2025年8月18日
積水化学工業株式会社
積水化学工業株式会社(代表取締役社長:加藤 敬太、以下:積水化学)と、五洋建設株式会社(代表取締役社長:清水 琢三、以下:五洋建設)は、桟橋などのコンクリート劣化対策として従来の塗装工法の工程の一部または全てを貼付するのみで代替可能となり、貼付後も下地の状態を確認可能なCO2吸収材含有表面被覆シートを開発しました。
1.開発の背景・狙い
コンクリートの劣化因子侵入対策として、従来より二酸化炭素・塩化物イオン・水分・酸素等の侵入抑制効果が高い有機系被覆工法が適用されてきました。しかし、桟橋下面での被覆材塗装を想定した場合、吊り足場等の大掛かりな仮設が必要となる場合や潮位により作業時間の制約を受けやすいこと、また塗装後に一定の乾燥時間が必要など、その適用には課題がありました。更に、被覆材により一旦コンクリート表面を被覆してしまうと、その後のコンクリートの劣化状況を容易には確認できないことも維持管理の観点からは大きな問題であり、また、被覆によりコンクリートのCO2吸収体としての機能を低下させてしまうことも課題でした。
積水化学は工業用途向け粘着テープをはじめとした粘着配合技術、塗工技術、シート加工技術を有し、また海洋系土木最大手として知られる五洋建設の海外も含めた豊富な実績に基づく維持管理に関する知見を活用し、下地視認可能なCO2吸収材含有表面被覆シートを共同開発するに至りました。
2.製品特徴
・下地視認性
貼付後もコンクリートの状態を目視で確認できる透明性を有しており、シートの上からでもクラックの発生などの異常を発見しやすく、必要な対応を迅速に行うことが可能です(図1)。
・強力な付着性
特殊粘着層は厚膜で柔軟な設計にすることでコンクリートなどの粗面への接着性に優れ、また粘着配合を調整することで化学的相互作用が得られにくい低極性材料に対しても高い接着性を発揮します。この設計により、プライマー無しでも実用に十分耐えうる性能を実現しています(図2・3)。
・優れた耐候性
シートの最外層に耐候性フィルムを配置することで、過酷な屋外環境でも長期間の使用に耐え、シートの劣化を防止します(図4)。
・CO2吸収性
被覆によるコンクリートのCO2吸収体としての機能低下を補うことを目的に、粘着層へCO2吸収材を添加しました。これにより、一定量のCO2ガスを充填した密閉空間に本シートを設置することで、CO2濃度が減少することが確認されました。CO2濃度減少量をシートによる吸収と仮定した場合には粘着層単位体積当たりの吸収量は20時間余り経過時において18~20kg/m3であることを確認しました(図5)。
図1:被覆シート有無での視認性比較
図2:用途別粘着力領域と本被覆シートの粘着力
図3:(a)耐剥がれ試験方法、(b)実際の試験の様子、(c)試験後画像
シート端部に強力な水流を当てた後も剥がれ無し
図4:モルタルに被覆シートを貼り付けた状態での耐候性試験前後における外観比較(JIS K 5600-7-7準拠)
図5:被覆シート設置下での経時でのCO2濃度変化
3.施設貼付による検証
今回開発した被覆シートを、五洋建設技術研究所守衛室の壁面全面に適用し、貼付状況および透明性を確認しました。その結果、良好な作業性を有するとともに、貼付後も透明性の継続が認められました。
図6:貼付後全景
図7:貼付後拡大(画像左/貼付後、画像右/貼付前)
4.今後の事業展開
五洋建設株式会社は海洋土木工事に高い技術力と豊富な実績があり、今回開発した被覆シートを土木及び建築のコンクリート構造物に適用していく事で、それらの長寿命化を実現していきます。本被覆シートは2025年度に実証試験を目的とした試験販売の開始を予定しており、それらを通して更なる改善を進めていくことで、省力化や補修コストの減少につながる補修工法として広めていきます。
<本件に関するお問い合わせ先>
■報道関係の皆様
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
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高機能プラスチックスカンパニー 機能テープ事業部
TEL:03-6748-6447 FAX:03-6748-6538
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