“ごみ”を“エタノール”に変換する1/10スケールの実証プラントが岩手県久慈市に完成

~新しい資源循環社会のシステム構築を目指して~

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2022年4月11日
積水化学工業株式会社
株式会社INCJ
積水バイオリファイナリー株式会社

  積水化学工業株式会社(代表取締役社長:加藤敬太、以下「積水化学」)と、株式会社INCJ(代表取締役社長:勝又幹英、以下「INCJ」)、積水バイオリファイナリー株式会社(代表取締役社長:両祖徹、以下「SBR」)は、積水化学と米国ベンチャー企業LanzaTech NZ, Inc.(以下、「ランザテック社」)が共同開発した、微生物を活用して可燃性ごみをエタノールに変換する技術*1(以下、「BR*2エタノール技術」)の実証事業の実施、技術検証及び事業展開を行うことを目的として、岩手県久慈市にて実証プラントの建設を進めてきましたが、このほど竣工しました。

*1 積水化学の2020年4月16日付プレスリリース「“ごみ”を“エタノール”に変換する技術の事業化を目的に合弁会社を設立」ご参照。
*2 BR…Bio Refineryの頭文字をとったもの。

  • 久慈実証プラント1
  • 久慈実証プラント2


1.SBR久慈実証プラントについて

  この実証プラントは、積水化学及び経済産業省が所管する官民ファンドであるINCJが共同で設立したSBRが建設しました。また、環境省委託事業*3による⽀援を受けています。
  実証プラントにおいては、BRエタノール技術の実用化・事業化に向けた最終段階の検証を行うため、スケールアップ時の技術検証、システム最適化、安定稼働の確認、事業性の確認などを行う計画です。標準的な規模のごみ処理施設が処理するごみの1/10程度の量(約20t/日)を久慈市から譲り受けて原料とし、エタノールを生産します。また、自治体やごみ処理関連企業、プラントメーカーなどの方々に、プラント見学やBR事業の説明、エタノールのサンプル提供などを通じて、BRエタノール技術をご理解いただき、新しい資源循環社会システムの創生をパートナーとして共同で推進いただきたいと考えています。
  *3 環境省委託事業…「二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業」ご参照


■SBR久慈実証プラントの概要

場所 岩手県久慈市侍浜町本町第9地割54番1
敷地面積 約2.5万㎡ (緑地分含む)
処理能力 一般廃棄物(可燃性ごみ)約20t/日
製造量 エタノール1~2kL/日
製造技術 ガス化改質炉(三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社)
ガス精製技術(積水化学)
微生物触媒(ランザテック社)
エタノール生産技術(積水化学)


2. 実証事業を通じて目指す将来像

  積水化学及びSBRが目指す「新しい資源循環社会システム」とは、生活を便利に豊かにするために生まれ、その役割を全うして廃棄された”ごみ“を、新品の材料に繰り返し還して新しい生命を与え循環するシステムです。誰もが共同で参加することができるものです。

<新しい資源循環社会システム>
新しい資源循環社会システム

  積水化学は、住友化学株式会社と協業し、エタノールをエチレンに、さらにはプラスチック(ポリオレフィン)に変換するループの構築を進めていきます。このプラスチックを消費材製造者に利活用いただき、その商品が利用され廃棄される際に回収し、再びBRプラントに戻すことで何度も繰り返すことが可能な資源循環を構築することを目指します。そのためには幅広い参加者(企業、自治体、消費者、公官庁など)との共同作業が必要であり、広く持続可能な社会への共感創造を進めたいと考えております。
  生産されるエタノールは、合成アルコール(JAAS規格,社団法人アルコール協会)であり、飲用や食用に用いることはできませんが、プラスチック以外の用途にも適用可能です。例えば、エタノールからエチレンへ、さらにケロシンに転換することで持続可能な航空燃料(SAF: Sustainable aviation fuel)への活用も期待されます。

3. 事業化スケジュール

  この実証プラントにおける実証試験と並行して、自治体や民間企業(廃棄物処理会社など)とのごみ原料供給協議や、エタノール需要家(資源循環取組企業など)との協議を進めていきます。2025年度頃のBRプラント商用初号機導入を目標に、事業化を目指します。

4. 竣工式を開催

  2022年4月8日、久慈実証プラントの工事完了に伴い、竣工式を行いました。竣工式には、遠藤譲一久慈市長をはじめ、地域の代表者の方にご出席頂き、積水化学からは代表取締役社長の加藤敬太、取締役専務執行役員 経営戦略部長の上脇太、INCJからは代表取締役の志賀俊之などが出席致しました。

  • 2022年4月8日施工式1
  • 2022年4月8日施工式2


久慈実証プラント完成にあたっての各社代表のコメント

積水化学工業株式会社 代表取締役社長 加藤敬太
  当社は、サステナブルな社会の実現に向けて、脱炭素や資源循環などの社会課題解決へのイノベーションに取り組んでいます。ごみを資源化するBRエタノール技術は、それら多くの重要課題の解決策にもなり得るイノベーションであり、次世代に豊かな社会を引き継ぐことへ寄与すると期待しています。引き続き多種多様な連携を推進し、「ごみの資源化」技術の事業化に取り組んで参ります。

株式会社INCJ 代表取締役会長 志賀俊之
  この度は積水化学及び積水バイオファイナリーのご尽力、また地域の皆様のご協力により久慈実証施設が無事竣工したことを大変嬉しく思います。この施設は「ごみの資源化」技術の事業化の大きな一歩となり、ゴミの焼却で発生するCO2の削減やプラスチックゴミの解決に寄与することが期待されます。INCJは様々な関係者と協力して、オープンイノベーションにより生まれた当技術の実用化・事業化に努めて参ります。

積水バイオリファイナリー株式会社 代表取締役社長 両祖徹
  岩手県、久慈市をはじめとした関係者の方々の多大なご協力のおかげで、新型コロナウィルスの蔓延が続くなか、予定通り2022年3月末に本実証施設を完工することが出来ました。今後とも関係者の方々の協力を仰ぎながら、技術的な検証や事業化に向けての検討を行い、早期にこのBRエタノール技術を実用化・事業化することで、資源循環社会、低炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。


【ご参考①】
◆BRエタノール技術について

  積水化学とランザテック社は、ごみ処理施設に収集された可燃ごみを分別することなくガス化し、このガスを精製の上、ランザテック社が開発した微生物により、化学触媒や熱・圧力を用いることなくエタノールに変換する生産技術を2017年に確立しました。世の中に大量に存在しながらその工業利用が極めて困難であった“ごみ”を、化石資源に替わる資源として利用することを実現しうる、革新的な技術です。通常可燃ごみは焼却の上発電利用等されていますが、BRエタノール技術により、ごみをガス化することで発生する二酸化炭素の一部もエタノールに転換することで二酸化炭素の排出の抑制にも貢献します。

<BRエタノール技術の概要>
BRエタノール技術の概要


【ご参考②】
◆積水バイオリファイナリー株式会社の概要

所在地 東京都港区虎ノ門2丁目10番4号(積水化学東京本社内)
代表者 代表取締役社長 両祖徹(りょうそ とおる)
設立年月 2020年4月
出資比率 積水化学 66% INCJ 34%
事業内容 BRエタノール技術の実証事業の実施、及びBRエタノール技術の事業展開

<本件についてのお問い合わせ先>

    ■報道関係の皆様
      積水化学工業株式会社 広報部
          E-mail:kouhou@sekisui.com
      株式会社INCJ 経営企画室 広報
          E-mail:press@j-ic.co.jp

    ■報道関係以外のお客様
      積水化学工業株式会社 新事業開発部 BRグループ
          E-mail:br-press@sekisui.com