新たな環境長期ビジョンおよび環境中期計画を策定

~ESG経営における環境への取り組みについて~

2020年8月27日
積水化学工業株式会社

  積水化学工業株式会社(社長:加藤敬太、以下「当社」)は、2050年に“生物多様性が保全された地球”を実現することを目指す環境長期ビジョン「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2050」を策定しました。また、この環境長期ビジョンに基づく2020年度~2022年度における新環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」を策定し、取り組みを開始しました。

  当社グループでは、社会の持続可能性向上と当社グループの利益ある成長の両立を目指す“ESG経営”を基本戦略とした2030年度までの長期ビジョン「Vision2030」を掲げており、経営基盤の強化と、そこから生まれる技術・イノベーションによる社会課題解決への貢献を拡大します。
  今般、ESG経営の中核のひとつである環境面における中長期の取り組みの方向性を定めました。これを今後着実に推進することにより、サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造していきます。
*長期ビジョン「Vision2030」ビジョンステートメント
Innovation for the Earth” サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造します

1.環境長期ビジョン「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2050」

  環境に関するさまざまな問題の顕在化、科学的根拠に基づいた環境課題予測の精度向上などを受け、2050年を見据えた環境課題への取り組みの方向性を環境長期ビジョンとして再設定しました。

図 「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」

SEKISUI環境サステナブルビジョン2050

  2050年には、“生物多様性が保全された地球”を実現することを目指し、製品や事業といった企業活動を通してさまざまな自然環境および社会環境課題の解決を進めていきます。企業活動では地球上の自然資本、社会資本を利用して活動していることを認識し、地球上の課題解決をすることで、自然資本、社会資本のリターンに貢献していきます。そのための活動として、(1)サステナビリティ貢献製品の市場拡大と創出、(2)環境負荷の低減、(3)環境の保全の3つを重視します。

  従業員一人ひとりがさまざまな環境課題を認識し課題解決力の高い人材集団となること、そしてあらゆるステークホルダーと連携をすることにより、これらの活動を加速させていきます。

2.前環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerate」(2017~2019年度)振り返り

  前環境中期計画においては、(1)統合指標「SEKISUI 環境サステナブルインデックス」による進捗管理、(2)環境貢献製品の売上拡大、(3)温室効果ガス排出量削減を3つのポイントとして取り組みを実施しました。

表 前環境中期計画の目標と実績

表 前環境中期計画の目標と実績

注1)リターン率の計算は、東京都市大学伊坪教授らにより開発されたLIME2の考え方に基づいたLCA計算システム「MiLCA」を使用
注2)COD(Chemical Oxygen Demand):化学的酸素要求量。水中の含有物質を酸化するために必要とされる酸素量(酸素消費量)であり、水質の指標の1つ。CODが高いと含有される有機物、無機物の量が多い水であり、水質が悪いと判断される。

  取り組みの結果、製品による環境課題解決への貢献が拡大し、統合指標における自然資本へのリタ―ン率は104.5%と目標達成できました。環境貢献製品は、売上高比率に関しては目標に及びませんでしたが、着実に環境課題解決型製品の創出と市場拡大を図ることができました。温室効果ガス排出量の削減に関しては、環境貢献投資枠を活用し、老朽化設備を更新して、省エネルギーとなる設備の導入を積極的に行ったことで、目標通り、温室効果ガス排出を低減することができました(下図)。環境負荷低減においては、廃棄物削減や水資源維持に課題を残し、今後取り組みの見直しを行っていきます。

図 事業活動における温室効果ガス排出量の推移

図 事業活動における温室効果ガス排出量の推移

  自然環境の保全に関しては、国内の生産事業所において、貴重種の保護や、多様な生物が育つための環境整備を行うなど、緑地の質向上のための取り組みを推進しました。その結果、評価ツールである「土地利用通信簿」の点数は向上しました。今後は、欧州でもこの取り組みを展開していきます。
  また、「SEKISUI環境ウィーク」を通じて、自然環境の課題を解決するための実践活動をグローバルで展開してきたことにより、課題に気づき解決に向けて実践する活動推進力の素地はできてきたと考えています。今後は、自然環境や社会環境の課題に貢献する活動は、課題解決を考え行動することができる人材や風土の育成を行うことを目的とし、SDGs貢献を意識した活動へと進化をさせていきます。

3.新環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」(2020~2022年度)について

  環境長期ビジョンにおいて、今後注力していく環境課題を気候変動、資源枯渇、水リスクと考え、おのおのの方向性、長期目標設定を行いました。2050年には、気候変動課題については脱炭素社会の実現を目指し温室効果ガス排出をゼロに、資源枯渇に関してはサーキュラーエコノミーの実現を目指し資源循環のための再資源化を推進し、水リスクは最小化を目指してリスクの把握と低減に取組んでいきます。そして目指す2050年の姿からバックキャストした中期のマイルストーンを設定し、新環境中期計画を策定しました。新環境中期計画では、以下のように取り組むべき重要実施項目と目標値を設定しています。

3-1 統合指標

  統合指標「SEKISUI 環境サステナブルインデックス」による進捗把握は、自然資本に加えて社会資本に対してもその負荷を削減し、貢献が拡大できるようにリタ―ンに努めていきます。2030年には業容倍増を目指しますが、リターン率100%以上を維持していきたいと考えています。

3-2 サステナビリティ貢献製品

  2006年度より推進してきた自然環境および社会環境課題解決の貢献度を高め、普及促進を図るための製品評価制度である「環境貢献製品」制度を、2020年度からは「サステナビリティ貢献製品」制度へと進化させ、課題解決の持続可能性を向上させていきます。2006年度より推進してきた自然環境および社会環境課題解決の貢献度を高め、普及促進を図るための製品評価制度である「環境貢献製品」制度を、2020年度からは「サステナビリティ貢献製品」制度へと進化させ、課題解決の持続可能性を向上させていきます。
  自然環境、社会環境における課題解決への貢献を拡大する製品を推進することは、地球および社会のサステナビリティ向上につながると考えられます。ただ、そのような製品をつくりつづけ、貢献を拡大していくためには、自社および製品自身のサステナビリティが不可欠です。そのため、従来の課題解決への貢献に高い効果を有する製品を社内基準により認定するプロセスに加え、あらたに企業および製品のサステナビリティを評価する視点を設けます。具体的には、収益性、ガバナンス、サプライチェーン、顧客満足度などの観点から確認・評価を行います。さらに、環境課題解決への高い貢献度と企業および製品の高いサステナビリティを有する製品を「プレミアムサステナビリティ貢献製品」として選定し、戦略的に伸長を後押しする施策を展開していきます。

図 サステナビリティ貢献製品制度のイメージ

図 サステナビリティ貢献製品制度のイメージ

3-3 気候変動課題に対する取り組み

  脱炭素社会の実現を目指し、2050年に企業活動における温室効果ガス排出量をゼロにする長期目標を設定し、バックキャストした2030年には購入電力を100%再生可能エネルギーに転換することを目指します。

図 温室効果ガス削減のロードマップ

図 温室効果ガス削減のロードマップ

注)BAU(Business As Usual):通常の経済活動に伴い、増加する排出量

  温室効果ガス削減のロードマップ(上図)において、前環境中期計画は、「エネルギー消費革新」の段階でした。120億円の環境貢献投資枠を活用し、ものづくり、老朽更新等を主眼においた省エネルギー設備への投資を行い、温室効果ガス排出量削減を大きく推進しました。新環境中期計画では、「エネルギー調達革新」の段階に移行します。2019年4月より始動しているサービス「スマートハイムでんき」の活用や、ESG投資枠400億円の活用などにより、再生可能エネルギーの調達を積極的に推進していきます。

  当社は、2018年6月、化学業界として世界で初めてSBT認証※1を取得し、長期目線での温室効果ガス排出量削減の目標を設定し、サプライチェーンと連携して取り組む意思表示を行いました。
  2020年8月には、再生可能エネルギーの積極的活用を自社のみならず、社会で推進していくために、あらたなイニシアチブとしてRE100※2に加盟しました。
※1) SBT(Science Based Targets):パリ協定の採択を契機として国連グローバルコンパクトをはじめとする共同イニシアチブが提唱。SBTイニシアチブにより、企業が定めた温室効果ガス削減目標が、長期的な気候変動対策に貢献する科学的に整合した目標(SBT)であることが認定される。
※2) RE100(Renewable Energy 100%の略称):RE100はThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで主催し、We Mean Business連合の一部としても運営。日本では2017年より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が、RE100の公式地域パートナーとして日本企業の参加と活動を支援しています。

  気候変動課題に対する戦略においては、気候変動による自社に対するリスクを把握し、そのリスク低減やリスクを機会に転換できるような取り組みを策定しています。これらの経緯をTCFD※3の提言に基づく情報開示として、2019年1月に賛同して以来、2019年7月より定期的に見直しを行い公開しています(2020年8月に見直し、公開)。
TCFDレポート2020の詳細についてはこちらをご覧ください。
https://www.sekisui.co.jp/csr/pdf/csr_tcfd_2020.pdf
※3) TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):2015年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)により設立された気候変動関連財務情報開示タスクフォース。

3-4 資源枯渇課題に対する取り組み

  資源枯渇、すなわち資源循環に関しては、2050年にはサーキュラーエコノミーの実現を目指すため、マテリアルへの再資源化をさらに推進していきます。
  これまで生産事業所を中心とした廃棄物の埋め立てをゼロとする廃棄物ゼロエミッション活動の推進とともに、廃棄物の排出量削減(=REDUCE)に努めてきました。また、住宅ユニットの再利用(=REUSE)や、プラスチック再生材料を活用(=RECYCLE)した製品の創出、拡大にも注力するとともに、資源循環を推進するケミカルリサイクル技術である、バイオリファイナリー(BR)技術も確立しました。このBR技術は、廃棄物から微生物の力でエタノールを生産する技術です。
  新環境中期計画においては、生産事業所での再資源化の推進を行っていきます。また、BR技術の実証事業を行い、ケミカルリサイクル技術の社会実装を図り、資源循環を推進していきたいと考えています。さらに、自社の取り組みを強化するとともに、さまざまな企業、業界団体とのイニシアチブにも積極的に参加し(CLOMA、JaIMEなど)、企業間の連携した取り組みによって、関連する海洋プラスチック問題などの社会課題解決への貢献を拡大させていきます。

3-5 水リスク課題に対する取り組み

  2050年には水リスクを最小化できるよう、バックキャストしてマイルストーンを設定し、取り組みを推進します。
  水リスクに関しては、これまではグローバルのすべての生産事業所において一律の目標で取水量の削減と排水の質の向上に努めてきました。しかし水リスクはローカルな課題であることを認識し、各事業所で取り組みを変えて実施していきます。水資源の維持に対しては、水使用量の多い生産事業所は取水量を10%削減し(2016年度比)、COD排出量の多い生産事業所は河川放流水のCOD総量を10%削減する(2016年度比)ことを目標とします。そして、生産事業所における流域特有の水リスクの把握を行い、課題解決となる取り組みを実行し、水リスクの低減に努めていきます。

表 新環境中期計画の目標

表 新環境中期計画の目標

参考 新環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」の位置づけ

新環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」の位置づけ

本件に関するお問い合わせ先

    【報道関係のお客様】
    積水化学 広報部
    TEL:03-6748-6467 FAX:03-6748-6547

    【報道関係以外のお客様】
    積水化学 ESG経営推進部
    TEL:03‐6748-6455 FAX:03-6748-6544