2025年2月19日
積水化学工業株式会社
株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ
積水化学工業株式会社(代表取締役社長:加藤 敬太、以下:積水化学)と、株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ(代表取締役社長:河原 裕美、以下:SBL)は微小重力環境下での培養による高品質間葉系幹細胞製造プロセス確立に向けた培養基材についての共同研究を開始しました。
間葉系幹細胞(以下:MSC)は、骨髄や脂肪組織から得られる体性幹細胞のひとつで、高い増殖能とともに神経や骨など様々な細胞に分化する多分化能を有しています。現在、多くの臨床研究等に用いられておりiPS細胞とともに今後の再生医療の発展に伴い需要の増加が予想されています。一方、MSCの品質と治療効果には相関があることが知られており、高品質のMSCを安定的に製造できるプロセスの確立が望まれています。
積水化学は、これまで培ってきた材料技術を通して、幹細胞の培養等を安定的に実現する化学合成足場材の開発を進めており、このほどCeglu™の名称でブランド展開することが決まりました。Cegluは、室温で保存可能な樹脂素材であり、培養前に基材を毎回タンパク質でコートするといった煩雑な作業が不要となり、細胞培養品質の安定化をもたらします。
SBLは、地上で模擬的に微小重力環境を再現する装置Gravite®の開発及びその装置を使った幹細胞培養技術等を通じ、中枢神経系疾患の完治を目指した再生医療システムの構築に取り組んできました。
両社は、Cegluを塗工した基材をGravite®による微小重力環境下でのMSC培養に用いることにより、高品質なMSCを安定的に生産する工程の確立に取り組みます。革新的な技術の融合による研究成果が再生医療のさらなる発展に寄与することが期待されます。
化学合成足場材Ceglu
さまざまな塗工済み基材を提供することで、均質な培養環境を実現します
重力制御装置Gravite®
宇宙ステーションと同じ1000分の1Gの微小重力環境を実現します
Cegluについて
Cegluは細胞を意味するCellと糊を意味するGlueをつなげた造語です。Cegluブランドの細胞培養足場材は、細胞接着性および貯蔵安定性に優れていてiPS細胞や間葉系幹細胞の培養、分化など、様々な用途に適しています。Cegluは化学合成された素材であり、製造過程において動物由来成分を一切使用していません。種々の培養基材にCegluをコーティングすることにより、均質な細培養表面環境を実現します。(Cegluの販売予定等については2025年3月開催の第24回日本再生医療学会総会にて発表予定です)
Gravite®について
回転により重力ベクトルの方向を変えることのできる装置(クリノスタット)の一つで、直行二軸のまわりに試料を360°回転させ、重力ベクトルを時間軸で積分することにより宇宙ステーションと同じ1000分の1Gの微小重力環境を地上で模擬的に作る装置です。回転制御により火星(1/3G)や月(1/6G)の重力環境を、単軸回転により3Gまでの過重力環境を作り出すこともできます。NASA・ケネディー宇宙センターをはじめ世界中の研究機関で、再生医療や重力生物学の研究に活用されています。
積水化学 経営戦略部ライフサイエンス戦略グループ培養資材事業化推進室室長 廣川重成のコメント
「本共同研究によってSBLの革新的な製造プロセスにCegluが加わることで、さらに高品質な幹細胞の安定供給に寄与し、将来より多くの患者様に貢献できることに大きな期待と喜びを感じています。」
SBL CTO取締役・広島大学名誉教授 弓削類のコメント
「宇宙開発から実用化された技術として低反発ポリウレタン、フリーズドライ、歯磨き粉のハイドロキシアパタイトやUVカットレンズ等々多くの技術が私どもの生活を豊かにしてくれています。化学合成足場材Cegluは、宇宙での培養技術の問題を解決すると同時にクオリティの高い幹細胞の製造に貢献する新たなマテリアルとして期待できます。」
<本件に関するお問い合わせ先>
積水化学工業株式会社
コーポレートコミュニケーション部
E-mail:kouhou@sekisui.com
株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ
E-mail:contact@spacebio-lab.com