

成長領域への積極投資を実施
効率的な資本運用とともに利益拡大を図る

長期ビジョンでは、2030年の売上高目標を2兆円と、業容を倍増させる目標を掲げています。また、営業利益率も10%以上を目標とした利益をともなう持続的成長を目指しています。これはオーガニックな成長だけでは達成の難しい挑戦的な数値目標ですが、新事業の育成やM&Aによる事業拡大を図りつつ、国内では2017年度から2019年度までの前中期経営計画期間の売上CAGR(年平均成長率)1%超の水準を、海外では2002年から2019年までの売上CAGR11%超の水準を2030年まで継続させることで、十分に達成が可能だと見ています。中でもM&Aについては海外成長を意識しながら主にモビリティ分野とメディカル分野を中心に検討していきます。現中期経営計画下では、適切な案件があれば積極的にM&Aを検討できるよう、予算枠として3,000億円を設定しました。2019年度のエアロスペース社の買収によって、当社の財務はネット・デットとなりましたが、仮に中期経営計画で設定した予算枠をすべてデット調達したとしても、D/Eレシオは約0.2と財務健全性は確保できます。今後も必要な時には負債も活用しながら、積極的に成長のための投資を行っていきます。一方で、資金調達をする以上、それがどのようなリターンを生んでいるかを厳格に管理・開示していく責任もあり、今中期経営計画からは新たな経営指標としてROIC(投下資本利益率)を導入しました。

ROIC向上には「利益率」と「回転率」の向上が必要です。今後の持続的な成長のためにM&Aや戦略的な設備投資などを積極的に実行していくにあたり、リターンの確度向上には強くこだわっていきます。ROICを活用した事業ポートフォリオの入れ替えも検討していきますが、事業によって各々必要となる投下資本の規模や質は異なります。例えば住宅カンパニーで取り組んでいるまちづくり事業は、初期投資が大きいため短期的にROICは下がる傾向にありますが、プロジェクトの数を増やして限界利益を拡大させながら、仕入れた土地の回転率を徹底して管理していきます。その他の事業に関しても、まずは限界利益の拡大や固定費の抑制などで、分子である利益の拡大と利益率の向上を図り、設備投資やM&A、在庫の適正化を通じて、より効率的な資本運用に取り組みます。

ROICと資本コストとの差である「ROICスプレッド」に関しては、資本コストに独自の非財務資本コストも組み入れて「セキスイ・サステナブル・スプレッド」と定義し、当社の企業価値を測る指標としました。ここでは資本コストを広義に捉え、適切な財務・資本政策に加えて、「安全、品質、経理、法務・倫理、情報管理」の5領域での重大インシデントをそれぞれ定義し、企業価値に致命的な影響を及ぼしかねない事象の発生抑制につなげています。同時に、「環境」「人材」「DX」など当社にとってのESG重要項目を対象に将来に向けた投資を行うことや、IR活動等を通じて適切な情報開示を行うことも、広義の資本コストの抑制につながると考えています。

社会課題解決と当社グループの成長、
両方の持続可能性向上を図る「サステナビリティ貢献製品」を拡大する

長期ビジョン実現に向けては、さまざまな社会の課題に多角的にアプローチできる現有の4事業領域(レジデンシャル、アドバンストライフライン、イノベーティブモビリティ、ライフサイエンス)と新事業領域において、社会の持続性に対して高いレベルで貢献する「サステナビリティ貢献製品」の創出と拡大に注力します。

当社グループは創業以来、社会貢献を意識した製品づくりをしてきました。自然環境および社会環境における課題解決型の製品について、2006年度に独自の認定制度とした「環境貢献製品」は、当社グループのESGの取り組みを象徴する存在になりました。2020年度からは、課題解決に貢献するだけでなく、持続経営力と収益性を向上させることに軸足を進化させ、「サステナビリティ貢献製品」と名称を変更し、社会課題解決と当社グループの成長の両方の持続可能性をさらに高めていきます。2020年度の「サステナビリティ貢献製品」の売上高は6,403億円と、グループ全体に占める割合も60%に到達しました。今後、この「サステナビリティ貢献製品」を強力に推進し、中期経営計画最終年度の2022年度には、売上高全体に占める比率を66%まで伸ばしていくことを目標としています。

強みである技術力と事業のポートフォリオを変革する力を磨き上げ
社内外のリソースの融合にも積極的に取り組む

当社には「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」に関連した基盤技術があり、これを28の技術プラットフォームとして定めています。お客様の声に真摯に耳を傾け、ご要望に対して最適な材料を選んで組み合わせ、この28の中から最適と思われる技術によって付加価値を付け、ソリューションとして提供する「加工」の力こそ、当社の強みです。例えば、地面を掘り返すことなく下水管を更生できるSPR工法や、自動車用中間膜の遮音膜・遮熱膜のように、車内空間の快適さの向上だけではなく燃費も改善しCO2排出量の削減に貢献する製品などはその代表例です。このようにしてお客様と長期にわたる信頼関係を築くことで、さらなる新しいご要望を獲得でき、そしてそれらに応え続けることこそが、当社の持続的なイノベーションにつながっているのだと考えています。

もう一つの強みは、社会や事業環境の変化を先んじて捉え、変化に適応し、事業の構造転換を進めたり、ドメイン内で事業ポートフォリオを変革したりするマネジメント力(「先取り変革」)です。強みをもって勝てる部分に特化し、果敢に取り組む姿勢が、当社のこれまでの成長を支えてきたと考えています。

今後はこれらの強みを活かしながら、カンパニー間のシナジー最大化の追求とともに、社外との協業などを通じてオープンイノベーションを加速させていきます。前中期経営計画では「融合」を進めてきたことで、約400億円の売上が創出されただけでなく、社員のマインドの中にも融合への意識が醸成されました。今後も既存の事業・製品ポートフォリオやカンパニー制の変革も視野に入れながら、効率性やシナジーの最大化を目指していきます。

また、長期的な成長のための仕込みとして、当社の技術を結集した「まちづくり」の全国展開や、高機能プラスチックスカンパニーの高分子技術・樹脂技術とメディカル事業の技術を融合した「細胞培養ソリューション」や「医療用樹脂材料」、さらには地域社会との協力も求められる「脱化石資源依存」など、イノベーションを通じて現有事業の周辺領域を積極果敢に開拓し、事業基盤の拡大構築を図ります。

コーポレートガバナンスは指針に即して透明性・公正性を維持
資本政策は効率性を高め、積極的な株主還元方針は不変

透明で公正なガバナンスは、企業経営を健全な形で進めていくための土台です。当社では、監督機能を強化し、大局的な視点から経営に対する助言をいただくために、全取締役10名のうち、独立性を有する社外取締役を3名選任しています。取締役会議長は、非業務執行役員である代表取締役会長が務めています。2021年6月に発表された改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CG)では社外取締役比率として1/3以上が求められており、今年度はこの基準を満たせてはいませんが、適材適所の結果であると認識しています。2022年度以降については対応を検討しており、当社の独立社外取締役として相応しい人材の探索に入っています。また、当社では任意の指名・報酬等諮問委員会を設置しており、役員賞与は全社業績だけでなく、「サステナビリティ貢献製品」の売上高比率など、非財務指標を含めたカンパニー業績、ROE(自己資本当期純利益率)に連動した基準に基づいて報酬額が決定される業績連動報酬となっています。これに加えて中長期的な株主価値との連動性が高くなるよう設計した株式交付型インセンティブ制度も導入しています。

また、改訂CGでは政策保有株式についても保有効果の検証が求められています。当社では重要取引先・パートナーとして、保有先の企業価値向上と当社の中長期的な企業価値向上の最大化を図る場合において有益かつ重要と判断する上場株式を限定的かつ戦略的に保有していますが、これらについても定期的に取締役会において見直しを行い、保有意義が不十分であったり、資本政策に合致しない保有株式については縮減を進めています。

株主還元に対しても、今中期経営計画からこれまで以上に踏み込んで強化すると同時に、方針も明確化しています。2021年度も厳しい事業環境は続きますが、株主を重視する当社の明確な意志として年間で2円増配となる1株あたり49円を計画しており、12期連続での増配実現を目指します。同時に、連結配当性向35%以上、DOE(自己資本配当率)3%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオが0.5以下の場合)の水準も確保していきます。そして当社が持続的に成長を果たすことで、株主の皆様への還元を今後も積極的に実施していく所存です。

社員へのビジョン浸透に向け、対話の機会を拡大

私自身は、昨年、長期ビジョン「Vision 2030」をいかに社員に浸透・定着させるかに注力してきました。COVID-19の影響で現地へ赴くことが叶わない中で、リモートで「ビジョンキャラバン」を実施し、社員との直接対話の場を持ちました。国内8回、海外5回の実施を通じて、のべ2,300名以上の積水化学グループのメンバーへ直接長期ビジョンについて伝えることができ、事後の アンケート調査でも、長期ビジョン並びに中期経営計画の説明に対しては非常に高い理解度と肯定的な感想を得られており、手応えを感じています。積水化学グループの持続的な成長は、社員一人ひとりが「ESG=仕事そのもの」であるとの理解を深め、グループ一体となってESG経営を進めることで実現します。この対話を通じて、自覚を持った行動で重大インシデントを抑制していくといった社員自らの意気込みや挑戦することへの気概も直接聞くことができ、エンゲージメントの重要性を改めて実感すると同時に、持続的成長の基盤となるESG経営が着実に強化されている手応えを得られました。

2021年度からは、社員とのコミュニケーションをさらに前進させるツールの一つとして、イントラネット上に「社長ブログ」の掲載を開始しました。私自身の考えを記した投稿にコメントや反応を現場からの声として収集しながら、社員からもらう「いいね」を励みに、社内コミュニケーションをより円滑にしていきます。長期ビジョンの浸透は一朝一夕にできるものではありません。今後も「ビジョンキャラバン」やブログを通じて、継続的に対話を続けていきます。

「社会から必要とされる」企業として

積水化学グループは、創業当時から、水、医療、自動車の安全、住宅、社会インフラといったひとびとのくらしの豊かさと安心に携わり、社会からの信頼を基盤として成長を続けてきました。現代社会は、SDGsにも示された社会課題が山積し、脱炭素社会への転換が急加速するなど、変化の激しい不確実な時代です。その中において、“課題解決を通じて、社会や環境の持続可能性を追求する”ことが、当社グループの進むべき道だと私は確信しています。環境、社会の変化と課題・リスクに対してしっかりと備えると同時に、課題解決を事業機会と捉え、社内外の「壁」を乗り越えて知見を結集させ、イノベーションを起こします。そしてESG経営を基盤に、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的成長の両立を目指し、これからも製品・サービスを通じて「未来につづく安心」を提供する、「社会から必要とされる」企業であり続けたいと考えています。

株主の皆様をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様には、引き続きご期待・ご支援いただけますようお願い申し上げます。