多機能型自動給水栓「水(み)まわりくん」を活用した実証実験により、酒米生育における効果を確認

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  積水化学工業株式会社(代表取締役社長:髙下 貞二、以下 当社)の環境・ライフラインカンパニー(プレジデント:久保 肇)は、1月22日に発売した多機能型自動給水栓「水(み)まわりくん」を使用して行ってきた実証実験において、目標としている効果の達成を確認しましたのでお知らせいたします。

  

  「水(み)まわりくん」については、正式発売に先立ち、国との実証実験を福井県、岐阜県、山口県等のフィールドで実施してきました。山口県では、2016年4月からの3年間を期間とする酒米生育の実証実験を行っており、2018年3月末にとりまとめた2年目終了時点の実績において、目標値である酒米の等級1等以上、収量20%以上向上(420kg/10a以上)を確保することができ、導入の効果が実証されました。


1.背景

  日本の農林水産物や食は、世界において高い評価を受けています。中でも、日本酒は日本食ブーム等を背景に輸出量が順調に拡大しています(図1)。

  一方、日本酒の原料米に使用される山田錦等の品種は栽培が難しく、収量の低迷や、地域・生産者による品質のバラつきが課題となっていました。

  そこで、2016年に兵庫県が中心となり『次世代酒米コンソーシアム』を組織し、「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」に応募、その革新性が認められ採択されました。

  酒米の産地である5つのグループにおいて、それぞれのテーマの下(表1)、「酒米新品種と革新的栽培・醸造技術の活用による日本酒輸出倍増戦略」に取り組み、当社は山口県グループ(山口県・山口大学・西日本農研センター等)で「集落営農法人を対象としたICTを活用した酒米の生産支援システムの確立と日本酒の生産・輸出拡大」をテーマに、「水(み)まわりくん」を活用して取り組んできました。

  

清酒の輸出金額・数量の推移

図1 清酒の輸出金額・数量の推移


次世代酒米コンソーシアム 各グループテーマ

表1 次世代酒米コンソーシアム 各グループテーマ

 

2.実験概要

(1)実証フィールド

  実証圃場では、農事組合法人ファームつるの里(経営面積 水稲25ha/大豆10ha)のうち、約1haに自動給水栓および水位センサーを6ヵ所、ゲートウェイを1ヵ所設置しました。

※富士通(株)の農業経営支援システム「食・農クラウドAkisai(秋彩)」にて、フィールドサーバによるデータ収集・分析のご協力をいただいています。


(2)実験内容

  地元農家の方にご協力いただき、2016年度は、「水(み)まわりくん」を用いた水管理(栽培暦※1に従った間断かんがい※2や夜間かんがい※3など)を行いました。2017年度はさらに、水位・水温のモニタリングに加え、2016年度より収集している富士通(株)のAkisaiによる気象データ等を併せたデータ収集分析を行い、酒米の品質向上や収量増加の実証を行いました。

※1 年間を通した栽培管理方法を時系列でまとめたもの

※2 湛水状態と落水状態を数日間隔で繰り返す水管理方法。土壌中に酸素を供給し,根の発育を促進させるために行う

※3 主に出穂以降、気温の低い夜間に圃場に給水する方法で、水田水や稲穂周辺の温度の低減を図ることができる

 

水まわりくん

水まわりくん

 

3.成果

  栽培暦に従った間断かんがいや高温障害対策※4に有効とされる夜間かんがいにより、出穂期、登熟期における水田水温上昇の抑制効果、稲穂周辺温度の低減効果として、乳白米の発生等を抑制することができ、2017年度には、収量420kg/10a以上、等級1等以上を達成することができました。(表2)

※4 水稲登熟期の気温が高くなることで、米が白く濁る「白未熟粒」、偏平となり縦溝が深くなる「充実度の低下」、亀裂が入って割れやすくなる「胴割粒」「砕米」などの品質の低下や収量低下を招くことを言う



2015年度

実績

目標

成果

1年目(2016年度)

2年目(2017年度)

等級

3等

1等以上

特等


1等


収量

350kg/10a

20%向上

17%向上


37%向上


表2 目標値と成果


(ご参考)現場レポート「山口県周南市での酒米生産支援システム実証試験に『水(み)まわりくん』」が活躍


4.今後の展開

  今後は、「水(み)まわりくん」を用いて蓄積された水管理情報を活用し、水管理の省力化・合理化に加え、高温障害対策などの栽培手法を取り入れた栽培暦の作成等、酒米における栽培技術の高位標準化ならびに技術伝承の一助となるべく、さらなる普及拡大に向けた取り組みを進めていきます。

以上